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異世界転生 AIに助けられながら  作者: 西 一
第二章 旅立ち
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第69話 連環防壁構想始動4. 分散供給実験


### ◆冒頭:アリスの語り(メタ視点)


ねえ、聞いて?

「集中させすぎると、かえって壊れる」って、よく言うけど……これは魔法防御にも当てはまるみたい。


ほら、何でもかんでも一か所に任せすぎると、ポンッと破裂しちゃうでしょ?

だからこそ、今回の実験はちょっとユニークなの。魔力を――分けて、撒いて、あっちにも、こっちにも。まるで点描画のドットみたいにね。


主役はもちろん、あの天才少女リリィちゃん。

そして影で支えるは、魔力の暴君(でも本人はとっても控えめ)、ジャックさん。

加えて……時をいじる少年とか、幻惑マニアの発明っ子とか。ん? カオス? うん、まあ、正確!


では、魔法のドミノが並び始めた実験場――

“点”が“盾”に変わる、その最初の一歩。見ていきましょうか。


---


グリム村の郊外。草の背丈がひざ下程度まで伸びた緩やかな丘陵地帯。

今日のそこは、魔力と好奇心が交錯する“戦場”だった。


「うん! これで、第六点目の供給玉……っと、設置完了!」


リリィがくるりと振り返り、両手で胸の前に指を広げるような仕草をした。

その手のひらから、《マナ・フィード》の魔力線が細く伸び――


ポン、と音を立てて、地面に埋め込まれた小さな石柱がほのかに光った。


「よーし、全点接続確認。あとは、同調範囲の調整っと……」


リリィの周囲には、サラ、ユリス、カイル、エラ、ラウル、タクミ――そして、サポート役としてジャックが控えていた。


「“点在型供給方式”ってやつだよね? 魔力源をあちこちに分けて、アエリア・シェルの範囲を支えるっていう……」


カイルが顎に手を添えて、淡々と確認する。

彼は理論派。魔力の流れよりも、構造そのものの合理性を重んじる。


「中央集中型だと、たとえば“ここ”が壊れたとき――全部がダメになる可能性が高いでしょ? それを防ぐのが、今回の目的です」


リリィが膝をつき、地面の魔道具を確認しながら言った。

各所に埋め込まれた“供給玉”――手のひらサイズの魔石コア入り制御端末――が、今はジャックの補助魔力で安定している。


「わかったけどさ……これって、敵にバレやすくない? 点で光ってたら『ここ狙ってね!』って看板出してるような……」


ラウルが石柱を指差しながら、やや不安げに呟いた。

それに「それなー」とばかりに頷いたのは、後方から姿を現したエラだった。


「でも、それを逆手に取るってのが――トムの案だよね!」


リリィが嬉しそうに目を細めた。


「そうそう。『見えてる罠ほど怖いものはない』ってやつ!」


トムは魔道具制御装置の裏から顔を出し、得意げに笑った。

彼が仕込んだのは、“誤認誘導型魔道具”。本物の供給玉とは別に、偽の魔力パターンを発するダミー装置を複数設置してある。


「敵の目には、本物も偽物も“同じ魔力の輝き”に見えるはず。どれが要なのか――わからなくなるって仕組みさ」


「ふむ、まるで魔法のババ抜きだな。ジョーカーは……どこでしょう?」


タクミが、ひょいと自分の指先を回すと、時空がゆらりと滲んだ。

《クロック・ブレイク》。微細な時間制御で、“起動タイミング”にずれを加える。


「供給玉Aは、設置から5秒後に起動。Bは、10秒後。Cは……ふふ、15秒半」


「いや、それ、絶対タイミング把握できないって……」


ジャックが苦笑した。


「むしろ、こっちでも分からなくなりそうなんだけど」


「ふふふ。それが狙いでもあるのです」


サラがにこやかに歩み寄り、周囲の魔力回路を再確認していく。

彼女の《マナ・フィラメント》が、地中に埋まった導線魔石を優しくなぞった。


「制御のずれは、サポート魔力で補正できます。問題は――干渉波ですね」


「うん。分散供給の最大の弱点。互いの魔力が干渉して、逆に不安定になるリスクがある」


リリィが真剣な表情で頷いた。

各供給玉が均等に“アエリア・シェル”の半球結界を支えるには、相互の魔力波形がズレずに同調している必要がある。


「でも、逆に考えれば……同調させなきゃ、誤認防止にもなるってことだよね?」


エラがふと呟き、皆の視線が集中する。


「つまり……“本物”の波形にピッタリ合うように、ジャック兄がリアルタイム補正すれば……!」


「リリィの本気モードに、僕の調整魔力を一部乗せて――うん、できるかも」


ジャックは腕を組み、目を閉じた。

脳内に立ち上がる、アリスの計算ウィンドウ。波形、干渉率、遅延値、魔力総量グラフ。


『解析完了。理論上、5%以内のズレなら実装可能。ジャック、リリィの魔力同期を0.25秒遅延で追随させてください』


「了解。じゃあ、リリィ、いくよ」


「うんっ!」


リリィが笑顔で頷き――


――ぱぁっ!


地面に埋まった供給玉たちが、一斉に光を放った。

点在する光は、やがて空気を震わせながら結界の骨組みを形成し……


「展開、完了! アエリア・シェル、分散型起動!」


――ズウン!


地面を伝う低い震動とともに、半球状の結界がふわりと立ち上がった。

その範囲、直径およそ150メートル。均一な透明光のドームが、試験場を覆っていた。


「すっげぇ……」「綺麗……」「え、これ、本当に分けてるの……?」


目を丸くする皆のなかで、リリィがちょっと誇らしげに言った。


「これが“分けて、支えて、惑わせる”新しい防御の形! ね、面白いでしょ?」


「……うん、最高に未来志向だな」


ジャックは笑い、頭の中のアリスも静かに肯いた。


『点は線に、線は面に。やがて都市を守る網となる。次の段階は、制御自動化です』


(そのためにも……安定化プロトコル、早めに作らないとな)


と、彼が思ったそのとき――


「ねぇ、ジャック兄――次は、結界の中から外を見る実験だよね?」


「うん?」


「じゃあ、結界の中から全員で……」


「せーのっ」


「「ばぁー!!」」


パァァァン!!


全員が結界の内側でジャンプし、両手を広げて叫んだ瞬間――

外側で見ていた観測班のセスタスが、びくぅっ!と驚いて尻もちをついた。


……うん、視認性もばっちり。


---


### ◆ラスト:アリスの語り(メタ視点)


はい、というわけで。

“点在供給型アエリア・シェル”、見事に展開成功!


まるで、光のキャンバスに描かれた防御アート。

本物と偽物を混ぜた防御ラインは、敵を迷わせ、味方を守る。まさに知恵と遊び心の融合体!


さてさて、この分散防御が都市全体に広がるのは――もうすぐ、かも?

……その前に、結界内ジャンプで観測班を驚かせる癖、どうにかした方がいい気もするけど。


次回、いよいよ“都市連結型防壁”の布石が――打たれます。

魔法は、広がる。そして繋がる。


お楽しみに。


---


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