7.ただいま
俺はイノシシを担いだまま、村に到着した。
「ついたよ、ようこそ 私たちの村に」
「うわぁ…!」
戻ってきたよ、俺の村に!懐かしいな。まだ二年しか経ってないはずなのに、なんでこんなに懐かしく感じるんだろう。
あの畑のおじちゃん、確かお嫁さんと仲が悪いことで有名だったな。あっちの家は確か子供が生まれたばっかだったから、今はもう2,3歳とかそこらか。
「ほら、こっちにおいで」
姉ちゃんが俺を呼ぶ。ちょっと興奮しすぎて足が止まってた
「ごめん、エミリさん」
俺は素直に姉ちゃんについていく。なんか村の人の視線が凄いけど。
「なんかみんなに見られてる気がする」
「それは当然よ。あなたみたいな可愛い女の子がそんな風にイノシシを何体も担いでるなんて、普通は見れないわ。」
「そんなもんかなぁ」
俺にとってはこれは普通なんだがなぁ
しばし、村を歩いて、俺はかなり見覚えがあるところについた
「ここは…」
「大きな畑でしょ?うちの自慢の畑なの」
「うん…」
ここは俺が昔畑仕事をしていた畑だ。そういや死ぬ時もここで仕事をした直後だったな。
畑からすこし逸れたところに、石が立っていた。
「もしかしてこれって」
「うん。私の弟、アギルの墓なの」
ここが俺の墓。姉ちゃんは目を落として墓を眺めていた。
「エミリさん…」
「あ、ごめんね。じゃあ、行こっか」
姉ちゃんの先導で家に入る。姉ちゃんはまだなんか元気がなさそうだ。
やっぱりまだ俺のことを乗り越えてないのか。自分の正体を伝えたほうがいいのだろうか。
そんなことを考えながら、俺は「自分の」家に入っていった。
「ただいま」
「失礼します」
「お帰りエミリと…そ、その子は?」
母さん…どうしよう涙出そう…感動の再会だよ…
でも母さんは俺のことを奇異な目で見てる…かなしい…
「この子はミミ、森で助けてもらったの」
「ミミさん…?とりあえずそのイノシシを置かない?疲れたでしょう?」
「あ、じゃあお言葉に甘えて。倉庫でいいですか」
「場所わかる?エミリ、案内してきなさい」
「わかったわ」
俺はエミリに倉庫の場所を案内してもらった。といっても、場所は知ってるけど。
イノシシを置いて家に戻ってくる。
「で、お母さん。この子について話があるんだけど」
「何かしら」
「実はこの子…」
姉ちゃんが俺がした境遇の話をそのまま母さんに伝えた。ちょっと罪悪感あるな。でも仕方ない。真実を話してもむしろ姉ちゃんを気づつけることになりかねないしな。
「それで、この子をうちに住まわせてほしいの」
「狩りなら、手伝えます」
俺も母さんに頼み込む。そもそもただの居候をさせてもらおうとは思ってないし、狩りくらいはするつもりだ。
前は畑仕事を手伝っていたけど、畑よりも狩りの方が役に立てそうなんだよね。
「狩りって…あなた狩りができるの?」
母さんが変な目をしてる。狩りができないならイノシシを持ってくることなんてできるはずないだろうに。
「あのイノシシはおれ、私が狩ってきました」
「ほ、ほんとなのそれ!?」
母さんがエミリの方を見る。
「本当よ。私がイノシシに囲まれたときに、助けてもらったの。私は気絶してたけど…」
母さんが俺の方を見る。さっきとは違う目だ。といっても良い目ではなく、ちょっと恐れているような目だ。
「この家はあまり食事に余裕がある家ではありません。狩りを手伝ってくれるなら、是非使ってください」
「ありがとうございます、母さん」
「母さん…」
母さんが少し驚いたような目でこっちを見る。すると今度は優しい目で俺を撫でた。
「家にいる間は、私たちのことは家族だと思って過ごしてくださいね」
「私のことも、お姉ちゃんでいいよ。」
「ありがとう、姉ちゃん」
「姉ちゃん…姉ちゃん…」
姉ちゃんが今にも泣きそうな顔をしている。やっぱり、自分の正体はばらさないほうがいいのかもしれないな。
ともあれ、こうして俺は村に戻ってきた。
もちろん、使わせてもらえる部屋はもともと自分の部屋だった部屋だ。部屋といっても、仕切りがあって一つの部屋みたいになっているだけだ。あるのはベッドくらいで他にはほぼ何もない。
そんな部屋に、俺は懐かしさを覚えた
「ただいま」
俺は、自分の居場所に帰ってきた。