シーズン02 第008話 「財の材」
「小さいお金がコインで大きいお金が紙幣なの、おかしくない?」
「そうかしら」
「紙よりも金属のほうが高級感あるじゃん」
「それは認識を書き換えればなんとでもなるわよ」
「でも紙幣とかを取っ払った場合、紙幣に使われているのと同量の紙と印刷材に比べて硬貨に使われている金属のほうが価値は高いでしょ?」
「確かにそういわれるとそうね」
「本当に?」
「自分で言っておいて何なのよ」
「ほら、偽造対策とかあるなーと思って」
「ああ。でも仮に小さい単位のお金を紙幣にしたとしたら、その分偽造の旨味がなくなるから偽造対策にかけるコストも一枚当たり小さくなるんじゃないかしら」
「なるる。一円札を一円以上かけて偽造しても仕方ないもんね」
「現在の一万円札の製造コストが十何円だった気がするから、十円札までは今よりも製造コストを低下させることができるわね。五十円札を超えると偽造で利益が出ることになるけれど」
「固定費がかかるからもう少し行けるかもね」
「五百円札でやっとやってみる価値が出るぐらいかしら」
「五百円玉が二十枚あると一万円だもんね」
「何の意味がある換算かはわからないけれど、そういうことよ」
「いやいや、五百円玉二十枚で一万円ってなんかすごくない?」
「すごくないわね」
「えー。五百円玉二十枚で一万円の機械製品とか買ってたらこう、なんか、あるじゃん」
「とりあえず迷惑ね」
「二十枚だからセーフ!」
「消費税」
「あーっ!」
「こういうのは逆に小規模金額を紙幣に置き換えたときのデメリットを考えた方がわかりやすいわね」
「市井の人々が調子に乗って頻繁に破く」
「破かないわよ」
「一円玉とかよく金づちでたたかれてるじゃん」
「見たことないわね」
「私も見たことない」
「おい」
「想像でものを言いました」
「なんでそういう想像になるのよ」
「ほらまあ、市井だし?」
「市井を何だと思ってるのよ」
「で、デメリットか」
「どちらかというと高額貨幣を硬貨にすることのデメリットだけれども、持ち運びに難があるんじゃないかしら」
「いや、サイズの大きいお金のほうが一般的に持ち歩き頻度は減るでしょ」
「庶民はね」
「それもそうか」
「大きい取引をするときにお札を百枚持ってくるのは簡単だけれど、硬貨を百枚持ってくるのはそうそう簡単にはいかないじゃないの」
「クレカ使え」
「昔はそんなものはありません」
「じゃあ小切手」
「結局紙ね」
「なるほど、つまり金属小切手……?」
「どうやって使うのよ」
「二種類の金属板が張り合わせられてて、上の貴族版を削る形で署名と金額の記載を行う」
「古代文明感あふれ出るわね」
「でしょでしょ」
「褒めてないわよ」
「でもさー、百万円玉作ればよくない?」
「金貨ね」
「建設とかの決済現場で金貨が取引される様、趣がある」
「若干大きめのがいいわね」
「直径12cmぐらい」
「ふんふん」
「真ん中に棒を通すための穴があって」
「なるほど」
「厚さは1.2mm」
「つまり、CDね」
「CDですね」
「良くない? CDサイズ貨幣。重ねられるし。CDケースに入れて運べるし。パソコンにも入れられるし」
「パソコンに入れたら壊れるでしょうが」
「ほら、資産隠し的な」
「それ発行する国からしたら欠点よね」
「それもそうか」
「まあ、入らないようにちょっとだけ厚さを調整すればいいのだけれど」
「CDケースにも入らなくなるじゃん」
「逆になんでCDケースに百万円を入れて持ち運ばなければならないのよ」
「趣」
「ないでしょ」
「ないか」
「なんだかんだで行けるんじゃない、高額コイン」
「でも七千六百八十万円みたいな取引の時に結局大量のコインが必要になるわよ」
「そこは金属小切手で」
「普通の小切手でいいじゃないの」
「クレカ」
「現代ならね」
「もう現代だし。高額コイン、採用してみては?」
「でも今ある貨幣制度をわざわざ変えるほどのメリットがある感じでもないわよね」
「じゃあ新しい国を作ったときに高額コイン制度を採用しよう」
「現代では新しい国は生まれないわよ」
「なるほど、つまり仮想通貨を高額コイン制度で発行すれば」
「仮想通貨のシステムわかってる?」
「わかってない」
【駄目コイン】厚さが不ぞろい・不均質
【駄目駄目コイン】正四面体