表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/132

3.プロローグ 3/3

プロローグ その3です。これで、プロローグが終わります。

3章で、短めの4000字弱です。

本編から、ちゃんと読むぜ~という方は、後書きまで、ジャ~ンプ!

3-1.姿かたちを選ぼう


 諸事情で、チート系スキルの付与を諦めた俺だが、転生の手続きは更に続いた。


『次に外見ですが、姿や顔の作りなどは、如何しましょうか?』


 イケメンで女性にモテモテって言うのもいいな~~って、違う違う、決して浮気ではないぞ。あいつも俺がイケメンならもっとうれしいだろう?

でも、俺と認識でないかもな……。


「現地で違和感がない程度に少しだけ弄ってくれ。身長は平均より少し高めにな」


『では、毛髪と瞳の色だけ現地に合わせましょう。

 毛髪は黒ではなく、茶に近い色はどうですか?

 身長は、あちらの国の平均より、やや高めですね。

 よろしいですか?』


 この歳でヤンキーデビューとは……、まあ、若返るからいいのか


「髪と身長はそれでいいや。で、目と言えば、某患者団体垂涎の必殺アイテム――

 睨んだ相手を殺す目ってもらえるか?」


『はい、ございます』

「何? 本当か! どんな感じだ!」


『能力ですが、目に姿が映った生命をその瞬間に問答無用で確実に死亡させます。

 戦闘用の能力としては、おそらく最強でしょう』

「それ、欲しいな~」


『ただ、扱い方が非常に難しく、現在この目の保有者はいません』

「どうしてだ?」


『実は仕様で、両目ともこの能力を持ってしまいます。

 そのため、この目の所有者の最大の死亡原因は、水面や金属光沢面等の

 光を反射する鏡面に映った自分の姿をうっかり見ての自死です』


「……いらないか。

 ならば、瞳は、某患者団体垂涎の定番アイテム――オッドアイで。」


『あちらの世界では、オッドアイですと良い意味でも悪い意味でも有名になります。

 特に教会関係者には、死ぬまで追い掛け回されます』


「面倒事はなしの方向で……濃い翠色とかはどうだ?」


『メジャーではありませんが、大丈夫です。

 それでは、瞳は両目とも濃い翠色とします。』



「それと、某患者団体垂涎の神アイテム――片腕に大きな力を宿すことは

 できないのか?」


  エルエルは、俺には見ることのできないタブレットを操作しながら、情報を集めているように、やや間を置いて顔を上げずに話し出した。


『片腕に……ですか? 封印者の特定部位に大きなエネルギーを持ったもの――― 巨大な魔力を持つ魔物等を封印し所謂魔力の電池バッテリーにするということですね?』


「それ!そういうやつ」


『あちらの世界では、メジャーな技術となっていますが、封印者の魔力を常時

 消費し続けるため、維持コストが大きいという問題点があり、

 電池バッテリーとしての使用は難しいようです。』


(今は、無理っぽいな。「俺の左腕」は、あちらの世界に行ってからか)


『長期間の封印維持を目的にする場合には、あらかじめ高レベルで基本魔力が

 多い者を封印者にする方法や封印者の体全体に封印を行い封印者の生命活動を

 極少にすることで、その分を維持コストに当てる方法、……』


「もう、いいよ……」


『維持コスト減少のために、神の加護を一般人より多く受けられるような者

 ―――「歳若い美しい乙女」や「筋肉質の二枚目」といった神に好かれている

 者を封印者にする方法、……」


「だから、もう、いいて……!」


『対象の魔力を吸収し、その魔力を………力に還元………能力を持った者を……… 封印者にする……「止めろ~~~~!!!」……方法が……あり……ます』



 突然、黙り込んだエルエルが、不可視のタブレットを猛烈な勢いで操作し始めた。


「エルエル、どうした? 何があった?」


エルエルは、しばらくすると、唐突に操作を止めて、顔を上げてきた。


『申し訳ございません、如月さま。端末が急に不調となりまして、

 お手続きに支障をきたす恐れがあったため、原因を調べておりました。

 原因は、どうやら一部データの読み出し不良のためだったようで、

 早急に復旧作業を行いましたので、引き続きお手続きを続行できます』


(やっぱり、見えない端末だったのか。それにしても、自力復旧って意外と優秀な娘なのか?)


『如月さま、スキルの件ですが、特にご希望が無ければ、わたくしの方で

 最低限必要なスキルをお選びしますが……』


「そうだな。俺の希望するスキルの付加は、無理のようだから任せるよ」


『わかりました。それでは、こちらで後ほど選ばせて頂きます。

 次に持ち込み可能アイテムですが、何かご希望の品がありますでしょうか?』


「手に握れるぐらい小さなものだろう? 貨幣はダメだって言うしな……」


『では、その指輪付きのネックレスなど如何でしょうか?』


 エルエルは、俺の胸元を指差した。胸元を調べると、2つの指輪を飾りとして留めたネックレスがあった。これは、エンゲージリング――俺と妻が結婚した時の結婚指輪を妻亡き後、俺はネックレスとして常に首に掛けていたものだった。


「いいね。あっちの世界の習慣は知らないが、妻とまた結婚する時に

 もう一度贈るのも一興だな」


『では、指輪付きネックレスを持ち込みアイテムとして登録しますので、

 一旦こちらにお預かりします。』


 俺は、何年かぶりに首からネックレスを外すと 窓口の格子の間から中に入れた。


『最後の質問になりますが、転生直後の転移地点はどの様な場所にしますか?』


「妻が、今も生まれた都市にいるかもしれない。妻の生誕地の近郊で頼む」


『転移地点は、バークス王国城砦都市カーク近郊の街道沿いの木陰に設定します』


「これで全部か?」


『お疲れ様でした。

 これから、お任せ頂いた付与スキルの選定と事務的手続きを行います。

 そちらの処理が終わり次第お呼びしますので、

 それまでの間、しばらくお寛ぎ下さい。』


 エルエルは、できるキャリアウーマンの如く、不可視の端末を猛烈な速さで操作している。これが、エアーなら笑えるな。などと思いつつ、エルエルの姿を眺めたり、通路を流れ行く者たちをぼっと見つめながら昔を思い出していた。



3-2.少しだけ、昔ばなし


 俺は、15年前に幼馴染の 神代 美代子と結婚したが、わずか3ヶ月で妻は亡くなり男ヤモメとなった。それから、再婚もせずに今に至る。


 ミヨコは、結婚直後に2人で交わす約束の言葉を3つ望み。俺たちは、3ヶ月間それをずっと守った。


 1つ目は、謝罪を表す言葉、自らが悪いと思ったら、きちんと謝罪の言葉を言うこと。「悪い」「すいません」「どうも」とかは、ダメ。


 2つ目は、感謝を表す言葉、相手の行為がうれしい時は、きちんとお礼の言葉を言うこと。「すいません」「どうも」「あざーす」とかは、ダメ。


 最後は、愛情を表す言葉、必ず一日に一度は言うこと。ミヨコは、夜に俺が帰宅した時にいつも言ってくれていた。そして俺は、朝玄関先で「いってらっしゃい」と言いながら、かばんを渡してくれる妻に向って毎朝言っていた。


 妻の死後も俺は、外出時に欠かさず独り言のように言い続けたが、一緒に食事に出かけた運命のあの日以降、帰宅した俺にあの言葉を言ってくれる人はもう居ない。



3-3.出発


『如月さま、準備が整いました』


 しばらくすると、エルエルが俺に声を掛けてきた。

俺は、窓口の方に戻り、席に腰を下ろす。それを見るとエルエルは続けた。


『付加したスキルですが、「異世界言語翻訳」後は、………… 説明は、以上です。

 次に、持込許可アイテムですが、「指輪付きネックレス」と…………以上、

 ご確認下さい』


 俺は、渡されたアイテムを確認していると、エルエルは顔を格子ギリギリに寄せて、小声で言ってきた。


「如月さま、少しお話が…………、いい? 必ず守ってね! 約束だからね」


 俺は、強引に約束を取り付けられた。

まあ、話を聞く限り俺のためだから仕方がない。


 そして、いよいよ出発だ。エルエルは、受付から出てこちら側にやってきた。

改めて全身を見ると巨乳が眩しい。ついつい視線が泳ぐ。俺は、近付いて来るエルエルの顔に苦労して視線を戻す。


「これ、さっき言ったお弁当ね」


 エルエルは小声で言って、風呂敷のような布に包まれたお弁当を渡して来た。

俺は、受け取って、風呂敷を背中にたすきに縛った。


「いいのか? 腹減るだろ?」


 エルエルは、片目をつぶり親指を立てて、大丈夫大丈夫というジェスチャーをする。


『それでは、両目を閉じて下さい。

 今から如月さまに転移先のイメージをお送りします』


 俺は、目を瞑る。エルエルは、俺が手を延ばす前に素早く掴むと頭に映像を送り込んでくる。木の間から街道が見える林の中のイメージだ。


『気をつけて! いってらっしゃい』


 俺は、妻といつも交わしていた『いってきます』のあの言葉を無意識に返していた。


「ありがとう。いってきます。愛してるよ」


 俺は、エルエルに流れるように愛の言葉を囁いてしまった。まずい。まず過ぎる。


「なっなっ、何を言ってるの……?」

「まあ……、あれだ……。……お礼だ」

「そっそっそう……、ただのお礼よね?」


 エルエルは努めて冷静になろうとしているのが、盲目状態の俺でさえも感じとれた。ヘソのすぐ下に暖かい感覚が、頬にはやわらかな感覚が生まれた。


「これも、唯のお礼だからね。それでは、ジャ~ンプ!」

「べっ弁当箱は、今度会った時にでも返すからな」


 俺は、足元が無くなり、一瞬、浮遊感を感じたのだった。


………………………

……………

………


「回収したと思ったら、すぐに立てる。如月さんって自覚があって

 やってるのかしら?」


 エルエルは人知れず、呟くのであった。

-------------------------------------------------------------

 まとめ


 夢の某患者団体垂涎のスキルもだめか…じゃあ、スキルの選択はまかせる。

 いいの見繕ってよ。茶髪に濃い翠の瞳、顔は今をベースにハーフ風。

 身長は平均より少し高めで。


 持込は、俺と妻とのエンゲージリングにするか。

 飛ばす先は、妻が転生して生まれた都市近くで頼むよ。


 手続き待ちか………ぼっとしてると昔の事を思い出すな~。

 あの頃はよかったよ。準備OKってか?

 

 「いってらっしゃい」って?

 「ありがとう、いってきます。愛してるよ」ってやば!


 いつものクセが……。 頬に何かが当たったみたいだな……

 多分気のせいだろう。~~~~~アレ~~~~~到着したか……。


-------------------------------------------------------------

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ