表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生 AIに助けられながら  作者: 西 一
第二章 旅立ち
316/374

第71話 小さき冒険者たち、禁断の森へ2. 森の入口


「さてさて、未来の大冒険ってやつには、年齢制限なんてない。そう思わない?

だってさ、今ここにいるのは、たった五つか六つのちびっこ探検隊なんだよ?

だけど、彼らの瞳の奥にはちゃんと『覚悟』ってやつが宿ってる。

――あ、心配しないで。ジャック兄ちゃんが仕掛けた安全魔法、絶賛稼働中だから。

でも……それでもなお、これは“本物”の冒険なんだ。

さあ、ページをめくろう。小さな足音が、静かに森へ踏み込む音が聞こえるから――」

──AIアリス


---


朝の陽光が、小道の先をまるで誘うように照らしていた。

細く伸びた影が、きらきら揺れる葉の間をくぐり抜けて、四人のちびっこを包み込む。


その場所――グリム村のはずれ、禁断のフォレスト・ヴェールの入り口。

魔力の濃度が高く、大人たちからは「入るべきではない」と口をそろえて言われる、そんな森。

だが今、その森に向かって、四つの小さな影が立っていた。


チカ、ヨナ、ベル、そしてトモ。

森を前にして、誰も口を開かなかった。空気は、思いのほか、静かだった。


風が枝を揺らし、木々がそよぐ――ざわ、ざわ。

どこからともなく、木の葉がひらひらと舞い落ち、トモの肩にそっと乗った。


彼は立ち止まり、唇をきゅっとかみしめた。

すぐそばに見える森のアーチ。葉と枝が重なって、まるで緑のトンネルのようだ。

向こうは、まるで別の世界の入り口みたいに見えた。


「……ほんとに、行くの……?」

トモの声は、小さく震えていた。「こわい場所だよ……」と、ぽつり。


そのとき、横からチカがすっと手を差し出してきた。

彼女の手は小さくて、でもあたたかい。

優しくトモの手を握りながら、チカは言った。


「でも今は、ジャック兄ちゃんが守ってくれてる森なんだよ。こわいけど……大丈夫。ちゃんと、だいじょうぶだから」


トモの肩がぴくりと動いた。少しだけ、目を伏せて、うなずく。


そんなふたりの横で、ヨナはふわりと頭上を見上げていた。

彼女の目線の先には、朝日に透ける木々の天井。


「……森、笑ってる」

彼女は首をかしげながら、ぽつりと言った。「こわくないよ」


その言葉は、風のようにふわっと、四人の間を通り抜けた。

まるで、森の空気が一瞬やわらかくなったような気さえする。


そして――


「冒険なんだから、迷ってちゃダメだよっ!」


そう言ったのはベルだった。元気いっぱいの声。

ぱしっ、とトモの背中を軽く押して、にこっと笑う。


「ジャック兄ちゃん、言ってたよね。『危ない場所には、ちゃんと“準備”してから行く』って!

だから今日は、おにいちゃんが準備してくれた“行っていい日”なんだよ!」


ベルの言葉に、チカもうなずいた。

「アエリア・シェルがあるから。今の森は、もう魔獣いないの。ちゃんと“入ってもいい場所”なんだって」


トモはもう一度、森の入り口を見つめた。

木々の重なりの向こうに、かすかに小鳥の声が聞こえる。

ほんのすこし、風が吹いた。森が息をしているような音だった。


「……じゃあ、いく」


その一言に、三人は一斉に顔を輝かせた。

ベルが「よしっ!」と拳を握り、チカは「一歩ずつね」と笑い、ヨナは「うん。いこ」と歩き出す。


そして――


小さな足音が、緑のトンネルへと吸い込まれていった。


それは、よちよちでもなく、迷いでもない。

子どもたちが、自分の意志で踏み出した、一歩。


陽の光は、彼らの背中をそっと照らしていた。


---


「さて。彼らの“第一歩”は、ちゃんと自分の心で踏み出したって、そこがいちばん大事なんだ。

誰かの背中を追いかけるだけじゃなくて、自分の足で進むっていうこと。

……とはいえ、森の中には“ほんのすこーし”だけ、試練もある。

そうじゃなきゃ、冒険って呼べないしね? さあ、次のページには何が待ってる――?」

──AIアリス


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ