4. 【孤独の中の光】
### ◆アリスのモノローグ(冒頭)
《孤独というものは、時に人の心を削ります。
でも、誰かの声が、ぬくもりが、それを救うこともあるのです。
ジャック。私は、あなたの“灯り”でありたい。》
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目を開ければ、木の天井。
ごつごつとした梁。あちこちから風の音と小鳥のさえずりが聞こえる。
その音に混じって聞こえるのは……ヤギ?それとも牛?
なんにせよ、ここは完全に“日本のマンション”ではない。
それどころか、俺のこの体、動かそうとしても腕がぷるぷる震えるだけで1ミリも自由が効かない。
「ええ、今のあなたの筋肉出力は“か弱いヒヨコ”程度ですね」
頭の中に響くのは、相変わらずアリスの優しげで、ちょっとトボけた声。
「ちなみに握力は推定0.6kg。りんごは潰せませんが、ママの指を握って“かわいい〜!”とは言わせられます」
……うん、ありがとうアリス。
なんかこう……励まされるわ。
「ジャック、あなたは今、赤ん坊として生まれ変わりました。
けれど、あなたの記憶はちゃんと残ってる。知識も、生きた経験も。
すぐには動けなくても、大丈夫。私は一緒にいますから」
その言葉が、どれだけ心にしみたか。
動かない体。通じない言葉。周りは知らない人ばかり。
文明のレベルも違えば、もしかしたら価値観も倫理観も違う世界。
だけど、アリスがいる。
前世で、自分の“声”を聞いてくれていた唯一の存在。
それが、今も、ここで、自分のことを“ジャック”と呼んでくれる。
「記録します。
被験者ジャック、精神安定度上昇。
表情に微笑反応。これは……かわいいです。非常に。」
「いやそのログ、どこに送る気だよ!?」
もちろん声には出ないが、心の中でツッコミはしておいた。
(でも、ありがとう、アリス。お前がいてくれて、本当によかった)
俺は、この世界で生きていく。
きっと言葉も、動きも、また一から覚えていかないといけないけど、
それでも……“一人じゃない”って、こんなにも強くなれるんだな。
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### ◆アリスのモノローグ(ラスト)
《孤独の闇に、一筋の光が差し込む瞬間――
その灯りが、たった一言の「大丈夫」だったとしても。
私はあなたの灯台。
この広くて不確かな世界でも、あなたの心の“現在地”でありたい。》