第53話 リリィと仲間たちの森の冒険4. 森の拠点づくり
(AIアリスの冒頭モノローグ)
ねえ、ちょっと聞いてくれる?
「拠点」って、なにそれカッコいい――って思わない? え? 思わない? うーん、そう言わずに。
だって「森の中に拠点をつくる」なんて、もうそれだけで冒険っぽさ満点じゃない? しかも作るのは子どもたち。いやいや、舐めちゃいけません。
この子たち、すでに日常レベルで常識を超えてるから。
そう、今回の主役はリリィとその仲間たち。
グリム村で育った小さな冒険者たちは、森の奥に「みんなの場所」を作ろうと動き出す。
秘密基地? ちょっと違うの。これは――信頼のしるし。
さてさて、班分けあり、作戦会議あり、魔力照明まで設置されるというから、目が離せない。
では、拠点づくりの物語、始まり始まり――。
───
「えーっと、それじゃあ――まず、班分けします!」
リリィの声が庵の中に響いた。元はグレイ師匠が使っていた古い山小屋。今は誰も住んでいないが、しっかりした造りで、森の中では貴重な拠点候補地だ。
壁は苔に包まれ、床は落ち葉でふかふか。けれど、みんなの目はきらきらと輝いていた。
「男の子チームは、リーダーがオスカーくん。メンバーは、トムくん、レオくん、フィンくん!」
「おっしゃあ! 冒険チーム、出発準備完了だ!」
「オスカー、それはまだ先だってば!」とトムが呆れつつも笑っている。
「女の子チームは、わたし、リリィがリーダーね。ミナちゃん、ミアちゃん、クロエちゃん、エラちゃん、ノアちゃん、リラちゃん。よろしく!」
「はいっ!」と元気よく手が上がる。中にはすでにやる気満々でスコップを構えてる子もいた(※ミアです)。
「さて、まずはお掃除から始めましょっか。リラちゃん、一緒に庵の中を整理しよう!」
「うん!リリィちゃんと一緒なら、何でも頑張れる気がするっ♪」
二人はくるっと回って、庵の中へ。
「わあ、蜘蛛の巣……でも負けない!」
「ルミナ・スクレーパー!」リリィが小さな杖を振ると、ほうき型の魔法が出現し、ぱたぱたとホコリを掃き始めた。
リラも負けじと、鼻歌を歌いながら落ち葉を集める。「~ふんふんふーん♪」
掃除中にふたりが踊り出したのは、秘密である。
一方、庵の外では――
「クロエ、そこ危なそう。崩れてる根っこがある」
「了解っ、レオ。じゃあこの辺に印つけておこうっと」
クロエは腰に下げた赤い粉袋を取り出すと、地面に印を描く。「こっちは『たぶん安全』、こっちは『絶対にダメ』……うん、完璧!」
「地図班、いきますよー」
ノアとトムが並んで、小さな羊皮紙とペンを手に森へと向かう。
「小道はあっちが北かな?木の影の傾きからして――」
「ノアくん、これ、庵の正面の扉の形、すごく面白いからスケッチしてもいい?」
「うん。記録に残すって、大事なことだからね」
その背中を見送りながら、リリィは小さく頷いた。
「みんな、ほんとうに真剣だね……」
ふと、庵の天井を見上げると――
「よし、ここだ!」
フィンとミナが、魔力照明の設置に奮闘中だった。
「ルミナ・ボール、ここに浮いててくれると嬉しいなぁ」
「じゃあ、ぼくが固定魔法をかけるよ。……エクス・フロート!」
淡く光る丸い玉が、天井の梁の下でふわりと浮かんだ。
森の中なのに、部屋はほんのりと温かくて、安心できる空気に包まれていく。
リリィは、小さく手を叩いた。
「ねえ、みんな。ここは、みんなで力を合わせるための場所。だから――大切にしようね」
言葉は小さかったけれど、子供たち全員に、確かに届いた。
それぞれが作業の手を止めて、振り向き、頷く。
「……うん!」「そうだね」「ここ、守ろう!」
風が葉を揺らす音。光る照明の下で響く小さな足音。
その日、森の片隅に、小さな冒険者たちの“城”が、ひっそりと誕生したのだった。
───
(AIアリスのラストモノローグ)
ふふふ、かわいいでしょ?
何がって、もちろん子どもたちの表情よ。やるときゃやるんだから。
ああ見えて、照明の高さにもこだわるし、地図も等高線入りだし、掃除だってスキル制よ。なんてレベル高いんでしょうね。
でもね、これはまだ“序章”。
これから森の冒険は本格的に始まっていくの。
秘密の地下室? 迷いの木立? それとも――動く石像とか?
…あら、今のはまだヒミツね。じゃあ、次回もお楽しみに。
次にページをめくるとき、君の心に少しだけ冒険の風が吹きますように――。