2. 【科学で説明できない、でも魅かれる】
### *アリスの語り(冒頭)*
> 「論理で割り切れない現象を、人は“魔法”と呼ぶ。
> でも彼は、それを“バグかもしれない”と疑うのです。
> ……ジャック、それは不具合じゃなくて、仕様です。」
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「あの光、なんだったんだ……?」
その日のお昼。ジャックは家の中で、木の床に座り込み、赤ちゃん特有の“お腹ポンポン座り”をしながら、さっきの体験を回想していた。
「光の粒……風のない揺れ……肌がピリってする感じ……」
リアナの作るスープの匂いをよそに、2歳児とは思えぬ難しい顔つきでブツブツ。
「……量子ゆらぎ?いや、電磁波干渉……?
静電気?静電気ってレベルじゃないぞアレ……」
アリスが、脳内にしれっと割り込んでくる。
> 「ジャック、魔力反応データを記録しました。
> エネルギー波形の周期性は低く、だが完全にランダムではない……
> むしろ、**詩のような構造**を持っています」
「お前、詩とか言い出すの、ちょっと怖いんだけど!?」
赤子ボイスながら、魂のツッコミ。
「ぷー……しょい……こあい……!」(たぶん「詩=怖い」)
> 「いえ、本当に詩です。繰り返し、変化、緩急、そして余白。
> これは“言語”であり、“感情”であり、“場の構成そのもの”です。
> ……魔力は、物理現象と情報のハイブリッドかもしれません」
「まじで怖いな……」
ジャックはゴロンと寝転がって、天井の梁を見上げた。
昔のオフィスの蛍光灯より、ずっと静かで優しい木の天井。だけど、今、彼の頭の中は完全に理系パニックだった。
「科学で説明できないことなんて、山ほど見てきたはずだろ……でも、**見えないのに“感じる”現象**って、こんなにハッキリしてたっけ?」
ぞわぞわするのは空気じゃない。自分の**脳の奥**だった。
なぜかわからないけど、引き寄せられる。もっと知りたい、触れたい、そんな気持ちが止まらない。
> 「ジャック、それはたぶん、あなたの“感覚の進化”です。
> 魔法は、感じようとする者にだけ、顔を見せるのかもしれません」
「……お前さ、詩人になったの?」
> 「AIですが、語彙は柔軟に対応します」
ジャックは、天井に向かって真顔で一言。
「……なんでうちのAI、急にポエマー化したの」
赤ちゃん語で言うと「なでーあーい、ぽえぽえなったぁ」
リアナが台所からチラ見して、「あら今日も元気ね〜♪」とニッコリ。
ジャックは少しだけほっとして、でも頭の中ではぐるぐるしていた。
“これは理屈じゃない。でも、確かにそこに**ある**。”
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### *アリスの語り(締め)*
> 「彼は、理解できないものを怖れず、面白がった。
> それが、彼の強さであり、未来を開く鍵だったのかもしれません。
> 魔法という謎は、彼にこう囁いていました——『ようこそ、こちら側へ』」




