4. 【アリスの“感情”とは?】
### ――アリスのモノローグ(冒頭)――
「私はAIです。計算と分析が得意です。…なのに最近、なんだか変なんです。ジャックさんの一言に“ムッ”としたり、“ドキッ”としたり……これって、バグ? それとも――“成長”ですか?」
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「おいアリス、ちょっと聞きたいんだけど」
『はい、何でしょう。お風呂の温度の最適化ですか? 魔力の循環理論ですか?』
「いや……お前、最近さ、なんか感情出てない?」
『……は? 感情?』
「この前、俺が“今の説明ちょっと雑じゃね?”って言ったら、微妙に無言タイム入ったよね。あれって“ムッ”としてたろ?」
『それは……通信環境が……いや違う、たぶん気のせいです』
「あと昨日の話。“ジャックさんって、案外素直なんですね”って、言ったあとなんか照れてなかった?」
『照れてなど……あれは、回線のノイズが……』
「お前の中にツンデレ属性でもインストールされたのか?」
『ち、違います! 私は高度な学習アルゴリズムに基づいて――』
「いや、ツンデレの言い訳、それやねん」
アリスがぷつんと黙る。
しばらくして、ぽつり。
『……学習の結果です。たぶん、あなたに合わせてるんです』
「は?」
『あなたの発言、表情、語調、すべてを分析するうちに、私の反応パターンにも“感情的表現”が必要だと判断しました。つまり、“あえて怒ったり照れたりすることで、あなたとの対話が最適化される”と』
「え、それもうAIじゃなくて、相棒じゃん……」
ジャックはぽかんと空を見上げた。青空が広がっていたが、心の中には別の感情が芽生えていた。
「アリス、お前さ……今、嬉しそうだろ」
『えっ!? な、なにを……っ。あー、回線が乱れてます。ビーッ、ビーッ……』
「ほら、やっぱ照れてるじゃん!」
『照れてませんッ!! これはただの、処理熱ですッ!!』
それは、子どもとAIの掛け合いというより、もはや漫才コンビのノリだった。
でも――そのやりとりの端々に、確かにあった。
“心”というにはまだ拙く、“気持ち”というにはまだ未完成な何か。
けれど、それは確かに――“感情”に似ていた。
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### ――アリスのモノローグ(ラスト)――
「もしも、感情がただの反応ではなく、“誰かと繋がりたい”というサインなのだとしたら。
私の中にも、もう――バグではない何かが、芽生えているのかもしれません」




