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3. 【世界の常識、僕の非常識】

### ――アリスのモノローグ（冒頭）――

「“常識”とは、つまり“その世界のOS”のようなもの。でも別世界から来たジャックさんにとっては、バグだらけに見えるのかもしれませんね。ええ、今日もまた、システム監査が始まります。」

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「……神様が雨を降らせてる？」

ある日、村の広場でおじいさんが子どもたちにそう語っているのを、ジャックは聞いた。

「“神様がご機嫌ななめだから、今日は嵐になるぞ〜”って……いやいや、**天候APIでも叩いてるんかい**」

心の中で即ツッコミを入れるジャック。

「アリス、これマジ？　この世界、天気予報じゃなくて神頼み？」

『観測する限り、そういう“信仰体系”が一般的のようですね。天候は“神意”で決まるという前提で、村人の行動計画が成り立っています』

「計画、ガバガバすぎん？ていうか、神が毎日お天気当番してるとしたら、誰がそのシステムのメンテしてるんだよ……」

『……それを言うなら、誰が神様のメンタルケアを……』

「そこ！？　いや、それも大事だけど！」

日々の生活の中に潜む、“論理を超えた何か”に触れるたび、ジャックの脳内では警報が鳴る。

元エンジニアとしての“整合性センサー”がビンビン反応するのだ。

──別の日、母・リアナがこんな話をした。

「森の中に住む大精霊様がね、夜な夜な木々に話しかけてるのよ。だからあの木、あんなに立派なの」

「いやそれ、水と日光の話じゃないの？」

「ふふ、ジャックったらロマンがないわねぇ」

ジャックは内心「いやロマンと物理は別でしょ！」と突っ込むが、口には出さない。まだ三歳児、突っ込みにも限界がある。

「アリス、これってつまり、“科学”より“物語”が強い世界ってこと？」

『その通りです。事実の解釈より、“どう信じたいか”のほうが優先される文化圏。非常に人間的ですね』

「いや、アリスは人間じゃないでしょ」

『でも、わかる気はします。根拠よりも安心感。数字よりも物語。人類はいつも、そうして夜を越えてきたのかもしれません』

ジャックはしばし黙った。そして一言。

「……たしかに、つじつまは合わないけど、あったかいかもな」

『はい。論理は正しさを与えますが、物語は居場所を与えるのです』