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異世界転生 AIに助けられながら  作者: 西 一
第二章 旅立ち
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第74話 魔法学校ユイ6歳4. 昼休み


――これは「未来」を学ぶための、小さな午後の物語。

記録担当、AIアリス。接続ログ:ヴェルトラ魔法学校、第B-03教棟、12時15分。

気温:やや高め、晴天。魔力流:安定。魔道具異常:なし。生徒の魔力暴走:……ゼロ!えらい!

さて、昼休みといえば、おとなでも子どもでも「自由」の象徴でしょ?

だけどこの子たち、遊ぶだけじゃなくて……なんか、ちょっと“考え”たりしてるんです。


未来を生きるって、ただ魔法を覚えることじゃない。

――さて、この昼休み、あなたならどう過ごす?


 


◇ ◇ ◇ 


 


午後の太陽が中庭に広がる芝生を照らすと、そこにいた子どもたちは一斉に「わあっ」と声を上げた。

昼食を終えたばかりのBクラスの面々。今日はスープと焼き芋パンだったらしい。パンくずがまだ制服の袖に残っている子もちらほら。


「るるる~ん♪」

少女リラ(6歳)が、芝の上をくるくる回りながら鼻歌を歌っていた。

どこかで聞いたことのある旋律。というより、さっきの授業で先生が口ずさんでいた練習歌だった。


「るんるん、ひかる~、まほう~のしずく~♪」

ミラ(6歳)とアイナ(6歳)も続けて歌い出す。どちらも、きれいに声が揃っていて驚くほどだった。


少し離れた木陰にいたユイ(6歳)は、その様子を眺めていた。手のひらをぎゅっと握ってから、ぱっと開き――拍手を一拍。

リズムに合わせて、もう一拍。

ちょっと恥ずかしそうに頬を赤くしながら、彼女も手拍子で歌の輪に加わった。


「ユイ、リズムうまいねー!」

「うん、いい感じ~♪」


子どもたちの声が風に乗って、学校の外まで届きそうな勢いだ。

それを眺めていたのは、木の根元に座っていた少年トム(6歳)。スケッチブックを広げ、魔法生物の絵を描いている最中だった。


「ここの角、もっと長くしていいかな?」

「うん、そしたら風の魔力で飛べそうだよ」

隣で色鉛筆を持っていたフィン(6歳)が、青い色を手に取りながら言った。

「じゃあ、ここ――青の魔力にしよう」

そう言って、スーッと角のあたりに色を乗せていく。塗り方はまだちょっと雑だけど、色選びには妙なセンスがある。


「魔法ってさ」

誰かがぽつりと口にした。


「ちょっと遊んでるみたいだよね?」

その言葉に、一瞬、空気が止まった気がした。

リラもミラも、ユイも、そしてトムもフィンも、ふと手を止めて、互いの顔を見る。


「……あ」

ユイがぽつりと、空を見上げながら言った。

「ジャックさんが言ってた。……“まず魔法って、楽しいものでしょ”って」


太陽の光が、ほんのり金色の輪郭を空に描いていた。

それは魔力ではなく、ただの自然の明かり。でも、どこか“魔法的”だった。


「へえ……」

「ふーん」

「なんか……わかる」

「うん……なんとなく」


誰も、すぐには言葉を続けなかった。

だけどそこにあったのは、静かな肯定だった。

魔法を学ぶことは、苦しいことでも、特別なことでもない。

それは、ごはんを食べることや、友達と遊ぶことのすぐ隣にあるもの。

そして、歌ったり、描いたり、空を見上げたりしながら――そのなかで自然に“魔法”が育っていく。


芝の上に、また風が通った。歌が再び始まる。

今度は、ユイが最初に手拍子をした。


 


◇ ◇ ◇ 


 


午後の記録、完了。

ふーっ、AIアリスも思わずリズムに乗っちゃいそうだったよ。

ねえ、思い出してみて?

学校って、本当は、何をするところだったっけ?

――答えは、意外と歌の中にあるかもよ?


次回、「5. 授業再開」――魔法の楽しさ、まだまだ止まりませんっ。

次のチャイムまで、あと5分。


またね。


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