プロローグ
小さい頃、父が死ぬ前に言ったの。
『お前の歌が聞きたい』
父の最期のお願いに私は歌った。その頃はまだ上手くは歌えなかったけど、父はとても安堵した顔で静かに息を引き取って涙がポロポロ流れていた記憶は今でも覚えている。
身寄りの無い私を引き取ってくれた仲野家の大黒柱の真理亜さんは、私にオペラのミュージカルに連れてってくれた。煌びやかかドレスを着ている女優達。紳士的な振る舞いをして歌う俳優達。中でも一番印象に残っているのは一人ステージの上で堂々と歌っている『牧野 千鶴』のステージが美しかったこと。『牧野 千鶴』はミュージカル女優でもっとも活躍している有名女優であり、当時私は彼女に憧れて同じ道を進むことを決意した。
真理亜さんは音大の教師を勤めており、音楽に憧れた私に歌のレッスンをしてくれた。(真理亜さんには娘の夢子がいて、一緒にレッスンをしていた)頑張って練習をしていたものの、成果はいまいち。毎日練習しても上手にはなれなかった。
一度は諦めていたが、大好きな歌を諦めたら今までのことは水の泡となってしまう。そう思って今日まで必死に勉強して、受験も必死の努力で合格することが出来た。
私が来月通学する高名は、『聖鈴高等学校』。
そこは、音楽と芸術という美術に優れた者が通う名門。ここで有名な音楽家や芸術家が多く通っていた学校である。
この名門高等学校で繰り広げられる物語は、音大生と高校生の物語。