第7話 独房のパイロット
惑星揚陸艦・天馬弐番艦は、二隻の小型戦闘艇との戦いで船体を破損し、修理のために衛星ツクヨミの中継基地へ向かう。
この戦闘では六名の強襲歩兵が戦死したが、なんとか無事に戦闘を終えた僕は、待機室で宇宙服を脱いだ後、
「軍曹の、お子さんたちは何処にいらっしゃるのですか?」
と、大島優歩軍曹に質問した。優歩軍曹はタンクトップ姿で、エナジードリンクを飲みながら、
「アマテラスのB地区−補給基地の託児所に預けていのよ。私の旦那も輸送部隊の下士官だから」
そう答えて言葉を続ける。
「次の作戦が終わればね。私はB地区−補給基地に異動になるのよ。久々に子供たちと暮らせるわ」
次の作戦とは、惑星マーズの武装勢力への掃討作戦だ。
この惑星マーズには、雑多な非人類型のエイリアンが居住していてた。そして、すでに無政府状態であり、反政府・武装勢力が実質支配している。
「でも、次の作戦は、激戦になりそうですね」
「そうね。こんな大規模作戦は、私も久々よ」
この時、弐番艦の捕虜収容室には、一人の男性が拘束されていた。彼は第七人工惑星で優歩軍曹が拉致した民間パイロットだ。
僕は、小隊長の福原ハル香中尉と共に、このパイロットに食事を運んだのだが、
「俺は武装勢力とは無関係なんだよ。何で牢屋に入れるんだ。すぐに第七人工惑星に帰せ」
と、パイロットは独房の中で主張している。
だが現在の第七人工惑星は、第三即応機動連隊と武装勢力が交戦中で、このパイロットを返すに返せない状況なのだ。
ハル香小隊長は、
「第七人工惑星は戦闘地域になっています。そのため、あなたは身柄は、この後、惑星アマテラスに送られることになりました」
そう説明したのだが、
「何で俺がアマテラスに行くんだよ。あんたらは横暴すぎるだろう。俺は暴力を振るわれ、無理やり協力させられたんだ」
パイロットは納得しない様子だった。
「その件でしたら、アマテラスに到着後、銀河人権センターに訴え出て、連邦共和国に賠償金を請求すればいいでしょう」
ハル香中尉は冷静に言ったのだが、パイロットは、この言葉で、さらにに怒りを覚えたようで、
「おいおい、他人事みたいに言うなよ。あんたの部隊が、俺を酷い目に合わせたんだろ!」
と、きつい口調で抗議した。そんなパイロットに対して僕は、
「まあまあ、少し落ち着いて、ご飯だけでも食べて下さいよ」
と、なだめながら、食事を与えるのだった。