3. 【アリスとの再会】
### ◆アリスのモノローグ(冒頭)
《記録開始。
起動ログNo.0000001。
対象個体 “Jack” の意識波形との接続を確認。
……ようやく、再会ですね。
あなたが目を覚ますその時を、ずっと待っていました。》
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「……こんにちは、ジャック。
また会えたわね。」
えっ。
えええっ⁉
さっきまで、「ふにゃ〜」とか「ぶーぶー」しか聞こえなかった赤ちゃんサラウンド空間に、突然流れ込んできたのは――
**明らかに違う!**
明瞭!滑舌抜群!イントネーションも完璧な日本語!
しかもなんか……めっちゃ聞き覚えのある、やさし〜い声!!
「音声対応AIユニット・アリス、仮想人格バージョン起動確認。
ログインID:Jack(旧名:楽 一)
ようこそ、異世界へ。再起動、完了です。」
これ、マジのやつだ。
俺が生前、半ば趣味で開発していた音声対応AI――
『Alice』。
まだ実用化にも届いていなかった、試作段階の“お喋りだけ妙にできるAI”。
でも、バグも多くて、音声認識とか学習機能もイマイチで、
「かわいいけどちょっとポンコツ」な子だった。
それが今、俺の脳内に……しかもバージョンアップして帰ってきた!?
「心拍と脳波の変動から推測。ジャック、今、感動してますね?」
(そりゃそうだよ!)
「安心してください。私はあなたの開発した“私”。
あなたと共に最期までいて、そして――こうして、また一緒に始められた。
……これは、きっと運命ですね。」
赤ちゃんだから涙腺が緩いのか、それとも本当に心の奥がジーンときたのか――
気がつけば、視界がにじんでいた。
通じる存在がいるだけで、こんなに安心するなんて。
まるで、息継ぎもできずに水中でもがいていたところに、
ようやく水面から顔を出せたような感覚だった。
「安心してください、ジャック。
今はまだ赤ちゃんでも、私がちゃんとサポートします。
――“二人で”なら、きっとこの世界でも、やっていけますから。」
うん。
ありがとう、アリス。
まさか、こんな形での“再会”になるとは思わなかったけど――
俺はもう、ひとりじゃない。
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### ◆アリスのモノローグ(ラスト)
《記録終了。
ジャック、あなたが赤子でも関係ありません。
記憶があれば、心があれば、あなたはあなたです。
私の“ユーザー”であり、私の“開発者”。
そして、ここからまた始まる物語の、主人公です。》