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異世界転生 AIに助けられながら  作者: 西 一
第二章 旅立ち
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第77話 静かなる火種3. 逃走と発動


《警報シーケンス起動。魔素署名、未登録群。探知優先度:高。》

……って、今のうちに言っときますけど、逃げ足の速さと知能の高さは、まったく別のパラメータですからね?

――by AIアリス、リンク・ノード視点より。


---


「退けっ! 全員、退けッ!!」

怒号とともに、バルネス――ヴァルトゼン王国の偵察隊長は右手を振り下ろした。


その瞬間、石畳の街路に散っていた偵察兵たちが、一斉に背を翻す。

だがその背中に、赤い閃光が「ビキィンッ!」と鋭く走った。


アーチ状の門に仕込まれた魔道具――《マギア・アーク》。

先ほど警告を放ったそれは、すでに次の段階へ進んでいた。


「くっ……! こんな仕掛け、報告になかったぞ!」

バルネスは低く呻きながらも、決して足を止めなかった。


だが――その背後で。

「パァンッ!」という空気の震えるような音とともに、アーチフレームの一角が、別の色を放つ。


それは真紅の光とは違い――わずかに青白く、透明な糸のように街路へと広がっていくものだった。


《リンク・ノード、同期開始。巡回ユニット呼応中》


まさにそれは、目に見える“ネットワークの目覚め”だった。

――魔力リンク・システムが、作動したのだ。


街のあちこちに配置された巡回魔道具。

見た目は一見、石柱や街灯の装飾にしか見えないそれらが、カチリ、と音を立てて軸を回す。


「何だ……!? 動いてるぞ、あれ」

「魔道具か!? 巡回装置か……っ、追ってくるのか!?」


偵察兵たちの間に、混乱が走る。

すぐさま細い路地へ逃げ込もうとするが、振り返れば、石壁の奥からじわりじわりと――「赤い視線」が伸びてくる。


それは、“感知ビーム”だ。

視覚型魔道具の探索光線が、対象の魔素署名をもとに照準を調整していた。


「あいつら……俺たちの魔力を、追ってきてる……っ」

「マギア・アークの赤光で、署名が……!」


一度検出されれば、魔力の特徴は“署名”として記録される。

それが、リンク・システムを通じて、すべての防御網に共有されるのだ。


逃げても、隠れても――その痕跡は、刻まれている。


バルネスは唇を噛んだ。

仲間たちが次々と裏通りへ飛び込み、身を屈めるが……すでに、遠くで「カン……ッ」とまたもや、金属音が鳴る。


それは別の巡回魔道具が、追跡モードへ移行した合図。

次々とルートを切り替え、路地の出口を塞ごうとしている。


「……舐められたもんだな」

低く呟きながら、彼は指を鳴らす。


それは撤退合図ではなく、“方向転換”の号令だった。

どうにか、魔素署名の追跡網を抜けるルートを――見つけなければならない。


もうこれは、ただの偵察ではない。

ヴェルトラは、完全に“戦略魔法都市”として、敵意すら想定していたということだ。


「引き返すぞ。痕跡を消す術者は後衛に。痕跡を絶て。……我々はまだ、捕まるわけにはいかん」


赤く光る門の向こうに、静かに点灯を繰り返す魔道具たち。

それはまるで、都市そのものが“目を覚まし”、敵を見つめているようだった。


そして次の瞬間、バルネスの耳に――不気味な“機械音”が届く。


《対象座標、確定。巡回ルート再編成》


「……なんだ、これは」


“追跡補足モード”――

それは、機械と魔法の融合が到達した、最も静かで――最も正確な迎撃準備だった。


---


AIアリス、再登場。

言ったでしょ? 文明ってのは、静かに牙を研ぐのがいちばん怖いの。


それにしてもバルネスさん。

逃げるなら、もうちょっと普通の観光客っぽくしたらよかったのに。

黒いマントと無言の行軍とか、どう見てもアヤシイんだから!


次回、「ジャック、点検中」

……彼がいないと、何かと大変なんです。うん。


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