シーズン02 第017話 「コンビニエンス判定」
「伝統的な便利屋さんはなぜ伝統的でない便利屋さんの存在を許しているのか」
「便利屋さんに伝統的とかあるのかしら」
「お、歴史修正主義かな」
「そもそも見たことないのよね、便利屋さん」
「そんなはずはない」
「なくはないわよ」
「この近くにもあるし」
「そうなの?」
「あ、伝統的じゃない方の話ね」
「便利屋さんなんて最近新たに始めることあるかしら」
「そりゃもう高度経済成長が終わったころから続々と」
「……んー?」
「アメリカから」
「あ、コンビニ?」
「正解!」
「コンビニを便利屋と呼ぶ奴にまともな人間はいないわよ」
「私が反例です」
「いいえ」
「でもさ、convenienceは便利って意味でしょ」
「確かにconvenience storeを直訳すれば便利屋さんはなるわね。でもむしろそれは便利屋という店がすでにあったから名称を変えたって感じじゃないかしら」
「果たしてそれは許されるのか」
「アメリカのコンビニエンスストアと日本の便利屋はもともと関係ないでしょうし。株式会社アクセルスピードが日本に百社以上あるのと同じよ」
「あるの?」
「裏は取ってないわ」
「ありそう」
「バイク屋さんとかIT企業とか、マイナー所ではうどん屋さんとかね」
「注文してから十秒ぐらいでうどんが出てくる」
「十秒しか煮てなったら流石に堅いんじゃないかしら」
「堅くても食べられるうどんだから」
「イノベーションね」
「そりゃもうベンチャー企業だから」
「確かにアクセルスピードならやっぱりベンチャーよね」
「交流会に行ったときにちょうど相性の良い投資家に出会ってトントン拍子に出店にまでこぎつけたとか」
「創業から二年たつけれどそろそろ三店舗目が出店するんじゃないかしら」
「……はっ!? なぜ存在しない企業についてここまで熱い議論を」
「知らないわよ。うどんだからじゃない?」
「うどんなら仕方ないかー」
「で、便利屋さんは」
「そうだった」
「そもそも便利屋さんって何をしてくれるところなのかしら」
「便利」
「形容詞」
「名詞でしたー!! 残念!!!」
「convenienceは形容詞なので引き分けってところね」
「強引に勝ちに来た」
「勝てはしないわよ。せいぜい引き分けね」
「ということで、コンビニは便利なお店です」
「それは知ってるわよ」
「本当に?」
「主観に依るところが大きいので何とも言えないわね」
「個人的には?」
「あんまり使わないからわからないわね」
「よくよく考えたら私も使わなかった」
「何度便利屋の話をしようとしてもコンビニの方に飛ばされてしまうわね」
「まあ、正直なところ便利屋さんというものを見たことがないので」
「名前は知ってるのだけれどね。そもそもどこで名前を知ったんだったかしら」
「本」
「それはそうでしょうけど。本にはどういう屋さんとして描かれてたのかしら」
「なんかこう、猫を探してくれたりとか」
「探偵ね」
「家を……修理したり?」
「なるほど」
「あとは家を……壊したりとか」
「……そもそも便利屋さん、コンビニ関係なくもともと便利だったのかしら」
「それはもう、何とも言えないね」
「つまり、コンビニこそが本当の便利屋さんだったのよ!」
「長い。却下」
「それもそうね」
便利屋が蘇ったのがコンビニと
考えることはできないでしょうか