シーズン02 第006話 「書++ / 書#」
「書類の類って何なのかしら」
「書プラスアルファ」
「具体的には?」
「封筒とかかな」
「紙と封筒がセットになって書類」
「あとクリアファイルとか」
「クリアじゃないファイルも書類かしら」
「穴をあけて紐で縛ったりもするから紐もだね」
「となると封筒だけじゃなくて紙袋も書類に含まれることになるのかしら」
「書類の……種類!」
「はい解散」
「わー待ってー!」
「冷静に考えると、別に封筒は書類じゃないわよね」
「紙袋が出たあたりから薄々勘付いてたけどそうだね」
「最後じゃないのよ」
「えへへー」
「で、結局類って何をぼかしてるのかしら」
「書プラスアルファで書類なのは間違ってないと思うんだよね」
「でも封筒は違うでしょ?」
「この場合の書は書画の書、つまり文字のこと」
「なるほど。つまり書と図表で合わせて書類、ということかしら」
「そうそう。それなら書類作成マシーンことワードプロセッサーも書類を作成できることになる」
「ワードプロセッサーを書類作成マシーンって呼ぶ慣習はあんまりないわよ」
「未開じゃん」
「どっちが未開よどっちが」
「議論の余地があるね」
「しないわよ」
「世の中にははっきりさせないほうがいいこともあるんだね」
「そうじゃない」
「でも、文字しか書いてない書類もあるよね」
「それはデータ型みたいなものじゃないかしら。書類と名のついているものは、書のほかに図表を挿入する権利がある、みたいな。実態じゃなくてあくまで権利に対する命名なのよ」
「じゃあ図表を挿入する資格のない純粋な書って?」
「要するに書道の書よね」
「筆は図表を記すのに適さない?」
「そういうことではないと思うけれど。水墨画とかもあるし。あ、でも直線を引くのは難しいわよね」
「水墨画棒グラフ、味がありそう」
「味はあるけどあんまり見やすくはなさそうね」
「無念」
「そもそも日本の昔の文書に表とかグラフって出てこないわよね」
「確かに」
「徴税状況に関する統計情報みたいな文書が出てきたっていいはずよね」
「その辺は統計学が未整備だったアレもあるのかもしれない」
「やっぱり筆だと書きにくいことが影響してるのかしら。そう考えるとペンって偉大よね」
「西洋の古代文書にもそんなに図表が出てくるわけでもないと思うけどね」
「それもそうね」
「あ、書ってそういえばほかにもあった!」
「というと?」
「書籍!」
「……なるほど。本のことね。確かに小説だと挿絵がなければ図表なんて挿入しないものね」
「でも学術書とかも書籍扱いだよね。あれはがっつり図表入りだけど」
「となると書籍の籍に書類の類と同じような役割があって書だけじゃないぞってことを主張してるということかしら」
「籍は書物って意味だから熟語の構成としては似た意味の字を重ねた形式になるけど」
「書と書物、つまり書物の『物』が書類の類と同じ働きをしてるわけね」
「おお! ステルス類だね」
「何かもうちょっと良いネーミングないのかしら」
「ステルス類々」
「あだ名っぽいわね」
「どちらかというと死屍累々のイメージ」
「駄目じゃ……いや、正しいのかしら?」
「累も類の類だからね」
「ややこしいわね」
書類には筆記用具で学年と
心に決めた名を書きなさい