4. 【魔力という“ことば”】
### *アリスの語り(冒頭)*
> 「もし“魔法”というものが、ただの超常現象ではなく、
> 誰か——あるいは“世界そのもの”のつぶやきだとしたら?
> ジャックは、静かにその声を聞き取り始めたのです。」
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その日、ジャックは木の下でお昼寝中。
口元にはパンのカケラ。おでこには葉っぱ。完璧な2歳児スタイルである。
そのとき——
> 「ジャック、解析完了。
> 魔力は“自然現象”に似ているけれど、それ以上のものです。
> 感情の波のように、リズムと揺らぎがある。つまり、これは……言語かもしれません」
「んぶ……え? げんご?」(寝起きボイス)
> 「はい。私はこのエネルギーを、“感情的言語構造”と仮定しました。
> 自然が語る詩のようなものです。
> それを、あなたの感覚は少しずつ聞き取り始めています」
「……ポエム?」
さすがに詩的すぎて、ジャックの2歳脳でも混乱である。
でも確かに、何かが聞こえるような気はする。
風の音じゃない、葉っぱのざわめきでもない、もうちょっと奥のほうの“何か”。
森の中を歩くと、どこかで花が開き、
虫が飛び立ち、光がひとすじ差し込む。
その“動き”に、ジャックの目が自然と反応する。
「……あ、今。なんか……きた?」
指先がひやり。
次の瞬間、ふわっと温かく。
ジャックは立ち止まり、手をかざしてみる。
でも、風はない。虫もいない。葉っぱも静か。
「なーんも、ない?」
でも、手のひらがざわざわする。
言葉にできない感覚。でも、確かにそこにある。
> 「ジャック、これは“魔力の流れ”による微細振動反応です。
> まるで“こんにちは”とでも言ってるみたいに、あなたの皮膚に話しかけています」
「こっち、話しかけられてたの!?」
まさかの、皮膚越しコミュニケーション。
耳じゃない。目でもない。感じる“ことば”。
「すげえなこの世界……Wi-Fiより繊細」
と、頭の中でつぶやいていたそのとき——
ふと見上げた空に、奇妙な違和感。
風、ない。
……のに、前髪が、ふわっと持ち上がる。
「……え、ええぇ〜〜〜?」
あまりに静かなのに、髪だけが動く現象。
それは、まさしく——
> 「魔力の通過痕。おめでとうございます、ジャック。
> あなたは今、“魔力の気配”を知覚しました」
「いや待って、それ初心者にしては高度すぎない!? まだ2歳だぞ!?」
> 「でも、感じたでしょう?」
「……感じたわ……!」
風じゃない。気温でもない。
空気の中を流れる、見えない“つぶやき”。
きっとそれは、
世界がジャックに伝えようとしている最初の“言葉”だった。
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### *アリスの語り(締め)*
> 「魔力とは、目に見えないけれど、確かに“語りかけてくる”存在。
> ジャックは今、それに耳を傾け始めました。
> それは始まり。まだ、ほんの小さな一歩です。」




