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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

僕らはただ、防衛のために生成される

作者: Nivta
掲載日:2026/03/17

※残酷描写があります。

「生成」 「うきー!うき!」


 この一言で魔力を消費して生命を生み出す。 これが僕の能力だ。


 最初は、家族を守るためにこの力を使ったんだ。


 敵が僕の家まで攻めてきて、どうしようもなかったんだ。


 みんな死んじゃって、僕しか、僕じゃなきゃできないことだったんだ。


「生成」「召喚」 「うきー?うきうき!」

「お前ら全員、敵を――敵を“殺せ”」


 目の前で敵を殺す。

 その光景を、僕は眺める。


 悲しくても、苦しくても、罪悪感で逃げたくなっても、僕は逃げない。

 いや、もう逃げられないんだ。


 この時、僕の能力を殺しに使った瞬間から、もう。


 それから僕は、国の軍に入ることになった。


 そして、学園での成績が良かったからなのかは分からないが、所属して一年で小隊の指揮を任された。 しかも最前線の。


 まあいい、俺はこの力を使って、敵を殺すだけでいいんだ。僕には仲間がいる。


 それからは、前線に行って敵を殺す毎日。

 毎日殺した。

 生成した。

 召喚した。


 それがルーティーンになっていた。

 殺すことすら。


 防衛のために新たなる生命を生み出し、そいつらをこき使って勝つ。

 それを見ていると、そいつらが可哀想に思えてきた。


 昔の記憶を、少しだけ感じたから。


 もう戦場で生き絶えていく者を見たく無い。

 死体の山が積み上がって最後、少しだけ体が動いて、生きているのか?って考えるのが嫌だ。


 だから僕は、こいつらを全員救ってあげるんだ。


 こいつらは従順だ。

 生み出した時は渋々従っていたようだが、今となっては俺のことを神様かなんかだと思ってるようだ。


 俺は神様でもなんでもない、ただの人間なのにな。


 今は防衛のための設備を建設させている。

 今回はなぜか他国の奴隷?という者を使っているらしい。

 この目で確かめたことはないのだが、とても働き者で“使える”奴らしい。

 ま、そんなことはどうでもいいんだ。

 この防衛さえうまく行けば、ね。


 ちっ、今回はなぜかこっちが押されている。

 戦力は明らかにこちらが優勢なのだが、なぜか押されている。


 おかしい。なぜ。完璧にシミュレーションしたはずだ。


 っ! 頭が痛い。意識が真っ白な空間に連れて行かれる。


「新たなる生命は悪くありません。悪いのは“奴隷”」


 はっ。いまの天啓は。いや、天啓が本当だとしたら。 俺はすぐに戦場へ向かう。


 なんだこれは? 戦場だと思っていた場所は、なぜか防衛の準備の最中だった。

 俺は指示したはずだ。映像にもしっかり……。


「おいお前、あいつが奴隷か?」


「はっ、はい! そうです。あのお方はとても博識で、今やこの戦場には欠かせないお方なのです!」


 ちっ、気持ち悪い。

 なぜ僕じゃなくあいつのことを…。


 まあいい。


「おい、そこの奴隷、こっちに来い」


 その瞬間、相手は何かを察したかのようにいきなり剣を抜き……。

 ふん、そんなの見え見えなんだよ。


 平地一帯に地響きが響き渡る。


「な、なんですか!? このおっきい溶鉱炉みたいなやつは」


「ふん。まあ、そこで見ているがいい。我が奴隷達よ」


「エクスバスターフレア」


 剣の先から出たその炎は、奴がいる溶鉱炉の中へ一直線で進む。

 これであいつは骨になっ――。


 その瞬間。剣が一直線で炎を切り裂きながら、こちらに向かってくる。


「なんだ、これは早すぎて俺のス――」


 ガキン!


 剣の先と先がぶつかり合う。

 僕は、その勢いで吹っ飛ばされ、勢いよく壁にぶつかる。


「クソが。なんで俺の攻撃を受けて生きていられる。そもそもなんで、こんなところに」


「……」


「ふん。対話もできないなんて、所詮は奴隷だな」


 俺は、今出せる精一杯、いや、最大値を出して攻撃を繰り出す。


 突く、斬る、薙ぎ払う、蹴る、殴る。

 何をやっても少しだけ相手が上回っている。

 なぜだ? なぜあいつが俺より少しだけ先を行くんだ?

 なぜだ。

 俺は。

 俺は。

 俺はぁぁぁ!


 ザク


 その一瞬の乱れで、僕は腹に一撃もらってしまった。


「ちっ、ちょっと傷つけられたからっていい気になるなよ? まだ終わってねえ。まだ、まだ……」


「……」


「おら、避けるしかねえのか? 俺の全身全霊の攻撃を避けるしかできねえのかよ! おい。避けるしか。おい。避けるしかさぁ……」


 なんで全部避けるんだよ。

 そんな済ました顔で。

 俺の全てだぞ? なんでお前如きが避けられる。

 そんな済ました顔で。 おまえが、お前は……。


 そこからは一方的な蹂躙だった。

 僕は、相手の攻撃を一つもかわせずに、ただひたすら、体で受け続けるだけ。

 相手は右肩を狙って剣を振り下ろす。

 何度も。

 何度も。


 もう意識が朦朧としている。

 ただ攻撃を体で受け続けるだけ。

 それ以外は、何も。


 ザシュ、ザシュ、ザシュ、ザシュ


 真っ赤。

 地面も、空も。

 何もかもが真っ赤に見える。

 僕はもう、終わりだ。

 ここで終わるんだ。

 何もかも。

 全て。


「兄さん。なんで僕がここにいると思う?」


 なんだ? この声は。

 走馬灯か? こんなところに弟なんて、いるはずがない。

 あいつは、あいつは……


「大丈夫。何も考えなくていいんだ。兄さんが僕を救ってくれたように。今度は僕が、兄さんを救うから」


「なにをいってr」


 ザグ


 倒れている僕の腹に剣を突き立て、魚をおろす時みたいに慎重に剣を運ぶ。


 腹、腕、指、腕、胸、首、胸、腕、指、腕、腹。


 全てを慎重に切っていく。

 息ができない。

 あまりの痛みに、僕は現実を認識するのをやめた。

 この赤い空を見ながら、あとは身を任せるだけ。

 僕は何もしない。

 もう、何もできない。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

この作品は夢で見た光景から着想を得て書いた短編です。

少しでも印象に残る物語になっていれば嬉しいです。

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