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風神の舞台裏  作者: 餅望重太
マズロー1/5
9/10

宣戦布告

300PV超えてました!!


ありがとうございます!!


更新不定期ですが、書き続けますので、引き続きよろしくお願いします!!


 

 スカー、、、、。スカーーー。


 窓から差し込む、優しい光。心地よい風。


 気持ちよさそうに寝息を立て、爆睡しているヴィア。


「まだ目を覚さないの?」


「そうね。早く目を覚まさないかしら、、、」



(ソフィアの一撃、、、。もろに喰らってたもん。あの威力はたまらないわよね)


 此処はギルド大海の慈悲。その一室。


 未だ目を覚さないヴィアをエイブリー達は見守っていた。



「ごめんよ。ヴィア兄。僕がやられて、暴走したばっかりに、、、」


 気を落としているルイ。


「ルイのせいじゃ無いでしょ」


「エイブリー姉、、、、」


「この依頼の達成はルイの活躍あってこそよ。子供達が楽しんでこそのお祭りでしょ?」


「でも、、、」


「そうよ。貴方のせいではないわ。ルイ」


「・・・・・うん」


 ルイは辛辣そうに顔を隠す。自分の無力感に打ちひしがれているのだろう。表情は見えないがグッと身体が縮こまり力が入っている。


「それに最後にデカ男を倒したのは、ルイよ。助かったのはこっちも一緒。ありがとう。ルイ」


「え。そうなの?」



 無言で頷くエイブリー。


 言葉を信じきれずに戸惑うルイ。エイブリー、ソフィアの様子を2度見、3度見している。


 やっとのことで信じたのか深く息を吐く。顔を上げた先にはいつもと同じ笑顔一杯のルイの姿。


「もう大丈夫。ありがとう」


 うんうん、、、、。


 エイブリー、ソフィアは何も言わずに頷いている。


「それにしてもエイブリーは大活躍だったみたいね。最初の依頼でここまでの活躍。ましてや他所者の襲撃にあったにも関わらず」


「えへへ。私も一様ミミック保持者だからね」


 エイブリーは照れ隠しすることなく、堂々としている。


「え?エイブリー姉も戦ったの?」


「もちろんよ。私はもう私のミミックをもう拒まない」




「どういうこと???」


 ソフィア、ルイは首を傾げ、目を合わせる。


「過去の私は、私を拒んでいた。でもね。私を信じることにしたの。私の価値は私が決める」


 ソフィアはエイブリーの過去に何かあったのだろうかと察し、優しい眼差しで頷いているが、ルイは話を掴めていない様子だ。



「ねぇ。ソフィア姉。エイブリー姉の言ってる意味がわからないんだけど!?」


「ふっふっ。残念。私もよ」





 窓際から差し込む光。それに負けず劣らずにその先を見つめるエイブリーの瞳。


 ソフィアはその姿を見て胸が高鳴る。


(やっぱりエイブリーは面白いわ)


「エイブリーもヴィアと同じ、自分の世界に入るタイプかしら?聞いても無駄なこともありそうね。それはさておき、昇格試験の楽しみが一つ増えたわ」


「昇格試験?」


 エイブリーは首を傾げる。


「エイブリー姉!知らないの?」


 ルイのエイブリーを見る目は驚きで目が飛び出そうなほど見開いている。


「だって、、、今まで城からずっと出ていなかったんだもの。興味もなかったし、仕方ないじゃん」


「そうだった、、、昇格試験はね!ゲングリア城で年に一回行われる階級(ネームド)の昇級をかけて行われる試験だよ」



 エイブリーは騎士団時代の記憶を掘り起こす。


「確かにこの時期は騎士団員が妙に少なかったかも。隊長達はわずかな休憩だって喜んでたような」


「この昇格試験は「ノーマルイーター」、「ミドルイーター」のミミック保持者のみの参加なのよ」


「なるほど。だから隊長達は寛いでいたのね。てことは!ソフィアは出ないのね」



「ええ。でも会場には行くわ。皆の応援に行かないとね」



 (何だかソフィアは皆のお母さんみたいだね)



 ソフィアは感情が昂っている為か、会話の熱量が上がる。


「あくまで階級(ネームド)は肩書きの一つ。酷な話、階級(ネームド)がなくても最強格の実力の持ち主もいるかもしれない。でもやりたいことを出来るようになるにはそれ相応の強さが必要になる」


(私は強くはなりたいけどそこまで肩書きに興味はないかな、、、)


 エイブリーは黙り込んでしまった。


 それをわかっていたかのようにソフィアは挑発するように言葉を続ける。


階級(ネームド)をあげるメリットは色々とあるけど、、、、。そこかしこから情報がたくさん流れてくる。エイブリーの知りたいことも分かるかも、ね?」


「!!!」


 まるでエイブリーの思考が読まれたかのようなソフィアの言動にエイブリーは身震いする。


 その様子を眺めていたルイも然り。


「母さん、父さんの居場所を探せるかも知れない、、、か。ソフィア。それを言われたら逆らえないよ」


「ふふっ。やる気になってくれてよかった」


 お互い作り笑いを浮かべている。



(二人とも怖いよ!ヴィア兄!早く起きて!!)


 切に願うルイであった。



 ガチャ、、、。



「あ!いたいた!ソフィアさん。エイブリーさん。ルイ。マスターが帰ってきたぞ。ヴィアはまだ目を覚さないか、、。マスターが呼んでるよ」


 話しかけて来たのはエルドラード兄弟の兄。デュール・エルドラード。


「マスターが、、。ありがとう。デュール」


 ソフィアは一瞬にして顔色を変える。


「エイブリー。ルイ。この話の続きはヴィアが起きてからね?マスターのところに行きましょうか」


 颯爽と部屋を出るソフィア。


「ソフィア。深刻な顔してたね。私たち怒られるのかな?」


「エイブリー姉。大丈夫だよ。怒られることしてないでしょ」


「確かに。えーと。デュールさん?マスター怒ってた?」


「・・・・デュールでいいよ。怒ってはない。でも暗い顔はしてたかな」


 デュールはエイブリーと目を合わせようとしない。


「??。そっか。ありがとう!」


「・・・い、いいですよ。それより早くマスターの元へ」


 デュールは落ち着きのない様子で、エイブリー、ルイを誘導する。


「うん!」


「ヴィアの見守りは俺に任せろ」


「ありがとう。デュール兄」


「おい。ルイ。俺を兄呼びして良いのは実弟のハーパーだけだぞ」


「わかった!デュール兄」


「おいおい、、、俺の話聞いてた?まあ、いい。急げ。マスターは講堂だ」



 エイブリー、ルイの二人はヴィアのいる病室を離れ、講堂へと向かう。



「デュール。なんか挙動不審だったね。ああ言ってたけど相当マスターは怒っているかもね」


 それを聞いて笑い出すルイ。


「デュール兄は、女性と話す時は大体挙動不審だから大丈夫じゃないかな。女性と話す時は緊張するんだってさ」


「へえ。大柄なのに可愛いね」


「デュール兄は優しんだよ。ライヤー兄以外にはね」


(確かに、初めて会った時は喧嘩してたから、怖い印象だったけど、、、)



 ガチャ、、、


 デュールの初対面とのギャップを回想しながら、講堂の扉を開ける、エイブリー。



「遅いぞ。エイブリー。ルイよ」


 その威圧されるような重たい声を聞いた途端、頭がサポモアの一件へと瞬時に切り替わった。


「ごめんなさい。マスター」


 そこには机に佇むマスターカイルオーシャン。その横では、頭を抱えているソフィアの姿。


 エイブリー、ルイは目を合わせ、先ほどの軽視していた予想は外れたことに気づく。



「さあ。早速だが、話を始めよう。君らがサポモアで過ごしている間に起きたワシの出来事を」



 重苦しい様子で話を始めるマスター。


「起きた事実から伝えよう。ワシは、いや、私達は宣戦布告を受けた」


「宣戦布告!?何故?誰から?」


「落ち着け。あれは、ソフィアがサポモアへと飛び出してすぐの出来事であった」


 マスターカイルは紅茶を啜りながら話を進める。


「ワシはオレオールさんと会合し、様々な議論を交わしていた。そして最後の議題である、先日の猛禽類の襲撃事件の話が始まった頃であった」



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「よし、それではカイルよ。最後の議題だ。先日の猛禽類の襲撃事件だ」


「ああ。私もヴィア達から少し聞いています」


「騎士団は第3隊を出動した。隊長達が言うには、猛禽類達は連携を図っており、まるで共鳴しているかのような攻撃を見せていたと。裏で意図的に仕組まれた襲撃だったのではと睨んでいる」


「つまり、誰かが指示をしていた、と?」


「ああ。そうだ」


「考えたくないですな。そんなことが出来るものなど伝承に伝わる神だけだ」


「カイルよ。今話をしたであろう。火種は残っていると」


 二人は頭を悩ませている。


「その火種とやらが、徐々にまた燃え始めてはいませんか?」


「奇遇だな。カイル。私もそう思っていた所だよ」


 重苦しい雰囲気が流れる。両者はお互い無言の中、様々な想像を思い浮かべている。


「そして、、、もう一つ。教えねばならんことがある」


 口火を切ったオレオールは更に深刻そうに言葉を続ける。


「勘弁してくれ、、、。もう腹一杯ですよ」


 カイルは更に肩を落とす。





「その話、詳しく聞かせてくれ」


 後ろから聞こえるいるはずのない声。


「誰だ!!」


 振り返るとそこには、一人の老人が立っている。赤い法被を纏い、独特の雰囲気を放っている。


「忘れられたら困るの。でもこんな姿になっちまったんだ。仕方もねえか」


 老人は悠々と自分の容姿に触れていく。


「誰だが知らないが、ここに入っていること只では済まんぞ」


「ぬかせ。それはお前もだろう。小童」


「なんだと!?」



「・・・・・。やめろ。カイル」


 オレオールの制止も虚しく、カイルは老人めがけて瞬間移動している。その移動はまるで重力を無視して進んでいるかのように滑らかで息を呑むことすら忘れてしまう。


「早い!ああ、懐かしい動きだ。これはアルメハと同じ」



「!!」




「終わりじゃ!!」


 カイルは老人の目の前に現れると一瞬にして水の槍を作り出した。


「これはまずい!」


 カイルの放った水撃は老人の持つ羽団扇により相殺されてしまう。



「ははは。これは参った!!威力。そして練度。アルメハ以上!」


 物騒に笑う謎の老人。


「自分を褒めていいぞ、小童。今なら私も負けてしまいそうだ」


(くっ!ワシの操る水を相殺した。こやつ、只者ではない)


 カイルが追撃しようと足を踏み出したその時、、、、。


「やめろ!!カイル」


 オレオールの雄叫びが地響きと共にあたりに広まる。


「カイルや。下がっていろ」


「オレオールさん、、、」


 オレオールは立ち上がると老人の元へと近づいていく。


「おい。リアン。何のようだ?!」


「オレオール、、、。久しぶりだのう」



 オレオールは右手に金棒を持ち、大きく振りかぶる。


「ふざけるな。その姿。目的は何だ!」


 温厚なオレオールの怒号が響く。


 カイルもオレオールのこのような姿は初めて見る。カイルでさえも息を呑み状況を見守るしか出来なかった。


「まあまあ。落ち着け。今は君たちと事を構える気はない。ただ、、、。宣戦布告に来たんじゃ」


「宣戦布告だと?」


「そうさ。私が呪いから解き放たれた時、この世界を一から作り直す。言いたいことは一つ。時期が来たら君たち全員を潰すってこと。賢いオレオールなら分かるだろうな」


「・・・・・」


 オレオールは唇を噛み締め、震えている。


「オレオール。私は本気だぞ。ミミックのある世界を終わらせる。だから、、、この世界を救ってみせてくれ」


 謎の老人リアンはそう言い残し、出口へと足を進める。



「オレオールさん、、、、」



「ああ、言い忘れてた。私の部下がサポモアで、そこの小童の仲間とやっているようだ。ヴィアとかいったかのう。お互い良い幕開けになるといいな、、、」



 老人は姿を消した。




「はあ。はあ。はあ」


 オレオールは息が上がっている。ゆっくりと金棒を下ろす。


 ガツン!!!


 その衝撃で辺り一体に電気が巡る。


「オレオールさん!彼は一体、、、?」


「・・・・・・カイルや。どうやら私の悪い予感は的中してしまったようだ」


「そんな、、、」



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「それ以降リアンという老人の正体を聞くもオレオールさんは答えてくれなかった」


 淡々と事実を述べるマスターカイル。



 エイブリーは戦慄していた。


「マスターの水撃を止める人がいるなんて、、、」


 ルイは勢いよく頷いている。


「オレオールさんから伝えられたことは一つだけ。「これは私達老耄達の問題だ」だそうだ」


「オレオールさん、、、」




「その老人はヴィアの名前を言っていた。ヴィアに聞こうと思ったのだが、ヴィアは?」


「寝ています。また暴走していたので」


「!!ああ、そうか、、。またか」


 マスターカイルは良くあることかのように軽く流す。



「おいおい。今回は進んで暴走したわけじゃないぞ」



「ヴィア、、」


「ヴィア兄!」


「体は大丈夫か?ヴィアよ」


「ソフィのおかげで頭が痛いけど大丈夫だぜ。マスター」


「あら、何のことかしら?」


「・・・・」


 ヴィアは一つため息を吐く。



「それより、さっきの話。名前は聞いてないけど、変な老人なら、スパイナル・フィールドであった」


「そうなのか?服装は?赤い法被に羽扇子を持っていなかったか?」


「いや、違うな。服装はボロボロのシャツだったし、特に何も持っていなかった。なあ?ルイ」


「そうだね。同一人物かは分からないけど、昔のことに随分詳しいお爺さんだったよ」


「ほう。昔のこと言うと?」


「・・・・初代「ペガサス」のミミック保持者と知り合いみたいな口調だった」


「!!!。・・・・そうか」


 カイルは何処か閃いたように、メモをとっている。


「ありがとう。ヴィア」


「どういたしまして。マスター」


「この件はオレオールさんに任せることにしよう。私も独自で調査は進めていく。それより、サポモアの件。よくやってくれた!暗い話は終わりとしよう。そろそろ昇格試験じゃな。期待している」


「そっか!もうそんな時期か!楽しみになってきたー!!」


「僕も!!!」


 まるでお祭りを楽しみにしている子どものように二人は盛り上がっている。


 おかげで険悪モードから一転。場が明るくなる。



(この先どうなるだろう。でも私もやりたい事をするため、強くならないと!)


「私もやるぞ!」


「エイブリー。お前も出るのか?」


「当たり前じゃない。もし、ヴィアと戦うことになっても容赦しないよ」


 ヴィアは嬉しそうに答える。


「受けて立つぜ!」




「それで昇格試験って何するの?」



 ズコーーー。


 その会話を聞いていた全員が転げ落ちそうになった。


「おいおい。知らないで言っていたのかよ」



「・・・・・ははは。エイブリーさんは面白いね」


「デュール。覚えておいた方がいい。エイブリーはこう見えてイカれてるだけだぞ」



「あんたに言われたくない!」



 ギャーギャーギャー。



「・・・仲が良いのか。悪いのか」


 デュールは二人の口論を止めに入る。


「昇格試験は対戦形式もある。それも階級(ネームド)を問わずだから、本当に二人で戦うこともあるかもしれないね」



 ピクッ、、、、。


 二人の動きが止まる。


「そうなった時は本気でこいよ。エイブリー」


「もちろん。ヴィアからたくさん戦い方を盗んでやるんだから」


 笑顔で挑発し合っているヴィア。エイブリー。


「ルイ。この二人はいい仲間(ライバル)みたいだな」


「デュール兄。そうだね。でも、、、、、」


 ルイが二人のもとへ近づく。


「言っとくけど僕もだからね!!」


 堂々と言ってのけるルイ。


「そうだな。負けないぞ。ルイ」


「私も。負けないよ」


「望むところだ!!!」



 盛り上がる3人を横目に微笑みあう実力者達。



「マスター。本当に楽しみですね」


「そうだな。ソフィア。ワシの分まで応援しとうてくれ」


「今年も行かれないんですか?」


「この日は野暮用があってな。他の連中も頼んだぞ」


「・・・・。分かりました。マスター」


 ソフィアもヴィア達の元へ駆け寄る。




「よーし。そうと決まれば特訓だ!」


「おー!!」



「その前に!ヴィア。あなたはもう少し休みなさい」


「えー!!」


「えーじゃない!ほら戻った戻った」



 ヴィア一行は訓練を始める。っとその前にほっと一息体を休めるのであった。





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