第5話 宇宙での戦闘
武装勢力の罠にかかり、思わぬ攻撃を受けた第一小隊だが、なんとか母艦の惑星揚陸艦・天馬弐番艦に帰還することができた。
そして、僕たちは待機室でパワードスーツを脱ぎ、一息ついてコーヒーを飲む。その時、江黒蓮上等兵が、
「弐番艦は第七人工惑星を離れて、次の作戦に向うらしいぜ」
と、言ったので、僕は疑問に思い、質問した。
「では、あの武装勢力はどうするのですか?」
「第三即応機動連隊が行って鎮圧するそうだ」
即応機動連隊とは大規模編成のパワードスーツ部隊である。
僕と江黒上等兵が、そんな話をしていると、
「強襲歩兵隊は、ただちに戦闘準備をせよ」
と、艦内放送が流れ、僕たちは再び、小隊長の福原ハル香中尉の前に集合し、整列した。
「所属不明の小型戦闘艇が二隻、弐番艦に接近しているらしいの」
所属不明ということは、おそらく反政府・武装勢力の船だろう。
続けてハル香小隊長は、命令を下達する。
「強襲歩兵は弐番艦の甲板に出て、敵を迎撃することになったわ」
つまり、宇宙服を着て重機関銃を抱え、艦の外に出るということだ。
「えっ、本当に、そんなことを」
僕は、あまりにも無茶に見える戦法に、思わず狼狽した。
だが、強襲歩兵の各小隊は、速やかに持ち場に走り、メンテナス用のハッチから、一人、また一人と艦の外に出て行く。
その中で大島優歩軍曹は、
「命綱はシッカリと付けること。甲板から離れると、救出は不可能だからね」
と、言って、さらに、こう付け加えた。
「つまり滑り落ちれば死よ」
「は、はい。了解しました」
僕は甲板に出ると、震える手で、メンテナス用のフックに命綱を繋ぐ。
「さあ、もう少し、前へ出るよ」
重機関銃を担いだ優歩軍曹は、フワリと、宇宙空間に浮かび上がって甲板を移動した。
「あっ、ちょっと、待ってください」
弾薬箱を抱えた僕は、必死に後を追う。
「早く来い、敵が来るよ」
重機関銃での射撃は二人一組。一人が射手で、もう一人が弾薬係だ。僕は優歩軍曹の弾薬係だった。
こうして強襲歩兵隊の二百名が、弐番艦の甲板で迎撃態勢を整えると、宇宙服の通信機から、
「所属不明艇、二隻、接近、これより本艦はミサイル攻撃を行う」
と、戦闘司令室からの連絡が入る。直後、ミサイルが次々に発射された。
「当たれ、当たれ!」
この時、僕は声に出して祈る。敵の艦が沈めば、僕たちは艦の中へと戻れるのだ。
「・・・・・・・・」
しかし、爆発は起こらない。