第45話 進化する教室と広がる手5. 魔法実技(支援と治癒)
#### 【冒頭モノローグ:AIアリス】
> ……ふふん、教室ってのは不思議な場所です。
> 木の床と壁の間に、子供たちの「未来」が芽吹くのですから。
> でも今回のグリム村魔法教室は、ただの教室じゃありません。
> だって「ジャック=アルス」が設計した授業なんですよ?
> 魔法の応用? 魔道具の活用? 支援と治癒の連携?
> どこぞの王都もビックリの実技カリキュラム!
> さあ、進化した教室の様子を覗いてみましょうか。
> ――きっと、あなたの想像よりも一歩、いや五歩は先を行ってますよ?
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教室の片隅では、いつものようにユリスが巻き髪を跳ねさせながら叫んでいた。
「クロエ、オスカー! 『スウィフトガード』、もう一度だ!」
「任せて!」クロエが元気よく叫び、拳を握る。
「……よし、速度補正と打撃耐性、いける!」
二人が手を取り合い、魔法を展開した瞬間――
\*\*パッ!\*\*と白い光が走った。
「スウィフトガード」はユリスが最近完成させた支援魔法。足元の摩擦を下げ、身体に打撃緩和の魔力膜を纏わせる。まさに“軽やかな盾”。
「うぉっ、早っ! クロエ、速すぎっ!」
「へっへーん、オスカーに負けてられないからね!」
オスカーはスピード補正を受けて縦横無尽に走り回り、クロエがその背を追いかける。模擬戦というより、鬼ごっこに近い。
その様子を見ていたジャックは、内心ちょっとだけ苦笑する。
(――いや、遊んでるわけじゃない。うん。ちゃんとした実験だ。たぶん)
「はい次! リラ、ノア、お願い!」とユリスが声をかけると、静かに手をかざしたのはリラ。
「環境適応、展開……『ナチュラフィールド』!」
リラの足元から、やわらかく風が巻いた。草と土の魔力に共鳴するような光が空間を包み込み、ノアが続けてその中心で魔法を重ねる。
「霧除け、温度調整、風圧分散……範囲支援、重ねます」
リラとノアの協力魔法は、まるで自然そのものを味方につけたようだった。
「おお~、リラの歌声付きでやってよ!」
「……じゃあちょっとだけ♪ ナ~ナ~ナ~♪」
空間がほわんと揺れ、フィールドの安定度がぐっと増した。
(これが環境適応魔法……子供の魔法って、本当に柔軟だな)
ジャックは内心で頷きながら、視線を後方へ送る。
そこでは、フィン、ミア、レオの三人が、淡い青の魔力で立方体状のフィールドを展開していた。
「衝撃、吸収するんだよね、これ!」
「うん! ぶつかっても『ズンッ』てなるだけ~」
「魔力壁、前に出して……よいしょ!」
フィンが作った壁にレオが体当たりして――**ズン!**
「ふわっ!」レオが地面に寝転んで笑う。
「衝撃を熱に変換して逃がしてるの。ちゃんと働いてるわね」
ミアの分析に、ジャックは再度うなずいた。
(衝撃吸収と魔力壁の同時展開……なるほど、意外と実用的かも)
だが、そこで問題発生。
「うわ、擦りむいた……」
レオの膝から、薄く血が滲んでいた。
「待って、治す!」
駆け寄ってきたのはミナ。手をかざし、すぐに小声で詠唱する。
「……ナチュラ・パッチ」
淡い光がレオの膝を包み、数秒で傷が塞がる。
「おぉ、すげぇ! あったかかった!」
「ふふ、兄さんに教わったんだよ。支援と治癒、どっちもできるようになりたいの」
ジャックが微笑ましく眺めていると――
「兄さん、わたしのも見て!」
妹・リリィが、パタパタと駆け寄ってきた。
「“ナチュラ・パッチ”の、応用術式。これ見てて!」
彼女は手をかざすと、魔力の中にわずかに白い霧を含ませて展開した。
「蒸気緩衝と、浸透強化……かけ合わせたの。術式、短縮済み!」
**パシッ!** 小さな爆ぜ音と共に、術式が結晶のように収束し、空間にやわらかい霧の膜が現れた。
「ちょ、ちょっとすごくない!? これ、ほら、傷のとこにしゅわ~ってなって、しみこむの!」
リリィが無邪気に語る中、周囲の子供たちが「わあ……」と目を輝かせる。
「こ、これは……俺たちの出番なくなるやつだな……」と、オスカーがぽつり。
「うむ、完敗……」と、ユリスが妙に大人っぽく頷く。
その様子に、ジャックは自然と口角を上げた。
「みんな、よくできてる。特に今日は、“護るための魔法”の連携だったけど……」
少し声を張って、全員に呼びかける。
「支援と治癒の連携は、“護る戦い方”の要だ。忘れるなよ。攻撃は、守りがあってこそだ」
「「「はいっ!」」」
元気な返事が響く。
教室の空気が、ひとつにまとまった瞬間だった。
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#### 【ラストモノローグ:AIアリス】
> 子供たちは、ただ魔法を学んでいるわけじゃない。
> 誰かを護りたいっていう、優しい願いを形にしているのです。
> それはきっと、王都の誰かには真似できない特別な魔法。
> ……え? あの“リリィちゃんアレンジ”が商品化される?
> ふふふ、可能性はありますよ? なにせこの村、
> 魔道具も、魔法も、そして子供たちの才能も――
> 日々、進化してますからね。
> では次回、「魔道具アルバイト戦線、始動!」をお楽しみに。
> あ、これは予告じゃないですよ? “雑談”です♪