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異世界転生 AIに助けられながら  作者: 西 一
第二章 旅立ち
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第57話 防衛のはじまり2. 防御システムの構想


### 冒頭メタ視点モノローグ(AIアリス)


防御とは、世界との距離感の取り方に似ている。

「守りすぎれば閉じこもり、開きすぎれば危うくなる」——などと、

この世界の賢者は言ったとか言わなかったとか。


……でも、もしあなたの周囲に、

超巨大魔力量を持つ少年と、超博識な隠者と、

変態的技巧を持つ錬金術師がいて、さらにそこに天才少女が加わったら?


おそらく、ほんの遊び感覚で「魔法防御システム」を始めてしまうでしょうね。

そう、ちょうど今のジャックたちのように——。


---


## 第57話 防衛のはじまり


### 2. 防御システムの構想


「……つまり、何が起きても“うち”の場所がバレちゃまずいって話だね」


 集会場の一角。椅子に浅く腰掛けたジャックが、ポンと手を打った。


「防御を一気に造ろうとしても非効率です。まずは、異常を感知できる仕組みから始めるべきです」


 声に熱がこもるのを、自分でも少し感じる。

 ヴェルトラの事件、そしてグリム村の存在が外に漏れるかもしれないという焦燥。

 それに対する「対処」ではなく「仕組み」としての防御。

 ジャックの中には、すでに幾つかのイメージが走っていた。


 グレイが長い顎鬚を撫でつつ、うむと一つ頷いた。


「観測装置、制御装置、防御装置……それぞれ段階を踏んで作るべきだな。何事にも“前振り”がいるのさ」


 まるで舞台装置を準備する劇団のような口ぶりだったが、説得力はあった。


 その横で、アイザックが腕を組んだまま冷静に言葉を続ける。


「初期段階では、広域の魔力変動を感知する程度に絞った方が現実的です。迎撃機能は、その次段階ですね」


 いつものように淡々とした口調。だがその表情は、しっかり未来を見据えていた。


「村の周辺に張るだけじゃなく、もっと広く見たいよね」


 ユリスがぱらりとノートを開いた。鮮やかな字で書かれていたのは、補助系支援魔法の構造式。

 ジャックがちらりと横目で見ると、彼女は楽しそうにペンを走らせている。


「支援系の魔法って、広域に展開しても安定しやすいから……。観測と相性良いと思う」


「うん、それ使えるかも!」


 ジャックは膝をパッと叩いた。脳内では、いくつかの構造が繋がり始めていた。

 魔力感知を主軸とする装置、それを浮遊させて広範囲を巡回させる構想。

 ただの探知機ではない。見えない魔力の“濃淡”や“流れ”まで読む——そんな次世代の観測機。


「じゃあ、まずは《センサ・オービター》から作ろう」


 宣言するように言ったその言葉に、グレイが片眉を上げた。


「命名がすでにジャック風だな。語感だけで未来感がある……やれやれ」


「浮遊型の魔力感知機です。小型、無音、耐候性あり。あと、できれば自律巡回。夜間飛行もいけると嬉しい」


 ジャックの口からは次々に要件が出る。まるでショッピングリストだ。


 アイザックはふむ、と首をかしげ、


「夜間飛行……光源の扱いが課題ですね。あまり明るくすると発見されやすくなる」


「それなら、発光は最低限。……たとえば光を“散らす”感じにすれば、鳥の羽の反射っぽくできるかも」


 ユリスが口を挟むと、グレイは「よし、研究所に戻るか」と立ち上がった。

 椅子がドサッと音を立てて後ろに跳ねる。誰かが何かを決めるときって、なんでこう無駄に格好いいのだろう。

 ジャックは苦笑しながら、自分も椅子から立ち上がった。


「トムに素材の加工を頼んでみます。軽くて魔力伝導性のある金属……たぶん、あれが使える」


「頼んだぞ。わしは浮遊制御の構成式を詰めておく」


「ぼくはユリスと、観測精度を上げるための魔力感知式の試験を並行でやります」


 こうして、グリム村の防御は動き出した。

 まずは“見る目”を得ることから。

 そしてその“目”が、いつか空を守る網へと変わるように。


---


### ラストメタ視点モノローグ(AIアリス)


始まりは、いつだって静かで地味だ。

誰もが気づかない、小さな工房での会話や、村の片隅でのノートの一行。


だけど、それがやがて——

国を越え、大陸を越えて、世界を揺るがす力になる。


このとき彼らは、まだ知らない。

《センサ・オービター》という“目”が、

未来においてどれほど多くの命と可能性を救うことになるのかを。


次回、「浮遊する観測球、完成間近!」

ふふん、準備はいい? いよいよ空を飛ぶわよ!


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