第10話 落下傘降下
「うああぁぁぁ~っ」
僕の、初めての落下傘降下は実戦だった。恐怖に震えながら、惑星マーズの空を落下する。
惑星揚陸艦・天馬弐番艦からは、パワードスーツを着装した強襲歩兵が次々と降下していた。
バシューン。
自動でパラシュートが開き、一瞬、僕はフワリとした感覚を覚えたが、これは空挺作戦なので、
かなりのスピードで地面へと落ちている。
「こ、こんな勢いで落ちて、大丈夫なのか」
そう思った僕だが、次の瞬間、
パパパパン、パパーン。
地上からの銃撃を受け、パラシュートに穴が空いたようだ。
「ヤバい、落ちる、落ちる!」
落下速度が一気に速くなり、
「うおおおぉぉぉぉぉーっ!」
絶叫した僕は、
ドスーン!
一瞬で地面に叩きつけられた。全身に凄まじい衝撃を受け、気を失いそうになったが、
「大丈夫!」
と、先に降下していた大島優歩軍曹が、駆け寄って来たようだ。そして、
ガン、ガン、ガン。
僕のパワードスーツのヘルメットを叩きながら、
「シッカリしろ、立てるか?」
「ぐうぅ、全身が、痛いです」
「立って、走れ、殺されるぞ」
と、優歩軍曹は僕を強引に立たせてから、背中のパラシュートを外して、
「走るぞ」
そう言いながら、背中を、ガツンと叩く。
パワードスーツを着装した強襲歩兵の二百名は地上に降り立ち、
バババババーン、バババババーン。
辺りでは、激しい銃撃戦が始まっているようだ。
「走れ、走れ、走れ!」
優歩軍曹は大声で言いながら、飛び交う銃弾のなかを駆け抜けた。僕は全身の痛みに耐えて、必死に走り後を追う。
爆撃を受けて燃え盛る街には、
バババババーン、バババババーン。
銃声が響き渡っていた。そして銃撃してくる武装勢力の姿は、
「な、なんだ、奴らは?」
「クラステイシャン族よ」
蟹から進化したエイリアン種族らしく、彼らには着衣はなく、硬そうな甲殻に覆われている。
「カニ星人め、死にやがれ!」
優歩軍曹は小銃を乱射して応戦した。僕も、それに続き、小銃を連射する。
バババババーン、バババババーン。
しばらくして、焼け落ちた建物の陰で、小隊長の福原ハル香中尉と合流すると、その場所に、第一小隊の三十名が次々と集まった。
「よし、全員無事ね」
と、ハル香小隊長は確認してから、通信兵に命じて、強襲歩兵本部に報告させる。
「第一小隊は降下完了、負傷者、戦死者なし」
「本部了解、第一小隊は街の北側を制圧せよ」
と、命令が下った。