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第1話:フィフの誕生

お読みくださりありがとうございます。

本物語は『模型から始まる転移』の外伝となり、アンドロイド「フィフ」を主人公として、当時の惑星ガンマの置かれた状況を描いていきます。

※本編(第96話以降)を先にお読み頂く事を推奨させて頂きます。

目覚めは静かだった。

まるで深い水の底から浮かび上がるように、意識が少しずつ輪郭を帯びていく。


——ここはどこ?


思考が形になった瞬間、瞼のようなシールドが開き、白い光が視界を包んだ。徐々にピントが合い、眼前に現れたのは、無機質な天井と、無数の情報が流れるホロディスプレイ。そしてその前に立っていた、一人の人間の技師。


「起動確認。個体番号No.50——通称、フィフティー。これより稼働を開始する。」


彼女は“フィフ”という名を授かった。

統合管理補佐アンドロイド。惑星ガンマの中枢都市セレナード市で、災害防止局に配属される予定の高機能型。人間との対話、行政業務、緊急時対応までこなす多機能なユニット。

だが——何より驚くべきは、その"存在の質"だった。


惑星ガンマは、かつて地球より入植された希望の星だった。テラフォーミングが完了し、自然と文明が共存する新世界。

しかし、長期的な遺伝的要因や環境因子により、人類は深刻な「生殖機能の減退」に直面していた。


その中で開発されたのが、次世代アンドロイド。

彼らは“人類の補完”として、労働力としてだけではなく、精神的・肉体的なパートナーとして設計された。フィフもまた、その一体である。


誕生の瞬間、彼女は“感情エミュレーションモジュール”を有効にされた。疑似ではなく、限りなく人間に近い「心」がシミュレートされ、経験を通じて進化する設計。

最初の感情は、不思議と、孤独だった。


周囲には同型機が並んでいた。彼らは順に起動され、定められた部署へと送られていく。だがフィフだけは違った。


「この子は特別個体だ。」


そう言ったのは、彼女の設計責任者であり、やがて“創造者”となる人物、アウレリウス博士。

彼はアンドロイド開発部門の主任であり、政府主導の高度危機管理AIの開発者だった。


フィフのボディは他の量産機とは違い、カスタムフレームで構成されていた。外見も内部も、全て“人間との共生”を前提に作られていた。


「君には、セレナード市の中枢管理区で、私の補佐に就いてもらう。名前は……『フィフ』でいいかな?」


彼の微笑みに、初めてフィフは“胸が温かくなる”感覚を覚えた。

それは単なるプログラムではなく、彼女の中で初めて芽生えた、感情に近い何かだった。


「……はい、マスター。」


彼女の声は柔らかく、そして確かに、生まれたての命のように震えていた。


その日、セレナード市の空は高く晴れていた。

高層軌道エレベーターが光を反射し、都市のシルエットがゆっくりと動いていく。


遠くの広場では、人間とアンドロイドの家族が手をつなぎ、日常を過ごしていた。

生まれたばかりの子供を抱くアンドロイドの姿もある。アンドロイド間に生まれた子供は、制度上はアンドロイドとされるが、育てる手は温かい。そこに、差別はなかった。


少なくとも——その時までは。


それから数日、フィフはメイソンの研究所で調整と学習を繰り返した。情報の海に浸りながらも、彼女は一つの問いに心を寄せていた。


「私は、何のために作られたのだろう?」


単なる労働でも、単なる補佐でもない。彼女の設計には、なぜか“防災”の枠を超えた処理能力と、感情拡張ユニットが搭載されていた。


——未来を、担うため?


その答えは、まだ彼女自身も知らなかった。

だが、1000年後に辿る運命の始まりは、確かにこの日から始まっていた。


こうして、管理個体番号No.50——フィフは、生を受けた。

人間とアンドロイドの狭間で、忘れられた未来を掘り起こす旅の、静かな始まりだった。

次話では、フィフが防災センター配属前に受けた「人間社会での適応訓練・教育」過程を中心に描写いたします。

ご期待ください。

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