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AvengeGame第一話  作者: nrm
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白い部屋の6人

夢を見たあと、時々現実との区別がつきにくい時がある。

目を覚ますとそこにはいつもの自分の部屋、目覚まし時計、見馴れたものばかりで、悪い夢を見たあとはその見馴れたモノでさえも現実で良かったと思うときがある。


けれど今の自分には、その見馴れたモノも、馴れはじめた場所さえもない。



―――ただただ真っ白い部屋の中。





目を覚ますとそこは白い部屋の中だった。





俺は目を細くしながら起き上がり、ぼんやりと立ち尽くした。





「なんだ……ここ?」





生活感はゼロといっていいほどで、現実味も無い。

目に飛び込んできたのは、白い壁に白い天井、白く明るい照明に、お洒落とは言えないがダサいとも思わない特に普通の白い椅子が6脚。

そして20インチほどの白いテレビと、そして白いシンプルな掛け時計。ドアノブだけがステンレスの白い扉もある。

何もかもが白で埋め尽くされていた。

広さはざっと10畳くらいだろうか、一人暮らしをするなら丁度良い大きさではあった。



そして、気がついたのは自分以外にもこの部屋の中に人が居るということだった。

ぱっと辺りを見回すと、自分あわせて計六人。皆、服装や歳もバラバラだ。


自分より先に目が覚めたのか、この部屋に居ることに対して慌てることのない落ち着いた者もいた。

そして俺の横にはほぼ自分と同じ、たった今目を覚ましたロングヘアーの制服を着た女子高生が居た。





夢でもみてるのか?


いや、夢にしては周りがはっきりみえる。


俺は頭を混乱させながら部屋の周りをゆっくり歩いてみた。




「おーい!だれかいないか!?」



そう大きな声で言ったのはスラッとした背の高いスーツを着た中年男性だった。正確にいうと、中年男性というにはおじさんといった方が雰囲気的には近い感じがした。貧弱そうでもないが、強そうにも見えない。あえていうなら歌舞伎役者のような顔立ちだ。




「だれかいませんかーー!」


スーツの彼は今助けを求めているのだろう、ドアノブをガチャガチャさせたり周りを見渡したり、一目で分かる行動だ。


「無駄ですよ。いくら呼んでも誰も来ないんです。」


そうスーツ男性に言ったのは、高校生くらいのメガネをかけた、いかにも真面目な容姿漂う男子だった。

高校生くらいというか、高校生だ。シャツとグレーの制服ズボンにスニーカーが目に入る。それに彼の制服ズボンは、某有名な私立高校だ。



「誰も来ないって…ここはなんなんだ…!」


「知りませんよそんなこと…」


「どうしてそんな冷静なんだ!」


「慌てたって何も解決しないでしょ」


二人の会話が白い部屋に響く。


たしかに慌てたって何も解決しない。

俺は心を落ち着かせて言ってみた。


「あ、あの……!ここ、何なんですかね

………俺達、閉じ込められてて…一体何が何だか…」



冷静に話すつもりが、突然の事となると上手く喋れない。

けれどメガネとスーツ男性は俺の方を見た。俺は何も返せず黙った。




「……あんた――




黙って椅子に座っていたライダースジャケットにショートパンツ、ロングブーツの派手目な女性が俺に話しかけようとしたとき、俺の横の女子高生が部屋を見渡し立ち尽くしていたため口を閉じてしまった。


女子高生は黙ったままだが、きっと今思っていることは俺やスーツ男性と同じことだろう。



「………!!!」


突然ビクッとさせる女子高生。

彼女の視線の先は、メガネでもなく、派手な女性でもなくスーツ男性でもない、壁にもたれ座っていた男だった。

二十代前半くらいか、それくらいだろう。端正な顔立ちだが、その男のやる気のない目は自分を見た女子高生を少し睨んだ感じで、部屋の中だが近寄りがたいオーラがあった。

手を口元にやり、少しビクついていた女子高生はそのまま自分の横に立ったままだった。


するとメガネが短い溜め息を吐き、言い出した。





「とりあえず、一つだけ分かるのは、ここにいる僕たち六人全員、犯罪者だってことです。」





俺は目を見開いた。


ここにいるのは全員犯罪者…??


本当なのか…??


横にいる女子高生も?

今喋っているメガネも?



俺は再び部屋の中の五人を見回した。



派手なアクセサリーをつけた派手な女性、

ここに来てからまだ声を聞いていない近寄りがたい男、

身近にいそうな助けを求めるスーツの中年男性。




この五人が全員犯罪者と知った瞬間、この部屋に居ることにとまどいよりも怖さを感じた。









「俺たち………――



一体何のためにこんなところに…





そう言おうと口を開いた時、白いドアがコンコンとノックされた。














“コンコン”



この時のノックも、ただのノックではなく、怖さをエスカレートさせるものだった。


そしてそのノックには誰も返事をしなかったが、ガチャとドアを開け、ヒールの音をコツコツと鳴らし、一人の白いスーツの女性が入ってきた。


金髪に赤いヒール、赤い口紅。

髪型も、顔も、まるでマリリン・モンローそっくりの女性。


六人全員がその白いスーツの女性の方を見た。


女性は静まり返る部屋の中へ入ると、ドアから少しだけ離れた所で止まり、俺達の方を見て自己紹介した。








「白の部屋の皆様、はじめまして。

わたくしの名前は、ドールと申します。」











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