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百足山

作者: 鳴海 慶
掲載日:2026/10/10


里山の入り口にある祠は、今ではかみさまのお墓で

人々に厄災を振りまいた、恐ろしいかみさまは むかし一人の若者が退治しに現れ

若者の持っていた剣で身を裂かれると、血飛沫や肉片が大量の百足になり 若者を食い殺してしまったそうだ


かみさまはいなくなり

山じゅうを百足が這い回るようになった

あの山に、もう人間は住めないよ







…







人間が武器を作るために

山の頂上から流れ落ちる、川の水が必要でした

幾本にも脚の分かれた川の下流は

赤黒い鉄で真っ赤に染まって

山を汚していきます。


山に毒を溜め込んだ神様は

いつしか人々に厄災をふりまき

動物も植物も

清らなありさまを失っていきました


諍いあう人々は

一度人間同士の争いをやめ、

齎害となった神様を

封じてしまうことにしました


神様を欺こうと、若者に巫女の姿をさせ

山で作った武器を持たせ

毒で死んだ者達の遺族が彼を送り出したのです 







若者は山の祠につくと

神様に祈りを捧げ、語りかけました


「どうか私の言葉をお聞きください」


彼は、巫女の振りをしませんでした

静かな声で言いました 


「人々は

 互いの領地を荒らしあい

 諍いをやめません

 私のきょうだいは、

 人間に殺されたのです」

「人々は

 あなたの領域まで汚し、あなたの心まで貶めて

 その罰を受ける積守さえ、ないのです


 どうか、私達に

 罰を与えてください」


静かな声は少しずつ震え

木々がざわめきながらそれを神様へ伝えると

若者の目前に

おぞましい姿の妖女が現れ

言いました


「おまえがその身を私のものに

 様子かわらず、捧げてみせるならば」


おまえの願うとおりにしましょう。








神様は、自分の身体の毒を削ぎ落とすよう命じられ

若者はいわれたとおりに、持っていた武器を妖女の肌に振るいました

すると剥がれたおぞましい肌は

血飛沫となって地に落ちた途端

川の分れるように脚が生え

何匹もの百足になって、山を這い回りました


剣を振るうごとに百足は増え

神様の姿は、おぞましい妖女から

美しい娘になっていきます






穢れを地に全て、降ろしてしまうと

神様は若者の手を取って

何処かへと連れ去っていきました。


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