シーズン02 第002話 「しじまれる貝」
「仮にシジミが形容動詞だとしたら否定形はしじみないとしじまないのどっちになるのかしら」
「名詞でしょ」
「名詞だけれど」
「いや、そうじゃなくて。旨味って名詞じゃん」
「味だからね」
「で、染みも名詞でしょ」
「そうね」
「同じように、しじみも名詞」
「あー、なるほど。わかったわ」
「全体的に?」
「全体的に」
「この場合仮定するのは動詞の『しじむ』だね」
「しじむ、ありそうね」
「寒そう」
「サ行だからかしら」
「凍み豆腐」
「おいしいわよね」
「ん? もしかして染み豆腐だと思ってません?」
「おそらくニュアンス的に漢字を変えてるんでしょうけど音声には表れないわよ」
「ちゃんと日本語を読めるようになろうね」
「読めるわよ」
「読めてないじゃん」
「それは読めないわよ!」
「凍み豆腐、染めるの染みじゃなくて凍るの凍みなのです」
「へー、味が染みてるから染み豆腐なのかと思ってたわ」
「それだと下手な人が作った染み豆腐が染み豆腐じゃなくなっちゃうじゃない」
「いいんじゃない? 下手な人が作った料理は料理じゃないもの」
「言うね~」
「あんなの炭よ炭」
「実際炭になるまで焼き続けて気づかないなんてことある?」
「あなたは前に一度やらかしてたわよね」
「ねー、どうしてだろうねー、不思議だねー」
「ねー、じゃないのよ、ねーじゃ」
「その点シジミはいいよね。味噌汁だから焦げない」
「グリルで焼いたら焦げるわよ」
「シジミをグリルで焼くことはなくない?」
「網焼き海産物みたいなかに貝も混ざってるじゃない」
「シジミって海だっけ?」
「……川だから、網焼きじゃなくて串刺し魚をたき火で焼くやつと一緒に刺しておくのがシチュエーション的に正しいわね」
「貝をどうやって刺すのか」
「金属棒を使えば可能よ」
「強引!」
「まあ、実際のところは焚火の上に網焼きグリルを設置すればいい話ね」
「で、焦がすと」
「そういえばそういう話だったわね」
「でもさ、貝は中身見えないから焦げるのは仕方なくない?」
「炙れば開くじゃない」
「……そうか! しじむって口を割るって意味だったのか!」
「今作ったわよね」
「今作りました」
老舗店、景品表示法違反
海鮮丼にシジミ混入