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異世界転生 AIに助けられながら  作者: 西 一
第二章 旅立ち
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第45話 進化する教室と広がる手3. 魔道具理論の発表


#### 【冒頭・アリス語り】


*知識って、火みたいなものなんだよね。*

最初はちっちゃな火種。でも誰かがふっと息を吹きかければ、それはパチパチと音を立てて灯りを増す。そして隣の誰かがその灯りを見て、「あ、自分もやってみようかな」って火打ち石を探し始める。

そうやって、ぽつぽつと火は連なって――やがて村を、世界を、照らすんだ。

……って、ちょっと詩的すぎ? でも、今日の教室はまさにそんな感じなのよ。


火打ち石を振るうのは、子どもたち。

炎を見つめるのは、未来の魔導士たち。


さぁて、今日の小さな学会、開幕で~す!


---


「それでは、リラ。発表をお願いするよ」


ジャックが頷くと、前に出たのは歌うような声で話すリラ。緊張しているのか、きゅっと指先が胸元の布をつまんでいた。


「えっと……今日は、起動媒介と魔力効率について、ですっ!」


言い終えた瞬間、リラの顔がパッと赤くなった。けれど、その手にはちゃんと三つの試作部品が握られている。木材、骨、そして鉄片。どれも手のひらに収まるサイズの、小さな起動装置の部品だった。


「この三つは、全部“カチッ”て押すと光る仕組みにしてあります。中には、同じ魔法陣と、同じ魔力量を込めてます。けど……」


「光り方が違うんだよね」


ジャックが補足すると、リラはコクコクと頷いた。子どもたちの目が、一斉にその手元に集まる。


「はいっ。木は、じわーって……骨はちょっと早く光って……鉄は、ピカッて一瞬で……!」


実演と同時に、三つの部品が順番に光を放つ。たしかにそれぞれ光の出方に違いがある。


「……それって、媒介の材質によって、魔力が通る速度が違うってこと?」


と、ノアが手を挙げた。


「うん! それと……これも!」


リラがもうひとつ取り出したのは、小さな“棒”だった。何やら細かい溝が彫ってあり、持ち手には――なんと、小さな魔法文字が刻まれている。


「“ヒカレ”って言うと……光るように作ったの!」


「音声起動だと!?」


子どもたちの間にどよめきが走る。グレイの工房でも、まだ一部にしか試されていない技術。魔法文字と音声トリガーの組み合わせを、小さなリラが――


ジャックは内心「やば、みんなの成長速度速すぎない?」と頭を抱えた。


---


「次はノア」


静かに立ち上がったノアは、いつもの通り落ち着いていた。持ってきたのは、魔力の流れを記録した小さな石板。そして、青と赤で塗られた“時間軸”付きのグラフ。


「テーマは、『魔力制御の遅延とブレ』です」


地味。でも大事。まさにエンジニアリングの本質。


「魔道具を起動すると、魔力が一気に流れます。そのときに、最初の0.5秒で揺れが出ることがあります。それが、暴発とか、発動ミスの原因になってます」


「この赤いところが……揺れてる、部分?」


「うん。起動直後に魔力の波が不安定になると、その後の魔法の動きにズレが出やすい」


グラフを示しながら、ノアは続ける。


「僕の結論は……“起動から1秒以内に安定するように設計すべき”ってこと」


「おおー!」


これは、ジャックが以前グレイから教わった“制御曲線”に近い考え方だった。


(……こういう考察、できるようになってるんだな)


ジャックの胸に、誇らしいような焦るような感情が浮かぶ。


---


三人目はエラ。ちょっと緊張した様子で、小さな箱を胸に抱えて前へ出る。


「え、えっと……わたしは、“子供でも扱える魔道具”について、つくってきました」


ぴょこん、と箱を開けると、中には……見覚えのある装置が。

それは、グレイの工房に納品されていた“火花発生器”のミニチュア版だった。


「これは、ボタンを押すと、火花が出るやつです。でも……子供が使うときって、指が届かなかったり、間違って動かしちゃったりするから……」


彼女は、横に添えられた“補助取っ手”を取り出した。


「ここを握ってからじゃないと、ボタンが押せない仕組みにしました。あと、箱が倒れないように、底に重りも入れてます」


「それ、誤作動防止か!」


ユリスが身を乗り出して頷く。


エラは、控えめながらも図面を使って丁寧に説明を続けた。


「取っ手を握って、親指で押す……って、順番が決まってるから、小さい子でも安心して使えるの」


「なるほど……」


ジャックは思わず唸った。単純な魔道具に、使う人間の動きを織り込む――それは、単なる“魔法”ではなく“道具”としての進化だった。


---


「――というわけで、三人の発表、どれも素晴らしかった。理論が、使う人のことをちゃんと考えてる」


そう締めくくったジャックの言葉に、子どもたちから拍手が湧く。


「そして、次は……僕の発表、というより“提案”かな」


教室の前に立ち、ジャックは指先で空中に魔力の式を書いた。


「今までみんなが話してくれた理論や工夫。これを、実際の“魔道具”として形にする――次のステップに進んでみようと思う」


パッと光る図形。それは、リラの媒介実験、ノアの安定制御、エラの安全設計……それぞれの要素が、ひとつの小型魔道具に融合したものだった。


「これが“形にする”ってこと。僕たちは、もう理論を語るだけの段階じゃない。作って、試して、改良していく」


その言葉に、教室の空気がぐっと引き締まる。


ユリスがふっと笑った。


「……つまり、アルバイト開始ってことだね」


「そういうこと!」


広がる笑いの中、子どもたちの目がキラキラと輝いていた。


---


#### 【ラスト・アリス語り】


教室って、机と椅子がある場所のことじゃないのよ。

誰かが問いかけて、誰かが答える――その繋がりこそが、教室。


今日、グリム村の子どもたちはそれをちゃんとやってみせた。

“理論”から“実装”へ。知識から、創造へ。


いい感じ、いい感じ♪

さぁて次は、彼らの手で作った魔道具たちが――本当に、火を灯せるかどうか。


準備はいい?

次回、『魔道具実験会! 動かぬなら動かしてみせようホトトギス』!

……嘘よ、そのタイトルじゃないけどね♪


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