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恵方巻を丸かじりしてオメガになるはずが、なぜか氷の騎士団長に胃袋を捕獲され溺愛されています  作者: 水凪しおん


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第13話「新月の厨房と永遠のレシピ」

 あれから数ヶ月。俺は宮廷料理長に昇進した。

 異例の大出世だが、誰も文句を言う者はいない。俺の料理を食べたいがために、他国からの来賓が増えたほどだからだ。

 厨房は今日も戦場だ。だが、以前のような閉塞感はない。

 コメットをはじめとする部下たちが、活き活きと働いている。


「料理長! 騎士団から夜食の追加注文です!」


「はいよ! おにぎり百個、追加だ!」


 声を張り上げ、俺は巨大な釜の前に立つ。

 中には、あの雪米から育てた新しい品種の米が炊き上がっている。

 仕事が終われば、俺には帰る場所がある。

 城下の一等地に構えた、クラウス様との愛の巣だ。

 騎士団の寮を出て、二人で暮らしているのだ。

 深夜、家に帰り着くと、リビングの明かりがついている。

 ドアを開けると、エプロン姿(!)のクラウス様が出迎えてくれた。


「おかえり、ルエン。……見よう見まねで作ってみたんだが」


 テーブルの上には、形はいびつだが、一生懸命握ったらしいおにぎりが並んでいた。

 最強の騎士団長が、俺のために米と格闘した姿を想像すると、愛おしさで胸がいっぱいになる。


「ただいま戻りました、クラウス。……すごく、美味しそうです」


 一つ手に取り、頬張る。

 塩加減は適当だし、米は少し潰れている。

 けれど、俺にとっては世界一の味だった。


「どうだ?」


「最高です。……三ツ星をあげます」


 俺が笑うと、彼も安堵の笑みを浮かべた。

 食卓を囲み、今日あった出来事を語り合う。

 そんな些細な日常が、今の俺にとっては何よりの宝物だ。

 俺はオメガにはなれなかった。

 けれど、あの恵方巻は確かに俺の運命を変えた。

 自分を愛すること、信じること、そして一歩踏み出す勇気。

 それが魔法の正体だったのかもしれない。


 窓の外、月が静かに輝いている。

 俺たちの物語は、ここで一旦幕を閉じる。

 けれど、愛と料理のレシピは、これからも永遠に続いていくのだ。

 ごちそうさまでした。そして、これからもよろしく。

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