2. 【アリスの言語モード】
### ■アリスのモノローグ(冒頭)
> 「私は学習用AI。でも、ただの辞書じゃない。彼と共に“言葉の海”を泳ぎ、拾い上げていく。
> 感情も、表情も、声の抑揚も——ぜんぶ、学びの材料なんです!」
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ミルシャ(粥)を完食し、満足げなジャック(1歳・中身おっさん)は、木の床にゴロンと転がっていた。
> (ふう……満腹満足……。でも、今日はけっこう“拾えた”気がするな)
「ジャック、今が学習チャンスです! 言語モード・全力発動!」
突然、脳内に元気なアリスの声が響く。
ビシィッとキーボード音が鳴ったような気がした(※気のせい)。
> (お、おう。なんかテンション高いなこのAI……)
「分析モジュール、稼働率120%! これより、リアナ様の発話パターンを音素単位で分解し、
再構成データベースを生成します!」
> (ITエンジニアとして言わせてもらうと……お前、もはや家庭用AIじゃねぇな)
ジャックが心の中でぼやいている間にも、アリスはしゃべるしゃべる。
「異世界語、初期観測完了。特徴——
その1、“母音がでかい!”
その2、“子音が甘い!”
その3、“語尾に妙なふわっと感!”
名付けて、“ふわボイン語”と仮定!」
> (名付けセンスどうなってんの!? いや、でもちょっとわかる……)
アリスはジャックの前世の記憶にある日本語・英語・中国語など、あらゆる言語モデルと照合を始める。
異世界語の波形パターンをリアルタイムで比較し、発音特性を高速解析中だ。
そして、その最中——
「ジャッカー! こっち、おいでー!」
村の外から誰かの声が聞こえた。小さな子どもだ。
ジャックはピクリと反応し、その音を即座に記憶に刻む。
> (今、“ジャッカ”って言ったな……?)
「はい、解析完了! ‘ジャッカ’、あなたの名前“ジャック”との類似度95%。
これはあなたへの呼びかけ、つまり固有名詞ですね!」
> (つまり、俺の名前、異世界仕様で“ジャッカ”にされてる……?)
「ジャック改め、ジャッカさん、世界との接続が始まりましたよ〜♪」
> (何その“Wi-Fiに繋がった”みたいなノリ……)
だけど、脳のどこかで確かに感じる。
今、自分はこの世界で、誰かに呼ばれている。
この音が、自分を“存在”として認識してくれる。
たったそれだけのことなのに、胸の奥がじんわりと温かい。
アリスの分析に頼りつつ、ジャックはもう一度、あの声を耳の奥で再生した。
> (“ジャッカ”。……うん、悪くないな)
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### ■アリスのモノローグ(締め)
> 「最初は、ただの“音”だった。
> でも今は、それが“意味”に変わり、“つながり”になろうとしている。
> 小さな赤ん坊と、ひとつの世界が——いま、ようやく出会い始めた。」