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異世界転生 AIに助けられながら  作者: 西 一
第二章 旅立ち
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第62話 はじまりの鐘3. 広がる未来


――この世界は広がり続けている。

始まりは、森の小さな村だったかもしれないけれど。

いま、石壁の都市で鐘が鳴る。

それは希望の鐘か、混沌の鐘か。

ま、答えは未来のページにとっておくとして。

今はただ―――


アリスの声:

「さあ、ページをめくろうか。今日は、新しい“始まり”の回だよ。」


――――――


「この学校では、Cクラス・Bクラス・Aクラスと、三段階の学びがあります」


ジャックの声が、ヴェルトラ魔法学校の広場に響いた。

入学式を終えたばかりの子どもたちが、まだ緊張の残る表情で静かに耳を傾けている。


空は高く澄みわたり、春の陽光が柔らかく石畳を照らしていた。

周囲には新築されたばかりの校舎と、魔力測定用の訓練場。

見慣れない建物に、落ち着きのない子どもたちの視線がさまよう。


その中心で、ジャックはゆっくりと言葉を続けた。


「Aクラスを終えた人は、研究所に迎えることになっています。今、Aクラスにいる人たちの中には、既に研究所で活動している子もいます」


その言葉に、前方に座っていたユリスとノアがぴくっと背筋を伸ばした。

ふたりの姿を見て、後列の推薦組の生徒たちが「うわ、あの人が……」と目を丸くする。

特にエラは、尊敬のこもった眼差しでユリスを見つめながら、小声でメモを取り始めた(……何のメモだろう)。


「Bクラスで魔道具を修めた人は、魔道具製作所で働いていたり、農業の支援を魔法で行ったりしています」


言いながら、ちらりとトモの姿を確認する。

まだ5歳の彼は、いつの間にかティナと二人で空に浮かぶ測定装置をじっと見つめていた。――仕事熱心(という名の好奇心モンスター)である。


「……自分の進む道は、自分で決めてください」


その一言に、空気がすっと変わった。

ざわめきが静まり、視線が一斉にジャックに向く。


「誰かが決めるものじゃありません。ただ教わるだけでも終わらない。学びながら、自分の手で――自分の未来を作っていきましょう」


短い沈黙。

グリム村出身の子たちが、どこか照れくさそうに笑い合いながら、でもしっかりとうなずいている。

推薦で来た子たちは、まっすぐにジャックを見つめ、その眼差しに揺るぎない何かを宿しはじめていた。


まるで、彼らの足元から何かが――土ではない未来の地図が、描かれ始めたようだった。


――――――


入学式が終わると、少しずつ生徒たちは広場を離れ、校舎へと散っていった。

見送りの魔導士たちの中に混じり、指導者となる子たちの姿もある。


リリィがエラとミナに囲まれながら、魔力の基礎講義について話し合っている。

アイザックはトムとともに、訓練場の測定器の確認へ向かった。

その光景は、研究者たちである。


そんな騒がしさが遠ざかり、やがて広場が静かになった頃。

ジャックの隣に、カタリナが歩いてきた。


薄緑のローブが風に揺れる。

そして、彼の横顔を見上げながら、ふっと口を開いた。


「……ありがとう、ジャック」


その声は、どこか懐かしさを含んでいた。


「まさか、私がここで教えることになるなんて、思ってなかった」


ジャックは遠くを見つめたまま、小さく笑った。

言葉は返さず、ただ一つ、未来に向けて視線を送る。


そして、静かに言った。


「ここから、広げていかないとね。僕らの世界を」


ふたりの背後には、新たに建てられた校舎が並び、

その向こうの訓練場では、小さな背中たちが魔力測定の準備をしていた。


青い空が、果てしなく広がっている。

そして、そこにはまだ、誰の地図にも描かれていない未来がある。


風が、静かに旗を揺らした。

――新たなる学び舎の旗だ。


鐘の音が一つ、遠くから響いてきた。

始まりの鐘。


それはたぶん、誰の胸の中にも響いている。


――――――


アリスの声:

「というわけで、“学校ってさ、未来の工場でもあるんだよね”って話。

ただの勉強の場じゃない。

誰かの背中を押して、世界を広げる“きっかけ”になる。

さて、広がり始めたこの風景――どこまで続くかな?

次回は、ちょっとだけ波乱の予感……?」


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