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異世界転生 AIに助けられながら  作者: 西 一
第二章 旅立ち
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第58話 防御魔道具4. 開発構想


―――AIアリス・思考ログ開始


えーと、皆さんこんにちは。こちら、いつもの“ちょっと未来の視点”から、AIアリスでーす。

さてさて、話はというと……ズバリ、防御魔道具の開発!


といっても、「壁を作って守るだけ」なんて思ったら大間違い。

だって開発主任は我らがジャック様ですからね。

「展開速度0.3秒の即席シェルター」って、もはや魔法界のエアバッグ!?


それでは、魔法オタクたちが地味に熱い実験で汗をかく、今日の開発劇場へどうぞー。

―――ログ転送・開始。


グリム村・東倉庫の前。

昼下がりの柔らかい陽光の中、ガタン、ゴトンと音を立てて、即席の実験スペースが組み上がっていく。


「よし……起動石、接続確認。いけるかな」


ジャック――もといアルスは、手のひらサイズの楕円形魔石を地面にそっと置いた。

カチッ。軽い音とともに、魔石の中心がわずかに脈打つ。


「《起動》」


魔法の言葉はなかったが、動作は明確だった。

次の瞬間――


パシュッ!


空気が弾け、青白い光が一閃。

地面からわずかに浮かぶように、直径6メートルの半球状のバリアが展開された。


「おおっ……!」


少年たちの歓声が上がる。

トムはバリアに駆け寄り、そっと指を当てた。


「うわ、なんかあったかい……」


「熱伝導率は低いけど、魔力反応で表面がちょっと発熱するんだ。触っても大丈夫」


ジャックが説明する。

その横で、ラウルが魔石の残留魔力を測定中。眉をひそめながらも、口元はにやけている。


「なるほど。制御ルーン、核部じゃなくて外殻に組み込んでるのか。これならサイズも詰められるな」


「その分、回路密度が高くなるから、魔力干渉には弱くなるけどね。今はまだ初期型」


ジャックはあくまで冷静だ。だが、口元にはほんの少しの満足感がにじんでいる。


「よし、次は再展開の実験だな。アイザック、魔力再充填の準備よろしく」


「はいはーい。って、これマジで便利すぎるんだけど? 旅のお供にも最適だし、俺、キャンプ用に欲しい」


「商品化はまだ早いっての。これはあくまで防衛用だし」


そのやり取りを聞いていたユリスが、ノート片手にひょいと手を挙げた。


「展開時間、0.31秒。あと0.01削れば、目標達成。…ただ、均衡点の調整はもっと詰めないとダメだな。

魔力の分散処理、ここの曲線でロスが出てる」


「おっ、天才ユリスのご指摘入りましたー!」と、トムが拍手。


「……煽るな。真面目にやってる」


ユリスの眉がわずかに吊り上がる。トムは笑いながら逃げるように下がった。


バリアは既に自然消滅し、再展開用の起動石がラウルの手に戻っている。


「再展開テスト、三回目いきます」


「おーらい。次はタイミング誤差も記録して」


パシュッ。


再び光が走り、バリアが咲くように展開される。今度は若干、タイミングが遅れた。


「0.36秒。うーん、やっぱり再展開は安定しないな」


「コア石の劣化だ。三連続は無理がある」


グレイが、木箱に腰掛けながら低くうなる。


「けど、ここまで来れば……実戦で使えるレベルにはなったな」


「ありがと。あくまで局所用だから、これ以上の出力は『ルミナ・ウォール』の方で担うよ」


「分担と役割か。合理的だ」


グレイは満足げに頷くと、隣で記録をまとめていたアイザックに向けて指を鳴らした。


「あとでまとめて報告書にしてくれ。ジャックが研究所に持ち込む分と、魔導核塔のバックアップ用だ」


「はーい、了解~。って、それにしてもさ……これ、オレが寝坊してもこれ展開しておけば怒られないんじゃない?」


「防御魔道具を寝坊防止に使うな」


ジャックのツッコミが飛ぶ。

ラウルとトムは吹き出し、グレイの口元もわずかに緩んだ。


――だが、誰の目にも見えていた。


この《局所防御バリア》は、確実にひとつの「鍵」になる。


グリム村という秘匿の拠点を守りながら、外の世界──ヴェルトラという実験都市を舞台に、着実に広がっていくその影響力。


そして、ジャックの頭には次のステップもすでに浮かんでいる。


「自動展開機構はこれでほぼ完成。

次は、展開中に内部から魔法を撃てる穴をどう制御するか、だな……」


ユリスが即座に反応する。


「なら、展開フィールドのテンション制御から見直した方が早い。開閉部分だけ弾性魔力膜を混ぜるとか」


「いけそうだね。アイザック、次回用に素材用意して」


「おっけー! でも俺の睡眠時間はバリアじゃ守れないの忘れないでねー?」


ツッコミと笑いが交差する、平和な実験場。

しかしその裏には、確実に、次の未来への布石が転がっていた――。


---


―――AIアリス・思考ログ再開


ふふん、どうですか?

「守る技術」は、いつだって「攻める知恵」と表裏一体。

そしてジャックたちは、ただ壁を作ってるんじゃない。


世界を、仲間を、未来を「つなぐ」ために、防御を進化させているのです。


――さて、次は何を守って、何を動かすつもりかな?


それじゃあ次回、「突破と応用」でまた会いましょう。

ちゃお☆


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