第5話『異質な視点 - 世界への知的好奇心』1. 【観察者ジャック、始動】
### ――アリスのモノローグ(冒頭)
> 「人は、見慣れた風景の“おかしさ”に気づくには、外からの視点が必要です。
> ジャックがその視点を持っていたのは、前世という異なる世界の記憶があったからでしょう。
> ……まあ、4歳児にしてはツッコミのキレが良すぎるのが難点ですが」
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朝。陽が昇り、鳥がさえずり、ジャックは今日も元気に世界の観察を始める。
4歳になったジャックは今、この世界、なんか変だなセンサー」がフル稼働中だった。
家の前の井戸から水を汲んでいた隣家の老婆が、「《カリダ・エン》!」と唱えて水を温めているのを見て、彼はふと思う。
ジャック(心の声):「それ、太陽光反射板とレンズでもいけるのでは……?」
口には出さない。出したら、「あらまあ天才!」で済めばいいが、
うっかりすると“異端の子ども”としてハーブティーでお祓いされかねない。
その日は、母・リアナが暖炉の薪を運んでいるところにも遭遇した。
大量の薪、燃えるのがめちゃくちゃ早い。そして、また薪。エンドレス薪。
ジャック:「ねえママ、この薪ってさ、魔法でちょっとだけ火を出して、保温は……こう、なんか……囲んで保つとか、できないの?」
リアナ:「あら、変なこと言うのね〜。でも薪の香りって落ち着くでしょ?」
(落ち着くとかそういう問題ではない……!)と内心でツッコみながら、ジャックは裏庭に引っ込んだ。
そこにはアリスとの“観察ノート”(脳内仮想メモ)がある。
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アリス:「ご報告どうぞ、観察者ジャック」
ジャック:「うん。今日の観察ポイントは『無駄が多い』と『謎の信仰心』だね。
魔法で氷を出す人がいたんだけど、それが“水を凍らせる”んじゃなくて、いきなり氷というオブジェクトがスポーンしててさ……」
アリス:「なるほど、物理現象の操作というより、データベースから氷を取り出すコマンドに近いですね。召喚型魔法かもしれません」
ジャック:「なんで氷がいきなり現れるのに、“冷たい空気”は残らないんだろ……?」
アリス:「システム的に“氷”というインスタンスだけ呼び出して、環境効果は省略されてるのかも。軽量化仕様ですね」
ジャック:「ゲームかよ」
と、草の上に転がりながらツッコむジャック。だけど内心はワクワクしていた。
だって、この世界、ヘンで、フシギで、改良の余地しかない。つまり、面白い。
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その日の夜、ジャックは寝る前に、ぼそっとつぶやいた。
ジャック:「俺、この世界で“当たり前”ってやつ、ぜんぶ疑ってみるわ」
アリス:「あはは、4歳児の反抗期ですね。でも、それがきっと“発見”の第一歩です」
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### ――アリスのモノローグ(ラスト)
> 「“異質な目”を持つ者は、時に異端者と呼ばれ、時に革新者ともなる。
> ジャックが見つめるその視線の先に、どんな未来があるのか……
> ……私は今、とても楽しみなんです」




