第3話『魔法の気配 - 知覚する異質なエネルギー』1. 【風のない風】
### *アリスの語り(冒頭)*
> 「物理法則。それは前世の彼にとって、信じるに足る真実だった。
> でも、この世界では——そう、風が吹かなくても葉が揺れるのです。」
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朝。空はぴかぴかに晴れていて、グリム村は今日も平和。
ジャックは家の前の草の上で、尻もちスタイルで座っていた。両手にはなぜか石と葉っぱ。なぜ持ってるかは本人もわかっていない。
「まーまーまー……しーっ……」
2歳児の発語は謎のままに。
そのとき——
カサッ……。
「……ん?」
風がないのに、近くの木の葉っぱが揺れた。しかも、ひとつだけピンポイントで。
ジャックは目をこすって、もう一度見る。今度は、葉っぱじゃなくて**空気**が、なんとなく「ぞわっ」と震えたように感じた。
「……ぶぁ?」(いま、なんか変だったぞ?の意)
そして次の瞬間。
草の上を、小さな光の粒が、**ふわ〜っ**と横切った。青白く、柔らかく、すーっと……。
しかも——
ジャック以外、誰も気づいていない。
「アリス……なんか、いた」
(ジャックの口からは「ぁーりゅ、なか、いたぁ」くらいしか出ていない)
アリスの声が、すぐに脳内に響く。
> 「感覚パターン異常検知。視覚・触覚・皮膚電位反応:通常値の+327%。
> ジャック、これは魔力干渉の兆候です」
「ま、まほ……りょく……?」
(言いにくそうに、でもワクワクしながらつぶやく)
> 「はい。この世界に存在する、自然法則を拡張するエネルギー。
> 風のない風、小さな光、感じるぞわっは、全部“魔力”によるものの可能性が高いです」
ジャックは、石をぽいっと投げた。意味はない。だが彼の目は、確実に輝いていた。
「……なんか、すっげー、気になるんだけど」
赤ちゃん語の限界に挑戦しながら、ジャックは魔法という“見えない何か”の入口に、つま先を踏み込んだ。
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### *アリスの語り(締め)*
> 「この世界では、風は時に語り、光は感情を持つ。
> ジャックがその“声”を聞いたとき——世界が、彼に語りかけ始めたのです。」




