3. 【森での気配】
### *アリスの語り(冒頭)*
> 「世界が語りかける時、それに気づけるかどうかは、
> 知識よりも、“感覚”が鍵になるのかもしれません。
> そしてジャックは、とうとう、森に足を踏み入れました──」
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「じゃーっくー、靴ちゃんとはいてー」
リアナの明るい声が、朝の空に響いた。
小さな手に麦のパンを握りしめ、ジャックは今日も元気に森探検モードである。
行き先は、村はずれの小さな森。花が咲き、小鳥が舞い、たまに謎のきらきらが見えるスポットだ。
森の入り口に着いた瞬間、ジャックの目がぱちくりした。
「……ん?」
風、なし。鳥、しずか。
なのに、葉っぱがゆれる。花が、ふわっと開く。
その瞬間——
「……あつ?」
手のひらが、じんわり温かくなった。
パンじゃない。日光でもない。
“なにか”が、指先に触れていった感じ。
> 「感覚器官に変調アリ。ジャック、局所的な熱感と共鳴波を感知しました。
> 魔力濃度、通常の2.3倍。これは……自然干渉型魔力現象」
「……ちょっと待て。今の、なに? あれが魔法……?」
ジャックはパンを落としかける(でも、ちゃんと拾うあたりプロ)。
もしかして、この森、生きてる?
いや、生きてるのは知ってたけど……なんか、見てる気がする。
こっちを、じっと。
「ほぉ……感じてるな?」
背後から、ゲイル登場。
木の枝をぽきぽき折りながら、森の奥をじっと見つめている。
「お、お父さん?」
「そういうのはな、考えるな。感じろ。」
「出たー! 説明しない人ォォ!」
心の声が、爆発寸前。
しかも赤ちゃんボイスだと「かんじゅる〜!ふぇ〜〜ん!」みたいになって全然伝わらない。
> 「補足:ゲイル氏は“感覚派”のようです。
> 科学的説明はなくとも、現象に対して鋭い直感的理解を持っています。
> ……いわば、フィーリング魔法学者」
「それ、いちばん曖昧なやつ……!」
でも、ゲイルの言葉には、不思議な説得力があった。
考える前に、手が温かくなっていた。
感じる前に、世界が語りかけていた。
「……やっぱり、“ある”んだな。ここに」
リアナが、笑顔でジャックの手をとる。
「ジャック、今日の森は機嫌いいねぇ」
まるで、天気の話みたいに。
ジャックはぽかんとしつつも、少しだけ笑った。
言葉にならないけど、何かが自分の中で、確かに変わっている。
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### *アリスの語り(締め)*
> 「この世界には、言葉より先に届く“気配”があります。
> それを信じることが、魔法を知る第一歩。
> ジャックはまだ幼い。でもすでに、扉は開かれているのです。」




