第1話「目覚めよ、鋼の獣!!」
――その日、世界は鋼の獣に出会った。
怪獣でもない。ロボットでもない。
それは、かつて地球を滅ぼすために造られた“兵器”だった。
でも。
たったひとりの少年が、その兵器に“命令”を下した。
「――地球を、守れ!」
この物語は、ひとりの少年と、ひとつのロボットが出会い、
“地球の未来”を選び取っていく、巨大戦記ヒューマンドラマです。
派手な戦闘、重厚なロボットの咆哮、
そして少年のまっすぐな叫びが、
読み終えたあなたの中に、何か熱いものを残してくれたら。
願わくば、この“鋼機獣ガイアロイド”が――
あなたの心のどこかに棲みつき、
ともにこの世界を、守ってくれますように。
それでは、物語を始めましょう。
“地球を守るために生まれ変わった獣”と、
“それに心を届けた少年”の物語を。
◆星乃 蓮
年齢:12歳(小学6年生)/性別:男
性格:好奇心旺盛、機械オタク、ちょっと生意気。だけど芯はまっすぐ。
「地球を……守れよ、相棒!」
彼の小さな手には、世界を揺るがす遠隔デバイス《ネクストコア》が握られていた。
小さな体と大きな夢。空を見上げれば、誰よりも遠くを想像する。
古びた廃基地で出会った“鋼鉄の怪獣”は、そんな彼に反応した。
運命でも、偶然でもかまわない。
彼は、誰かが残した武器に、こう命令する――「守れ」。
守るべきものなんて、まだちゃんと分かってない。
だけど、誰かが泣いている街で、ただ立ち尽くすのは嫌だった。
彼の物語は、始まったばかりだ。
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◆L.O.I.D.(ロイド)/鋼機獣ガイアロイド
形式番号:X-09A “GAIALOID”
性格:無感情→徐々に学習。元・侵略兵器、現在・地球防衛機。
《命令、受領。地球を、守る》
その“声”は、かつて宇宙から届いた。
惑星破壊用自律戦闘兵器。感情も、意志も、持たぬはずだった。
だが今、彼には“少年の声”が届いている。
胸に埋め込まれたガイアリアクター。
地球の鼓動と共鳴するその心臓が、ゆっくりと熱を持ちはじめていた。
「それは兵器ではない。意志を持ち始めた、地球の獣。」
呼ばれていなかった“守護者”が、今、目覚める。
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◆星乃 陽子
年齢:35歳/性別:女性/職業:母・スーパーのパート店員
「あの子、ほんとにどこまで行っちゃうんだろ……」
蓮の母。明るく気丈な女性。だが、夫とは離婚し、女手一つで蓮を育てている。
家計は苦しいが、息子の“オタク心”には理解を持っており、時々呆れながらも応援している。
――彼女は知らない。
息子が“地球最強の兵器”を操っていることを。
だがいつか、知る日が来る。
そして、そのとき彼女がかける言葉はきっと――誰よりも強い。
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◆東雲 翼
年齢:12歳/性別:男/蓮の親友。ガジェット系知識は無いが運動神経抜群。
「俺は信じるぜ、蓮。お前の“好き”が世界を救うかもしれねぇってな!」
蓮のクラスメイトで、探検仲間のひとり。ちょっと口が悪くて、だけど面倒見がいい“兄貴肌”な少年。
基地探検も最初に言い出したのは彼だった。だが、ロボや怪獣の世界には詳しくない。
けれど――
“友達が信じてるもの”を、全力で信じて走れるやつ。それが翼。
蓮が「ひとり」じゃないと、世界に証明する存在。
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◆アシッドレックス
種別:侵略怪獣/全長:89m/重量:54000t/属性:酸性攻撃型/起源:不明
「金属もビルも、溶かして喰らう──」
太平洋の海底から現れた、恐竜のような外骨格を持つ怪獣。
その口から放たれる“高濃度の溶解液”は、あらゆる金属を溶かす。
最初に街を襲った存在。目的は不明――だが、その出現は偶然ではない。
やがて蓮たちは知ることになる。
この怪獣が、“誰か”の命令でガイアロイドを破壊するために送り込まれたことを。
これはただの侵略ではない。
もっと深い、“記憶の戦い”が背後に潜んでいる。
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◆???(黒スーツの男)
年齢:不明/所属:不明/出番:まだ来ていない
「子供が起こした、火遊びには見えないな……」
旧基地跡に残された足跡と、ネクストコアの熱反応。
その情報を、誰よりも早く掴んで動き出した謎の男。
黒い手袋、黒いスーツ、冷たい瞳。
彼が何者なのか――
“ガイアロイド”という存在の真実が明かされる時、明らかになるだろう。
その朝――。
地球は、まだ“それ”が目覚めることを知らなかった。
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1
「宇宙から来た謎の飛行物体が、昨日深夜、太平洋上空で観測されました――」
テレビから流れるニュースキャスターの声を背に、星乃蓮は、冷めかけたトーストをくわえながら朝の支度に追われていた。12歳、小学6年生。機械いじりと都市伝説とロボットが大好きな、少し変わった少年だ。
「お母さーん、筆箱どこー!?」
「リビング! あんた昨日またリュック放り投げたでしょ!」
返事をしながら蓮はバタバタと走り回る。廊下には分解された目覚まし時計、電子工作の部品、そして見たこともない改造タブレットが転がっていた。
ニュースでは、“地球外起源の可能性”という言葉がちらりと流れる。
蓮の目がキラリと光る。
「……宇宙からの人工物。マジだったりして?」
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2
その日の放課後。蓮は、2人の友達と郊外の廃工場――通称「幽霊基地」へ足を運んでいた。
「ここ、ほんまに昔軍の秘密施設やったんか?」
「ネットで見たんやって。“超兵器が眠ってる”って!」
そんな噂話に怯えながらも、友達たちは蓮に引きずられるように門を越えた。
鉄柵を越え、ツタの絡まる古びた扉を開け、埃だらけの廊下を進む。ひとつ、またひとつと、友人たちは「もう帰ろう」と言い出すが、蓮だけは足を止めなかった。
「俺だけでも行く」
その言葉が、運命を変えた。
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3
地下へと続く鉄階段を見つけた蓮は、迷わず降りていった。
真っ暗な空間。だが蓮の改造タブレットが、微弱な電波を拾って反応した。
「……何かある」
旧式のハッチに手をかけると、まるで彼を歓迎するかのように、錆びた扉がギィィィと音を立てて開いた。
そこは……巨大な格納庫だった。
暗闇の中に、そびえ立つ――それは“獣”だった。
メカニカルで重厚な胴体。角を思わせる鋭い頭部。背中からは巨大な尾がうねるように伸び、全身に鉱石のような六角のパーツが埋め込まれている。
まるで、鋼鉄の怪獣。
蓮は、言葉を失った。
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4
カラン。
足元で何かが転がった。
銀色の板状のデバイス――まるで、タブレットのような形状。
蓮がそれに手を伸ばした瞬間、格納庫の空気が変わった。
《ユニット識別中……遠隔操縦者認証完了》
無機質な機械音が響き、蓮の手の中のデバイスが青白く光った。
ゴゴゴゴ……。
巨大なロボットの眼が赤く光り、鈍くうなりを上げながら、ゆっくりとその顔を持ち上げた。
そして、見た。
たったひとりの少年を。
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5
その夜。
都市の海辺に、突如として現れた巨大な影がひとつ。
体長80メートルを超える、金属と肉体が融合したような怪獣――アシッドレックス。
鋭い牙と背びれを揺らしながら、都市へと進行を始めた。
テレビから流れる緊急警報。逃げ惑う人々。
だが蓮は、地下施設の中で、それを――見ていた。
手の中のデバイス《ネクストコア》が、震える。
《侵攻生命体確認。迎撃機、起動します》
「ちょ、待っ――え、起動って、あれが!?」
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6
夜空を切り裂く轟音と共に、地中から巨大なシルエットが出現する。
燃え上がる煙の中、ゆっくりとその全貌が現れる。
四肢を持ち、地を蹴り、怪獣のように咆哮するそれは……人ではない。
それは、“鋼機獣ガイアロイド”。
機械でありながら、生き物のような存在。
「お前……ほんとに動いてるのか!?」
蓮の声に呼応するかのように、ガイアロイドが首を振る。
ネクストコアが震え、彼の指先が、命令を与えた。
「行け! あの怪獣を止めて!!」
⸻
7
戦いが始まった。
アシッドレックスの吐く酸のブレスに、ガイアロイドは腕を構え、
《ガイア・シールド、展開》――バリアが弾ける。
尾をうねらせ、プラズマ尾刃が閃く。
振り下ろされた爪――ヴァイブレイクローが火花を散らす。
そして――
「今だ!! 撃てぇえええええええ!!」
《テルモ・キャノン、発射》
胸部から放たれた灼熱の光が、アシッドレックスの装甲を貫いた。
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8
戦いが終わり、静寂が戻る。
燃え残ったビルの間に、そっと佇むガイアロイド。
蓮は、静かに語りかけた。
「……お前、一体なんなんだよ」
ガイアロイドの目が、赤から青に変わる。
《私は、ガイアロイド。地球を滅ぼすために作られた、兵器》
蓮は言葉を失う。
《だが、今は……お前の命令に従う》
蓮は静かに、ネクストコアを見つめた。そして、握りしめる。
「なら……命令する。地球を、守れ!」
⸻
こうして、世界は知ることになる。
鋼鉄の獣が、地球を守る戦いを始めたことを――
そして、それを操るのは、たったひとりの少年だったことを。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
“鋼機獣ガイアロイド”第1話、いかがだったでしょうか?
この物語は、単なる「ロボットVS怪獣」の話ではありません。
本来は地球の敵として作られたガイアロイドが、少年・蓮との出会いによって、
少しずつ“自分”という存在に目覚めていく。
それは、命のない兵器が“心”を持つかもしれない、というSFであり、
同時に、「人と人外」「過去と未来」「破壊と希望」がぶつかり合う、壮大な“再生の物語”です。
蓮が何を信じ、どう成長していくのか。
ガイアロイドが何を選び、どんな言葉を持っていくのか。
そして、敵として迫る“怪獣たち”の真実とは――?
第2章では、AIロイドが感情に初めて触れ、
“兵器”ではない“存在”としての目覚めが描かれます。
ぜひ次回も、彼らの“進化”と“選択”を見届けてください。
地球の鼓動が、まだ聞こえるなら。
また、お会いしましょう。