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概念部屋《C-Room》  作者: トルネードおさげたん  トルネードG&T
シーズン01
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シーズン01 第001話 「新生活のような気がする」

「新生活だーーー!!」

「机が来ただけじゃないの」

「机だーーー!!!」

「まあでも、やっと届いたわね。これで少しは暮らしやすくなるかしら」

「届いたんじゃない、現出したんだ」

「しません」

「そこをなんとか」

「そういうシステムではありません」

「じゃあなんで机があるんだ! 納得のできる説明を求める!!」

「届いたからよ」

「それ以外で!」

「じゃあ組み立てたから」

「インテリジェントデザイン論の敗北。負けを認めよう」

「類推適用にも程があるわよ」


「そもそも組み立てないといけない家具はデザイン的にインテリジェントじゃないでしょ。家具はバカ」

「その点ここは家具が机しかないから安心ね」

「布団は?」

「布団は家具じゃなくてどちらかというと衣類寄りの何かじゃないかしら。繊維製品だし」

「じゃあニンジンとかサツマイモも?」

「あれは食物の方が強いでしょ」

「でも、シイタケとかハチミツとかと比べたら衣類ってことにならない?」

「まあ、確かにそれはそうね」

「ということは紙も」

「アルミホイルに比べたらね」

「つまり折り紙の鶴は服を着ていた……?」

「それは違うわね。あれは事実上のぬいぐるみよ」

「おお! ……って、ぬいぐるみは衣類じゃないじゃん! 騙したな!」

「布団の時点で騙されてるわよ」


「ということは結局布団は家具?」

「どっちでもないわよ。寒ブリと小麦粉だとどっちが調味料って聞かれてるのと同じで答えはないわよ」

「いや小麦粉は調味料でしょ」

「じゃああなた今度からご飯に小麦粉かけて食べなさい」

「白シャリだね」

「そんな言葉はない!」

「なら何シャリなら満足なんだ!」

「銀シャリで一単語。許されてるのは銀だけよ」

「金シャリは?」

「ありません。金色のご飯って何よ」

「玄米」

「……一考の余地はあるわね。その場合銅シャリは?」

「あ、それなら玄米を銅シャリに移動して」

「金は?」

「のりたまごはん」

「絶対違うのに説得力があるような気がするのが悔しい」


「今日の夕食はのりたまごはん!」

「不健康よ」

「健康は不健康から生ずる」

「誰の言葉?」

「私」

「権威ゼロね」

「そこは有り余る権力で補っていこうかと」

「どこに余ってるのよ」

「キッチンの戸棚の中」

「この家にキッチンはない」

「ぴー」

「ついに化けの皮が剥がれたわね! 観念しなさい!」

「ああ、これで華やかな貴族生活から一転、長くて暗い奴隷生活が始まることに……」

「ふふふ、じゃあまず始めに食器洗いでもしてもらおうかしら」

「キッチンないけどねー」

「そうだったわねー」


「さて、人権を回復したのでお腹がすいた」

「人権の位置エネルギー変動が大きすぎたわね」

「人権はエネルギーなのか物質なのか」

「概念よ」

「概念エネルギーなのか概念物質なのか」

「そういうことじゃないわよ」

「よし、まず、人権を物質と仮定しよう。物質と仮定すると……どうなるの?」

「人権の質量に光速の二乗をかけることで莫大なエネルギーが取り出せる」

「なるほど、人身御供理論と合致するわけか」

「位置エネルギーを持つには質量が必要だからやっぱり物質ね」

「ところで人権の位置エネルギーって何」

「ポテンシャルのことよ」

「つまりノリノリの方が人権がある」

「それはテンション」

「クラブのパーティーとか人権がめちゃめちゃ強い」

「それは熱エネルギー」

「人権が物質なら温度も定義できるのでは?」

「揺らしたりぶつけたりすれば人権が加熱するということね」

「逆に静かにしてると人権が絶対零度になるわけか。良い感じの道徳の教科書ができたな」

「巨大な人権同士は引かれあう」

「うんうん」

「正の人権同士や負の人権同士は反発する」

「うんうん」

「人事力の中で人を回転させることで人権流が生まれる」

「……うん?」


「で、空腹はどうしたの」

「色」

「?」

「色即是空」

「空即是色」

「そゆこと」

「それなら色腹でしょ」

「その表現だと色が性的な意味になるけど」

「何でよ」

「そうか、これが般若経公理に基づく三大欲求相互変換定理の証明……!」

「じゃあ寝てなさい」

「いや、それはまだ証明してないので」

「……ぱっと証明してやろうと思ったけど全然糸口が見えてこないわね」

「未解決問題だ」

「そもそも三大欲求相互変換定理なんて初めて聞いたんだけど」

「お、新発見かな?」

「凄い自信ね」


「ゆれれれれれれ」

「危ないわよ」

「大丈夫、机があるから!」

「その机を自分で揺らしてるんでしょ」

「そもそも家具が全くないから地震に対してはほぼ無敵」

「じゃあそこに立ちなさい揺らしてあげるから倒れなかったら認めてあげるわ」

「はっ」

「寝るな!」

「倒れそうなときは先に倒れておくという戦略は有効なことが一般に知られている」

「おらー!」

「あ~~~転がる~~~~~」


「はい、ということで防災対策はちゃんとしましょうという話ね」

「そうは言っても今のほぼ理想的な対応じゃなった?」

「私を本気にさせたのが最大の過ち」

「人災じゃん」

「最近は人災の方が怖いのよ」

「一理 exists of the world」

「何語よ」

「間を取ってキルギス語」

「どことどこの間をとった」

「大西洋と太平洋」

「架け橋っぽく言っても単なる平均値の最悪な使い方よ」

「じゃあ中央値を取ってof、つまり、の!」

「何で文章からとってくるのよっていうか『の』って何よ」

「当然ノルマン語だが?」

「クソみたいな理論からの奇跡のような復帰」

「やっぱりこれからの時代は統計学だね」

「完全に誤用しておきながら偉そうに言うんじゃないわよ」

「a peace of real exists of the world」

「ポエムになってるわよ」

「一理ある これは完全に 一理ある」

「ポエムにしろとは言ってないし季語がない」

「『完全』は冬の季語だから」

「そうなの?」

「そういうことになった」

「いや季語は勝手に増やせないわよ」


「よし、季語が増やせないなら季節を増やそう」

「因果関係と合理性が完全に破綻してるわね」

「合理性を破綻させれば他人に行動を監視されないので」

「入院ポイントがたまる発言をするんじゃないわよ」

「そうは言ってもたぶん言動を全部追跡したら二人とも一日で入院ポイントが満点になると思うんだけど」

「私はそうでもないわよ」

「『布団は家具じゃなくてどちらかというと衣類』」

「うっ」

「『人権の質量に光速の二乗をかけることで莫大なエネルギーが取り出せる』」

「うぅっ」

「『人事力の中で人を回転させることで人権流が生まれる』」

「うぅ……」

「ということで盗聴には気を付けましょう」

「手始めにこの机からチェックしましょうか」

「あ、こんなところに」

「え!?」

「締め忘れたネジが」

「すぐに締めなさい」

「はーい」


「というか、ネジが緩んでたならやっぱり危なかったじゃないの」

「盗聴が?」

「机を揺らしたのがよ」

「うんうん、どんな時でも防災訓練は大切だね」

「あんなので訓練扱いになるんだったら普通の人は毎日避難訓練してることになるわよ」

「そう、訓練とはそのような日々の積み重ねが大事なのです」

「修辞法でごまかそうとするな」

「それもまた訓練の成果」

「会話相手が訓練されるほどごまかしの表現を積み重ねるんじゃないわよ」

「うんうん、それもまた訓練の成果だね」

「完全に会話力が失われてるわね」

「青果……」

「それはバナナよ」

「青りんご……」

「食べに行く?」

「あるの!? 春だけど!?」

「いや、夕ご飯」

「あーもうそんな時間か」

「いつの間にやらね」

「机inputのせいで完全にテンションが上がってしまった」

「食堂が混む前に行きましょう」

「そだねー」




 「なにこれ」「木。半額なので買いました」

   「いやでもこれは」「半額なので」

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