シーズン02 第018話 「無限軌道階段という訳語はどうだろうか」
「最初に階段を回転させようって思った人、バカなんじゃないの?」
「階段を回転? 螺旋階段の事かしら」
「螺旋階段は天才」
「あれのおかげで階段に無駄なスペースをとらなくて済むものね」
「うんうん。私今でもどうなってるのかよくわからないもん」
「いや、それは見ればわかるでしょ」
「回ってることはわかる」
「ほら、床屋のくるくる回ってるやつと原理は同じよ」
「螺旋階段は回ってないじゃん!」
「回ってる状態で考える必要はないわ。止まってる状態をよく観察すればわかるはずよ」
「止まって……はっ、そうか! 動いている人間に対して相対座標を導入すれが回転している床屋のあれと挙動としては全く同じものとしてモデル化することが」
「まあ、あってるんだけど、そういう理解をしてるのはたぶんあなたぐらいのものよ」
「やったー!」
「で、螺旋階段じゃないなら階段を回転って何の事なのかしら」
「エスカレーターだよエスカレーター、略してエスカレーションエレベーター!」
「略せてないし正式名称でもないわよ」
「あれ、エスカレーターってなんか正式名称存在してなかったっけ」
「ないわよ。あったとしても少なくともエスカレーションエレベーターじゃないわよ」
「そりゃそうでしょ」
「なんなのよ」
「ともかく、普通階段は回転しなくない?」
「しないわね」
「だからエスカレーターはバカ」
「便利だからいいじゃないの」
「あ、褒めてるので大丈夫です」
「対外的にはあんまり大丈夫じゃないわね」
「今は誤解のない相手としかコミュニケーションをとってないから」
「私は誤解してたわよ」
「それは鍛錬が足りない」
「そんな鍛錬はしません」
「そこを何とか」
「っていうか何の鍛錬よ」
「うーん」
「せめて考えておきなさいよ」
「ということで、なんでエスカレーターってことになったんだろうねって」
「たぶん発想のもとはベルトコンベアだと思うわ。それを斜めにしたら上下移動ができることに気が付いたんでしょうね」
「でもそれならエスカレーターよりも動く歩道のほうが先に社会において実装されたってことにならない?」
「そうなんじゃないの?」
「動く歩道、全然見ないけど」
「昔の話だから、もう撤去されたんじゃないかしら」
「で、全部エスカレーターになったと」
「そういうことね」
「そういうことではなくない?」
「そういうことではないわね」
「まあ、そこまで便利じゃないしね、動く歩道」
「便利じゃないというか、歩くだけなら階段ほどつらくはないのよね」
「つまり、歩くのがつらい場所に設置されていれば動く歩道も便利なアイテムとして世間に広まるはず」
「歩くのがつらい場所って?」
「とびとびに穴が開いてる道とか」
「アスレチックじゃないんだからそんな道は現実にはありません」
「いや、水田なら可能!」
「水田は道じゃないでしょ」
「あぜ道?」
「っていうか橋で事足りるわよね」
「あ、河川」
「だから橋で事足りるわよね」
「じゃあ坂道!」
「エスカレーターね」
「うがー! ……なるほど、こういう感じで作られたのか!」
「いや、違うと思うわよ」
「駅にあるエスカレーター、あれ全部
買い取りたいんだけど」「駄目です」
小説家になろうの仕様上、先の話を投稿して間を補完した場合も随時URLが変わってしまうため、本来【シーズン02 第040話 「祭と炭水化物の間には密接な関係があるのではないだろうか」】だった本話の上書き更新を行いました。
当該40話は順番に更新し39話が更新された後に再びアップロードいたします。