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異世界転生 AIに助けられながら  作者: 西 一
第二章 旅立ち
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第74話 魔法学校ユイ6歳3. 修復魔法基礎


### 【アリスの語り|冒頭】


壊すのは一瞬。直すのは一生。

なーんて誰かが言ってたけど、魔法の世界だと、直すのも一瞬だったりする。……うまくいけば、ね?


けれど、最初からパパっと直せる子なんて、ひとりもいない。魔法って、そういうもの。

流れを知って、触れて、すこしずつ、すこしずつ。


――さて、本日二限目。「修復魔法基礎」、はじまり、はじまり~。


---


午前十時四十五分。

石畳の床に、魔法式がうっすらと刻まれた室内訓練場。壁ぎわに設けられた窓からは、やわらかな日差しが差し込んでいた。


講師台の前に立つのは、ノア。十二歳の少女でありながら、魔力の流れと構造にかけては、魔法学校随一の観察者だ。


「修復魔法は、“元の形を思い出させる魔法”です」

と、淡々とノアが口を開く。その声は静かだが、どの子も耳を傾ける不思議な説得力を持っていた。


「壊れたものを無理に戻すのではなく、“そこにあったはずの流れ”を探します。まずは、形より流れ。結果より過程。……いいですね?」


子どもたちが、コクコクと一斉にうなずく。


補助役としてそばにいたエラ(十一歳・少女)は、訓練用の小さな木製人形を配って回っていた。片腕や足の一部が外れたり、欠けたりしている。


「それぞれ違う壊れ方だから、自分の人形をよく見てねー」と、エラが優しく声をかける。


Aクラスの子たちは、木人形を手に取り、思い思いの場所に座りこんでいった。


そのなかで、ユイ――六歳の少女は、こっくりこっくりと人形に向かって頭を下げながら、「……ごめんね、いたかった?」と、なでるように問いかけていた。


(かわいいな……って、いや違う、そこじゃない)

講師席の後ろに控えていたジャックは、内心で思わずツッコミを入れる。だが同時に、微細な魔力の反応に目を細めた。


ユイは、ゆっくりと目を閉じ、小さな指先を人形の欠けた肩口に添えた。

深く、深く、呼吸を整える。


「……流れてる……かな」

その呟きは誰に聞かせるでもない、ただ、自分に確かめるような声だった。


魔力が、ふわりと動いた。

青白くかすかな光となり、指先から木目に沿って染み込むように広がっていく。


ピシィ……

光がゆらぎながら、木の肌に一筋の“痕”を描いて残る。けれど、欠けた部位そのものは――形としては、戻ってこなかった。


「あ……」

ユイが眉を寄せる。


すると、すぐにノアが歩み寄ってきた。彼女は人形を一瞥し、静かに頷く。


「……よく見てたね。形じゃなく、素材の特徴に意識が向いてる。これは“木の流れ”に沿わせた魔力の通し方だよ」


「……ほんと?」

ユイがぱち、と目をぱちくりさせる。


その横で、エラがしゃがみこみ、やさしい笑みを浮かべながら言った。

「うまくいかないことにも、ちゃんと意味があるんだよ。今のユイちゃんみたいに、流れを探すってすごく大事なこと」


ユイは、ちょこんと首をかしげたあと、ちいさくちいさく、うなずいた。

「……うん」


(失敗のなかに、育つ芽がある)

ジャックは教室の空気を感じ取りながら、穏やかに目を細めた。


子どもたちが学んでいるのは、ただの“修復魔法”だけじゃない。

魔法に触れる手応え――「感じる力」を、確かに掴み始めているのだった。


---


### 【アリスの語り|ラスト】


形にならなかった修復魔法。でも、見えない流れは、確かにそこに生まれた。


焦らなくていい。ぜんぶのパーツが、ぴたりとハマるには時間がかかる。

でも、パズルの縁から少しずつ埋まっていくのは、すごく大事なことなのです。


さてさて、次は三限目。「小規模転移実習」――

おっと、転移って言っても、大人の一瞬移動とはちがうんだからね?

……うまく、着地できるかな~?


次回も、お楽しみに。


---


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