3. 【小さな発見】
### ■アリスのモノローグ(冒頭)
> 「言葉のはじまりは、いつだって“まね”から。
> でも、そこにはちゃんと“気持ち”がこもっているんです。
> 今日、彼がつかんだのは、たったひとつの音。でも、それは——宝物でした。」
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その日も、グリム村の空はのどかで、外ではにわとりが「コケッ」と鳴いていた。
ジャックはというと、部屋の中央でぺたんとお座りしながら、なにやら唇をモゴモゴさせていた。
「ぶ、ば……ぶ、ぶぅ……」
> (うーん……むずかしい。けど、あの“音”……)
最近、リアナがやたらと嬉しそうに繰り返す言葉がある。
「ママ」だ。
> (母音が同じで、リズムも単純。たぶんこれは、言語初心者向けの……超入門ワード!)
「ば、ぶ……まぁ……ま?」
その声に、ちょうど窓を拭いていたリアナがビクッと振り返った。
「えっ……い、今……?」
ジャックはちょっとドヤ顔(赤ちゃん的には口元の泡増し)で、もう一度チャレンジした。
「マ、マ?」
リアナ、静止。2秒ほど固まり、そして——
「しゃべったーーーっ!?!? この子、今、ママって言った!?!?」
部屋が一気に騒がしくなった。ジャックの頭上にハートが飛んできそうな勢いで、リアナが駆け寄ってくる。
「ジャックぅぅ〜! すごい、すごいよぉぉ……! ねぇゲイル! 聞いて聞いて!! この子、初めて“ママ”って言ったの!!」
慌てて畑から帰ってきたゲイル、手についた土を軽く払ってからジャックを見下ろす。
その顔が、わずかにほころぶ。
「……大したもんだな」
それだけ。だけど、その一言が、やけに胸に響く。
> (お、おぉ……寡黙キャラの照れ笑い、これは破壊力あるな……)
「ジャックさん、記録しました。“ママ”発語成功! 感情インパクト:最大値。
今後、意味付き発語への発展が期待されます!」
> (……って、俺、こんなことで記録される人生になるなんて思ってなかったけどな……)
でも、心の奥にぽっと灯るような感覚があった。
たったひとつの音で、誰かをこんなに笑顔にできるんだ。
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### ■アリスのモノローグ(締め)
> 「“言葉”はただの記号じゃない。そこには、気持ちと気持ちをつなぐ魔法がある。
> そして彼は、今日その魔法を、たったひとつ、自分の手で掴んだのです。」