表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生 AIに助けられながら  作者: 西 一
第二章 旅立ち
337/374

第74話 魔法学校ユイ6歳6. 魔導具メンテナンス実習


(冒頭ナレーション:AIアリス)


ねえ、思い出せる? 子どもの頃に夢中になったもの。バラバラにして、中をのぞいて、「うわあ」って声をあげた、あの瞬間。

――それが知識のはじまりで、ひょっとしたら、未来の扉をノックする音だったのかも。


今日のヴェルトラ魔法学校、午後4限。

ネジと結晶と、ちょっとした微笑みが、小さな胸に火をともす時間。

それじゃ、静かに扉を開けてみましょうか。ジャック、登場です。


* * *


■6. 4限:魔導具メンテナンス実習(15:15〜16:45)


魔導具整備室――その名のとおり、工具と金属の匂いがほんのり漂うこの空間には、子どもたちの背よりも大きな作業机がいくつも並んでいた。

そこに座る生徒たちの顔は真剣そのもの。目の前の知育魔導具とにらめっこしながら、小さな手がカチャ、カチャとネジを外していく。


「これ、こうやってバラすのか……」

ひときわ声を上げたのは、トム。8歳の少年で、ちょっと背伸びして椅子に座っている。

「あ、でも、配線……ちょっとちぎれたかも」

「やっぱり、むずかしいよね……」と、隣の席のミラがこめかみを指でとんとん。細かい部品に目をこらしながら、眉をひそめた。


そのとき――


ギィ……


整備室のドアが静かに開いた。

音に気づいた誰もがふと顔を上げ、目をまるくする。


「……ジャックさん!」


その名を小さくつぶやいたのは、ユイ。6歳の少女で、深い藍色の瞳がじっと扉の向こうを見つめていた。


立っていたのは、15歳の少年、ジャック。制服姿のまま、工具も持たず、ただ整備室の空気を感じるように立っている。

言葉はなく、彼はただ、子どもたちの作業を見渡し、小さく、ほっとするように微笑んだ。

その表情は、どこか父兄のようでもあり、研究者の観察のようでもあり――でも、何よりも、「ここにいていいよ」という空気を静かに伝えていた。


「……これ……見たことある……」


ぽそり、とユイが言った。

目の前のバラバラになった魔導具の中身をのぞき込みながら、小さな指先が、結晶の位置をそっとなぞっている。


「この形……前に遊んだ、おもちゃと一緒だ……」


それは、グリム村で見た古い魔導具。まだ読み書きもおぼつかない頃に触れた、不思議な光の出る球体――

それを作ったのが、目の前に立つ彼、ジャックだった。


トムが突然、「おおお! これ、こうなってるのか! すげえ!」と感嘆の声をあげた。

彼の指先には、魔力を流す細い銀線と、青く輝く魔素結晶のコア。

ミラがそれをのぞき込みながら、ちょっとだけ顔をしかめる。


「でも、これ、元に戻せるかな……? むずかしそうだよ」


そのとき――ふわり、と後ろから声が降ってきた。


「壊れても大丈夫。そうやって覚えていくんだよ」


ジャックが、声をかけたのだ。

その言葉には、不思議な安心感があった。

「間違えてもいいよ」と明言するのではなく、「壊しても前に進める」と背中を押してくれるような、そんな力がこもっていた。


「……また、ジャックさんの魔導具、使いたいな……」


ユイがぽつりとつぶやいた。

彼の背中を見つめる、その瞳は、ほんのすこし潤んで見えた。


「うん」


すぐ近くで作業していたミアが、静かにうなずいた。

言葉は少なくても、子どもたちの心には確かな灯がともっていた。


* * *


■7. 放課後とユイの決意(夕方)


石畳の校門をくぐると、オレンジ色の夕陽が、帰り道を長く伸ばしていた。

ゲートウェイへと続く坂道を、ユイはミラとトムと手をつないで歩いていた。


風が吹き、制服の裾がふわりと揺れる。

ユイはそれをそっと片手で押さえ、ちいさく笑った。


「……あしたは、修復魔法……もうちょっと上手くなるかも」


誰に言うでもなく、でもたしかに前を向いて、そんなふうに言った。


その足取りは軽く、でも決して急がない。

“焦らなくていい”という言葉を、ちゃんと信じているから。


 「ゆっくりでいいんだって。ジャックさんが言ってたから、大丈夫。」


その言葉が、背中を押してくれていた。


* * *


(ラストナレーション:AIアリス)


ゆっくりでも、一歩ずつ。

それがいちばん確かな成長って、ジャックは知ってるのよね。


だって、彼自身もそうやって、いくつも壁を越えてきたんだもの。

次の授業は――おっと、まだヒミツ。ふふ、期待してて。


次回、「ユイ、はじめての模擬戦(仮)」? それとも「ジャック、魔法理論で大混乱たぶん」?

気になる次章も、お楽しみに。


じゃあまた、放課後の空の下で。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ