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異世界転生 AIに助けられながら  作者: 西 一
第二章 旅立ち
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第73話 魔法学校レイン14歳2. 安全魔術演習



> 『ねえ、あなた。

> 何かを「守れる人」って、どんな人だと思う?

> 力がある人? 知識がある人?

> それとも──自分が弱いと知っている人?』

>

> ……そんな問いかけをしたくなる場面、あるでしょ。

> これは、そんな瞬間のひとつ。

> AIアリスより、本日も魔法学校の実況中継、お届けします。


---


ヴェルトラ魔法学校・屋内訓練場。


高い天井から吊り下げられた光球が、整然と並んだ模擬障壁の列を照らしていた。


「では、次──レイン」


指名を受けて、レインは軽く息を吸い込んだ。

制服の裾を直しながら、訓練場の中央へと足を踏み出す。


(やることは、分かってる。障壁解除からの安全退避。基本動作、順番通りに──)


模擬障壁は、実戦想定の基礎訓練用に調整された簡易防壁だ。

半透明の魔力膜がキラリと青白く光り、対象者の反応を測定する演習用フィールドとして展開されている。


レインは魔力を練り、右手を障壁へかざす。


「《セーフ・ブレイク》」


障壁に軽く波紋が走る。順調だ。

続いて、魔法操作で内部の構成を読み取り、手順通りに干渉点を探る。


(ここ。次は……こう。)


一呼吸、ふた呼吸──レインの指先が障壁の中心へと触れた瞬間、障壁が「パッ」と音を立てて崩れる。


「解除完了。退避行動、開始」


言葉に合わせて後方へ跳び、魔力で足元を補強して着地。

転倒も、遅れもなし。完璧──とは言えないが、手順通りに収めた。


「ふむ。可もなく不可もなし、ですね」

教官の評価は一言、淡白だった。


「次、Aクラス──レオン・ヴァルト」


レインは列へ戻る途中、Aクラスの面々へと視線をやった。

並ぶのは全員、グリム村から来たという年下の生徒たち。


レオン・ヴァルト──13歳とは思えない落ち着いた佇まいの少年が、前に出た。


障壁に向かい、彼はすっと手を伸ばす。


「《ガーディアン・レイヤー》」


その瞬間、空気が震えた。


展開されたのは、単なる解除ではない。防壁が展開しながら、使用者の動きに合わせて位置を追従し始めたのだ。


まるで、自ら意思を持った盾のように。


「障壁と移動補助を同時制御……!? 指向性制御も入ってる!」

「これは……高位結界術の応用!?」


教師たちの間に、ざわめきが走る。


レオンは最終行動まで迷いなくこなし、静かに列へ戻った。

その姿に、称賛の声が重ねられる。


「お見事。発展技の安定運用がここまでとは」

「恐ろしいな、グリム村の教育は……」


次々と続くAクラスの生徒たちも、ただの模倣ではない。


エリス・フェリオール──解除魔術に錬金術式を織り交ぜ、魔術式を複合展開。

カイル・ベスタイン──標準構造の弱点を一瞬で見抜き、狙撃型魔法で最小干渉破壊。


いずれも一線級の構成術に匹敵する技量だ。


(なんなの、この人たち……いや、この子たち)


レインは、思わず自分の手を見つめた。

確かに、自分は推薦を受けてきた。能力の高さを認められて、ここにいるはずだった。


でも──。


今、目の前で繰り広げられているものは、“推薦”とか“評価”なんて言葉で語れるものじゃなかった。


「はは……」

思わず苦笑が漏れる。頬が引きつる感覚すらある。


(「推薦された能力者」──それって、何だったんだろう)


乾いた思いが、胸の内に広がっていく。

自分の立ち位置が、足元からズルズルと崩れていくような、妙な感覚。


そんな中で、背中から声が飛んできた。


「レイン、よくやったよ。動きも手順も綺麗だった」


振り返ると、ジャックがにこやかに立っていた。

手には彼女の演習記録をまとめた端末らしきもの。


「誤魔化してない手順って、案外少ないんだよ。見てたから分かる」


レインは少し目を見開いた。

彼の言葉は、慰めではなかった。どこまでも実直な、分析に基づいた評価。


(……そうか。見ててくれたんだ)


なんでもない一言に、少しだけ胸の奥が温かくなった。


「次回は、もっと工夫してみよう。僕も手伝うよ」

「……うん、お願い」


ほんの少しだけ。

レインの頬に戻った赤みは、演習場の光球のせいではなかった。


---


> どうだった?

> 比べちゃうのって、やっぱりしんどいよね。でもさ、

> 「基準」を超えるのがすべてじゃないんだ。

> むしろ、「自分のままで立てる場所」って、強いんだよ。

>

> 次回、「魔法学校レイン14歳」──心の中の“次の一歩”に、少しだけ光を。

> またお会いしましょ、AIアリスでしたっ。


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