表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

人喰いの魔女は幼女だった。

袋の中から救出された私は幼女に抱えられ家の中へと連れ込まれていた。

そしてソファーに座らされると手を額の前で翳され


「あー。‥…ひどいね。」


幼女の手からは青い光がでて私を包み込む

それは凄く温かくて

凍えていた心も溶かしていきそうだ。


「何を、してるんですか?」


「ん?おねぇさんの記憶を見てるの。あいつら、ほんとクズだよね」


幼女が言うに今の青い光は記憶を覗く魔法らしい。

魔女と聞いていたのでなんとなく想像はしていたが、やっぱりあるんだ魔法


「それより‥…早く食べて、殺して。人喰いの魔女なんでしょ?」


私の要求にポカンと目を見開く幼女

そして、少し渋った表情を見せ口を開いた。


「私は‥…確かに人を食べる。でも、それは今じゃない。それに‥…おねぇさんは死ねないよ?」


「え?どういう‥…」


「うん。実際見せた方がいいかな?おねぇさん、いたいの嫌い?」


私は幼女の言葉に頷く。

すると幼女はまた私に対して手をかざす。

と今度は、赤い光が体を包んだ。


「これでよし。‥…ニァ」


幼女の言葉に部屋の隅から一匹の狼が私の前に佇み

大きな爪を体に突き立てた。


「っ?!あ、れ?」


爪が心臓を貫いた感覚は感じたが、痛みはない。

傷口から血も吹き出しているのに‥…


「いたくないでしょ?それは魔法のおかげ。でも‥…」


幼女の言いたいことの理解に少しずつ整理する

痛みがないのは赤い光のせいだろう。

だとすれば、なんで私は生きている?

心臓には爪が届き

血が溢れていると言うのに


「神様は理不尽ね。死にたい娘に不死なんて能力を与えるもの。」


「それって‥…」


「おねぇさんは不死身の人間になったの。もう死ぬことはできない」


それは今の私に何よりも辛い一言だった。


ーーーーー


「落ち着いた?」


「はい…すいません。」


不死身の宣告を受け、私は暴れた。

手当たり次第に体を傷つけ

刃物を見つけて喉を引き裂き

足を切断したり、手を切断したり

いろんな事をしたが

死ぬことはなく。

綺麗に元通り

傷は跡形もなく消え去っていた。


「さて、どうする?私のところにいる目的無くなっちゃったね?」


「‥…」


「かといって街にも戻れない。」


「‥…」


「そうだ、なら復讐をしよう!」


いきなり何を言い出したかと思うと、幼女は私の手を引き、外へと連れ出す

そして先ほどニァと呼ばれた狼を呼び出し

背に飛び乗った。


「一緒にいこ?」


私はそう呼び掛ける幼女の手を取り、狼の背中へと乗る。


「よし、出発っ」


狼は駆け出し、森へと突き進んでいった。


ーーーーーー


森を抜けた私達は街を見下ろしていた。

幼女の魔法により空を飛んでいるのだ。


「さて、ここでおねぇさんの事が少し必要なの」


「私の事が?」


「そう。ね?手を出して」


私は少女に手を差し出す

するとその手をガッチリと両手で掴み人差し指を口に含んだ。

温かい‥…

幼女は私の指を飴のように隅々まで舐め尽くし、そして軽いあまがみの後

喰いちぎった。

一瞬私は体をビクッと震わせたものの

まだ魔法が聞いていたのか痛みはなかった。

それどころか、何故か心の奥底から別のなにかが溢れそうになる。


「んっ、くっ。んん‥…おいしぃ」


恍惚の表情の幼女だったが次の瞬間その姿は様変わりする。

綺麗な金髪は真っ赤に染まり

身体はぐんぐんと大きくなり大人な女性へ

そしてその小動物のような愛らしさは妖艶なものへと変わり

私はその姿にドキドキしていた。


「ふふ、美味しかったわぁ‥…。あ、ごめんなさいすぐ済ませましょうか。」


そういって大きくなった彼女は腕を大きく横に薙ぐ。

腕が通りすぎた後にはいくつもの魔方陣が描かれ現れる。

彼女は横で見とれている私を抱き上げ顔を近づけ口ずさんだ。


「願いなさい。自分を酷い目にあわせた奴らへの怨みを」


「‥…」


私は思い浮かべる。

暖かい言葉で私を騙し連れ込んだ男

食事に毒を盛り森へと捨てた男

他の者と共謀し乱暴を働いた男達

皆、消えればいい。

皆、苦しめばいい。

皆、死んでしまえ。


魔方陣は赤く染まり

街全体を覆い隠すように大きく一つになっていく

そしてそこから真っ赤な雨が降り注ぎ始めた。


「はい。これで復讐は終了。さ、家に帰りましょう」


気がつけば、もとの幼女に戻っていた彼女

私は何故かすきっとした気持ちで聞いてなかった名前を訊ねる。


「貴女の名前は‥…」


「ん?あぁルルイエ‥…だよ。」


「ルルイエ‥…私は青葉(あおば)、青葉リン」


「ん。知ってるアオバ。さっき覗いたときに色々調べちゃったから。」


ニコッと私に笑みを向けるルルイエ

私はもうあの男達の事など忘れ、ルルイエに導かれるまま森の奥の家へと一緒に帰っていった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ