最終話 激戦のあとに
激しい戦闘の中、僕は負傷した小隊長の福原ハル香中尉を庇いながら、遮蔽物へと身を隠した。
バババババーン、バババババーン。
パワードスーツ姿の僕は、必死に敵の昆虫型エイリアンを撃ち落とそうとしたが、弾は当たらない。
「逃げるのが上手い奴め」
弾を撃ち尽くし、弾倉を交換する僕。その横で、
「私ね、実はアイドルを目指していて、タレント養成所に通っていた事もあるのよ」
ハル香小隊長が場違いな話を始めた。その話を聞いた僕は、
「それが何故、職業軍人に?」
と、質問する。
「実は、家族が自爆テロに巻き込まれて、皆、死んでしまった。だから復讐のために、士官学校に入校したのよ」
そう語るハル香小隊長は悲しい顔をしていた。
その時だ。上空で、
ドゴゴゴゴオオオォォォォーン!
大爆発が起こり、惑星揚陸艦・天馬弐番艦が炎上する。敵からの集中砲火を受けたのだろう。
「弐番艦が轟沈した!」
狼狽する僕。さらに、次の瞬間。
ドカアーン!
戦車砲の一撃で、遮蔽物が破壊され、吹き飛ぶ、僕とハル香小隊長。
「小隊長、無事ですか!」
僕は、地面をゴロゴロと転がりながら、大声で叫んだ。
「大丈夫よ」
ハル香小隊長は身を起こしたが、その刹那、
ドゴーン!
次の戦車砲で、一瞬にして、木っ端微塵にハル香小隊長。
「な、なんて事だ」
呆然とする僕に向かって、
「逃げろ、逃げるんだ!」
大声で叫ぶ、大島優歩軍曹。だが、しかし、
ドゴーン!
砲撃音が響き、僕の視界が真っ暗になった。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
どれほどの間、眠っていたのだろう。目を覚ました僕は、思わず声をあげる。
「ここは、何処だ?」
「救助艇の治療室よ」
応えたのは、頭に包帯を巻いた優歩軍曹だった。
「惑星マーズでの戦闘には勝ったわ」
そう言った優歩軍曹が微笑みかける。
優歩軍曹の話によると、ハル香小隊長は勿論、即死だったようで、小隊の半数が戦死したという。江黒蓮上等兵は惑星マーズで行方不明になったらしい。
そして、治療室で寝かされている僕は、
「み、右足が無い!」
戦闘で右足を失ったようだ。
「でも命は助かったのよ。これで君は惑星アマテラスに帰れるわ」
その後、僕は輸送船に乗り換え、故郷である惑星アマテラスに向かった。その船には補給基地に転属する優歩軍曹も乗っている。
「これで優歩軍曹は、お子さんと暮らせますね」
「ええ、旦那も来月から、基地勤務になるのよ」