睡眠欲
置き去りにしていた過去の記憶。私のミミック「カンガルーネズミ」
その事実は両親の会話を盗み聞きした時に知った。
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「ママ、、、。エイブリーは寝たよ」
「ありがとう。それで、、、通達は来た?」
「あぁ、、、、。さっき通達が来たよ。やはりエイブリーは持っていた、、。『カンガルーネズミ』のミミックホルダーだと、、、」
「そうですよね、、、、。あの素晴らしい跳躍力。持っていない筈がないよね、、、、。何でこんな大事な娘に限って、、、、」
ズズズ、、、、、。
母親はどうやら涙が止まらないようだ。
「ママ、、、パパ、、、」
両親が涙を流している姿を扉の隙間から眺めていた幼き日のエイブリーはミミックは両親を悲しめるものなのだと知った。
それ以降の会話は胸が苦しくなって、話を聞く事なく、布団に逃げ込んだ。
しかし、両親の会話は続く。
「それでミミックの能力はあの跳躍力だけなの?」
「いや、どうやら危機察知の能力があるみたいだ。此処にいると、いずれ彼女はこの能力に耐えられなくなるだろう、、、、、、」
「そうね、、、、。この家系はそういう運命。エイブリーには、、背負わせたくない」
「あぁ。そこで提案があるんだ」
2人は机越しに面と向かって語り合う。
「首都のゲングリア騎士団に預けよう。そこに居るオレオール様ならきっと快く頼んでくれるだろう」
「………………」
母親は躊躇う。我が娘の平穏な暮らしを願う気持ち。そして、自身の手から離してしまう罪悪感、喪失感。激しい葛藤に襲われている。
「…………わかりました、、、、でも、でも、うわぁぁ!………………もっと一緒にいたいよ!彼女の笑顔をみて、彼女の成長を見守りたいよ!ねぇパパ、、。それしか道はないの!?」
「………………これしか無い。きっとこれしか無いんだよ」
2人で抱き合いながら泣き喚く両親。その泣き声は、布団で遮断した筈のエイブリーの耳にも嫌ながらも入ってきていた。
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(私の能力。跳躍力、俊敏。そして危機察知。すっかり忘れ去ってたから、ただ運が良いと思っていたけど、、、)
「この力は、、、、私の味方、、、」
エイブリーは拳を握り締め、静観な眼差しで目の前のマーチへと目線を向ける。
「よくもラビーを、、、やってくれたなー」
マーチは気だるそうな姿が完全に無くなり、動きが機敏になっている。
倒れているラビーを優しく抱えあげ、危害の加わらない場所に静かに隠す。
「…………………」
マーチはゆっくりとエイブリーへと近づく。怠慢な姿はもう見当たらない。
「さっきの小言のようにはならなかったみたいだね、、、」
勝ち誇ったようにマーチの姿を眺めるエイブリー。
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先程のマーチの言葉、、、。
「リアン様も思い違いするんだなー。こんな奴等ならラビーだけで十分じゃないか?」
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「何だ。聞こえてたのか」
マーチは歯軋りをして自身の怠慢を悔やんでいる。
「確かにラビーへの過信であり、敵であるお前達を軽視した結果だ。だが、受け入れよう。ラビーの仇。俺が貴様らを倒す!」
マーチは力を解放するかの様に雄叫びを上げる。
エイブリー目掛けて再び歩き始めるマーチ。
エイブリーvsマーチが幕を開ける。
一方その頃、、、、、
颯爽と掛ける美しい黄金の姿がサポモアへと近づいていく。
「待っててね。みんなもうすぐで着くからね!!!」
エイブリー。そしてマーチの戦いはお互い引けを取らなかった。
ドドドン!!
マーチは純粋な力勝負。エイブリーは危機察知を駆使し、致命傷を回避しつつ、反撃の蹴りを放つ。
「はぁ、、はぁ、、、、」
「はぁはぁ、、、」
お互い息切れが出ている事を忘れているほど集中している。しかし、互いの表情は正反対である。
エイブリーの蹴りを全て受け止めながら腕を振るマーチ。
危機感知により、回避しながら攻撃を仕掛けるエイブリー。
体力の消耗の差は一目瞭然だ。
「ははっ!!私はまだ強くなれる!!」
「はぁはぁ、、、おいおい。シェンのやつ。女は弱いから無視していいって言ってたじゃないか!!」
マーチはいよいよ、膝をつき、息を無理矢理にでも整えている。
「!!」
エイブリーは飛ぶ。
己に自信をつけたエイブリーはもう出し惜しみなどする事が出来ない。その先にある更なる成長に手を伸ばしたくて堪らないのである。
「はぁーー!!!」
空高く飛んだエイブリー。マーチを目掛けて降下を始めた。エイブリーは同時に再び体を回転させている。
その姿勢は傾く事なく美しい正中線を描く。
「袋鼠の回し蹴り!!!!」
ラビーへの一撃と動揺、いやそれ以上の威力でマーチに直撃する。
ドン!!!
「おいおい。お姉ちゃん。強いなーー」
間一髪でマーチはエイブリーの鋭い蹴りを受け止めてみせた。
「おかげさまでね!!」
エイブリーは空中でマーチに蹴りを入れたまま、脚を切り替え逆足で再び蹴りを放つ。
ドン!!!!!
とうとうエイブリーはマーチという巨体を吹き飛ばした。
「ぐっ!!!ぐぇっ!!」
マーチは地に向かって嗚咽を吐いている。その体はボロボロ。しかし、それでも立ち上がる。
「簡単に負けられるか、、、、」
エイブリーはマーチの眼差しに身構える。
「さっきの質問に答えてもらおうか、、、、。貴方達の目的は何?」
マーチは下を向き続けている。
「俺達は、、、主人の復活前のオードブルさ」
「………主人の復活??」
「あぁ。だが、お前達が知る必要はない」
すると溜息を溢すと気を抜き天を仰ぐ。
「まさかこんなに劣勢になるとはな、、、ははっ!流石、主人が気になるギルドというものだ」
そう嘆くと再び構えるマーチ。
ビビビ!!!!
声は聞こえずとも確かに強烈な攻撃を予知したエイブリーは全身の気を集中させる。
「きなよ」
マーチは気をよじ登る。木から木を次々と移動しエイブリーを撹乱する。
「……………」
エイブリーはマーチの動きに合わせて向きを変えていく。
「!?!?」
エイブリーは急に力が抜け、膝から崩れ落ちる。
「!!!」
それを木を飛び越えながら眺めていたマーチは、不敵にも笑みを見せている。
「これがお前の意地ってやつか!!なぁラビー!!!」
「まさか!?あの時に??」
触れていなかったとされるラビーの手は僅かながらエイブリーの身体へと接触していた。
確かにエイブリーの正気を奪っていたのだ。
「ははっ!」
それを理解したかの様にマーチはエイブリー目掛けて飛び込む。
「喰らえ!子守熊の鉤爪」
エイブリーは危機一髪で身体を仰け反りながら、後方へ飛び出し、回避するも、斬撃は大腿部へと直撃する。
「っ!!!」
抵抗する最後の力も虚しく、声にならない程の激痛がエイブリーを襲う。
「うわー!!!」
今まで感じだことのない激痛にもがき苦しむエイブリー。
エイブリーに近づきながらその様子を楽しむマーチ。
「はぁはぁ、、。どうだ。これが俺たちの力。俺たちの勝ちだ!」
マーチはエイブリーの蹲るエイブリーの顔目掛けて手を伸ばす。
ビビビビビビッ!!!
マーチは小さく微笑む。
「爆睡の部屋!」
ガチャ、、、、
エイブリーは不思議な部屋へと立たされる。捻じ曲がっている空間。重力が存在しておらずベッド、机、椅子が宙に浮いている。
後ろを振り返ると閉じられようとしている扉。
「くそっ!!!」
真っ先に扉の先へ飛ぶ。しかし、足の激痛が扉までの進行を妨げる。
「まだ!私は負けてない!」
ガチャン!!!!
扉は閉められた。
「くそっ!!くそっ!空かない!!」
シーン、、、、、。
沈黙が流れる。いかに大声で叫んでも返事は聞こえない。
エイブリーは膝をつき、頭を抱える。
カチ、、、カチ、、、、
「な、何!?」
目の前に爆弾が現れる。その爆弾の上においている2時間でセットされているタイマーが進み出した。
「2時間、、、。これが爆発したら私はどうなるの?」
頭を抱え嘆くエイブリー。
徐々に思考は鈍くなり、身体が重い。
「何とか、、、何とかしないと、、、、」
エイブリーは痛み、眠気に何とか抗っていた。
一方現実世界では、、、
「ははっ!ははは!!!馬鹿め!!お前のその微弱な蹴りで俺が弱るわけないだろう!」
マーチは勝利の雄叫びを上げる。
目の前には睡眠に誘われ、横になっているエイブリーの姿。
「さぁ!どうしてやろうか。この綺麗な顔をぐちゃぐちゃにしてやろうか!!」
マーチはエイブリーの顔を踏み付け、天を仰ぐ。
「そうだ!先ずはラビーの仇を返さないとな!」
マーチはエイブリーを精一杯の力でエイブリーを蹴る。
エイブリーは起きるはずもない。そして目を開けることもない。
「2時間の死までの猶予。精々苦しめてやるよ!!」
マーチは再び脚を大きく振り上げ、エイブリーの顔面目掛けて振り下ろしていく。
「ははっ!」
ビュルルル、、、!!!!
突然の突風にマーチはバランスを崩し、遥か後ろへと後退りさせられる。
「な、何だ!?!」
森の影から歩いてくる傷だらけの男。
「………そこまでだ、、、」
まるで鬼の形相。歩いてくる男の覇気にマーチは怯んでしまう。
「今お前が踏んでいる女は、、、俺の仲間だと知っていてやっているのか?」
突如現れた男。そうヴィアである。
「知るか。どうせこいつの仲間なら俺はお前の敵だ」
「そうか」
ヴィアは右手を口元に置き、マーチに向ける。
翳された手には風が凝縮し白色の塊に変化する。
「白馬の囁き(ホワイトブレス)」
「!!!!」
マーチは木の影に隠れ突風を防ぐも、木々が薙ぎ倒されていき、マーチは巻き込まれる。
倒れているエイブリーへと近づくヴィア。
「エイブリー!!大丈夫か!!」
故障している左の腕を庇いながら必死に呼びかける。
「………………」
返答はない。
「おい!!エイブリー!!!」
「…………………スゥーーーー」
息はある。ヴィアはその事実に多少安心しながらエイブリーを起こすことに試みる。
「まさか!?寝てるのか?」
ガザガサガサ、、、、、
「あぁ、そうだ。こいつは今、爆睡しているんだよ」
荒れ果てた木々の間から荒い息遣いで出てくるマーチ。
「そうか。お前がマーチか、、?」
ヴィアは痺れている左の腕に布を巻き、最小限の処置を促している。
「何故俺の名を知っている?」
「お前の仲間。シェンと一戦混じり合ってな」
「シェンとだと、、!!!」
マーチは混乱する。
(シェンと戦い現れた男。まさか、、、シェンが負けた!?)
「何故お前がここに現れる!?シェンは今どこだ?」
「言わなくても分かるだろう?シェンは今頃お前の能力で寝ているだろうな」
ヴィアはシェンが周囲の住人に晒されないよう、そっと場所を移動させていた。
「くそっ!ラビーはまだしも、シェンまで、、」
そのことを知る由もないマーチは頭を抱える。しかし、その姿は2人の仲間が傷つけられた態度とは思えないほどさぞかし無関心な態度であった。
「はははっ。だが誰が来ようとも此方が優勢。あの馬鹿少年とこの女は俺の夢の中。そして、俺たちの中で最強のシェンと戦ったんだ。お前もすぐ押せば倒せそうだなぁ」
マーチは勝利を確信したかのように微笑む。両手を仰ぎ高らかに声を上げる。
「お前を倒せば。任務完了。主人復活のオードブルとして最高のシナリオだ!」
天を仰いだマーチの足元は確かに震えている。
「エイブリー。よくやったよ。お前はやっぱりやる女だった」
マーチの勝手な勝利宣言を無視して、ヴィアは苦しむ表情を見せながら眠るエイブリーを見て微笑む。そっと抱え、隅の木の影へと隠す。
ヴィアはマーチを同情するかのように見つめている。
「何がおかしい!?」
自身を見て嘲笑うかのように微笑む姿に嫌悪感を覚えるマーチ。
「どうやらお前もすぐ押すだけで倒せそうだな」
「やってみな!その全身傷だらけの身体で出来るんならな!!」
マーチはヴィア目掛け突進を始める。そのスピードは決して速くない。しかし、その絶妙な遅さが一撃への恐怖を与える。
「子守熊の鉤爪」
「白馬の壁」
攻めに転じるマーチ。その攻撃から何とか守るヴィア。
何かを察したのかマーチは甲高く笑い出す。
「お前、擬態器が切れそうなんだな?」
ヴィアは無言を貫く。その表情は歯軋りをし、悔しさを露わにしていた。
擬態器
それは己のミミックを具現化する力。その力の総量。例え食物連鎖の覇者の力を自身に纏っていたとしても擬態力を持ち合わせていないと武器となることは無い。寧ろ、コントロールできず自滅してしまう。
ヴィアはその擬態力の総量を超えようとしていた。
「これが最後の一撃かな」
小さく呟くヴィア。ヴィアは顔を上げる。悔しそうな表情は変わっていない。
「悔しそうだな?!それもそうだ!これ以上お前がミミックを使えば、理性を失いまるで暴走の化身。仲間ごと殺してしまうかもしれないからな!!」
無言を貫いていたヴィアが口を開く。
「あぁ悔しいよ。俺が最後の一撃を打てないこと。そしてこれが終わった後、俺はこっぴどく怒られるからだ」
「………??何言っているんだ?」
マーチはヴィアが発した言葉を理解出来なかった。それもそのはず、これから起きる一瞬の出来事を察知することは不可能だったから。
ビュルルル、、、、、
森が揺れている。まるで誰かが時速何百km/sで疾走しているかのようだ。
ヴィアはその揺れを感じた瞬間、マーチに向けて駆け出す。そして、マーチまで数mの所で急に止まり、囁く。
「白馬の金縛」
ヴィアは悔しそうな表情から一点。何処か誇らしげな表情をしている。
「全く、良いところどりしやがって!!まぁ、お前も馬鹿呼ばわりにされたままだと終われないよな!?」
「くっ!動けない!!」
マーチはヴィアの能力によりその場に固定された。
シューーーーーーー!!!!!
目に追えない速さで何かが自分に向かって飛んでくることに気づくマーチ。
「おま!、、、、、!!!!」
「神速の衝突」
一瞬にして飛んできた物体はマーチに衝突する。何も言葉を発することが出来ずにマーチは倒れる。
尋常じゃないスピードでマーチを仕留めた男。その男はルイだった。
「スーーーー」
目を瞑ったまま飛んできたルイ。それを知っていたかのようにその姿を見つめるヴィア。
バタン、、、、。
着地と同時に倒れるルイ。その姿を横目にゆっくりと腰を下ろすヴィア。
「知っているか?ルイは寝ながらでも飛べるんだぜ、、、、」
「ん、、、、??此処は?」
「起きたか。エイブリー」
「ヴィア!そうだ!私は眠らされて!」
全身に痛みに気づくエイブリー。ラビー&マーチとの戦いの代償である。
エイブリーは戦いの傷より勝利への安心感に駆られていた。
「ありがとう。ヴィア。助けてくれて」
「いいんだ。そんな事よりこれから大変な事になるぞ、、、、」
息を呑むヴィア。それに釣られてエイブリーも固唾を飲む。
「今からルイが暴走する。訳は後で話す。俺はこれ以上ミミックを使えない。エイブリーはまだ戦えるか?」
「何、、、それ、、、?」
エイブリーは混乱する。確かに1番元気そうなのは自分だというのはこの光景を見て一目瞭然だ。
全身ボロボロ左手を引きずっているヴィア。その後ろで何やら怪しい動きしているルイ。
そして、戦いに巻き込まれないよう袖に置かれたラビー、そして、マーチ。
「私の初陣はもう十分すぎるわ。それに、もう戦える自信はない」
緊張の糸を切らしていないヴィアに疑問を浮かべながら、断りを入れるエイブリー。
「そうか、、、、、」
黙り込むヴィア。
「今から、、何が起きるの?」
エイブリーは純粋な疑問をヴィアにぶつける。
カツン、、、、カツン、、、、
「ミミックを使う為には相応の精神力。そして、擬態器という能力を使うだけの器が必要よ。器が壊れてしまってもダメ。器の量から溢れてしまってもダメ。どちらもミミックに自身の肉体を奪われる」
ヴィア、エイブリーの後方から聞いたことのある声が響く。
「ソフィ、、、、」
「ソフィア!!!」
ヴィア、エイブリーの声が共鳴する。
「どうやら終わっているみたいね。ヴィアもエイブリーもボロボロ、、、。大丈夫?」
「ソフィア。私、頑張ったんだよ!」
エイブリーはソフィアが来てくれた安心感からか気が抜けてしまったようだ。
まるで母親に抱きつにいく子供のようにソフィアにゆっくりと近づいて、手を広げる。
「エイブリー!頑張ったわね!!私もエイブリーならやってくれると信じていたわ」
ソフィアは優しくエイブリーの頭を撫でる。
「ソフィ、、、。でも、、、ルイが、、、」
身を畏めてヴィアはソフィアへと語りかける。
「ヴィア、、、、。全く何回言ったら」
「聞いてくれ!今回は仕方なかったんだ!!いきなり襲ってき、、、、」
「黙りなさい。詳しくは後で聞きます。やるべき事は分かるよね?」
「……………はい、、、」
冷静にヴィアを諭すソフィア。ヴィアは抵抗する間もなく気を練っていく。
(ヴィアを一瞬で黙らせた!ソフィアはやっぱに凄いな)
「な、何をするつもりなの???」
「エイブリー。ヴィアを見ておいて。ミミックの本性の一部を」
そう言うと、ソフィアはヴィア目掛けて駆け出す。一瞬にしてソフィアの覇気が周囲へと広がる。
「白馬の願い」
ルイが横になったまま、空中へと浮かび上がる。ヴィアの放つ優しい風により傷は癒え、目を覚ます。
「ん??此処は??」
「ぐわわぁぁぁぁあ!!!!」
それと同時に絶叫を上げるヴィア。その体は人間の肉体をやめ、膨張し、膨れ上がっていく。
グビヒヒーーーン!!!!
ヴィアはまるで馬のような鳴き声で雄叫びをあげ続ける。
周囲には台風かと思うほどの強風が吹き荒れる。
そんな事を気にも触れず、ヴィアの目の前へと現れるソフィア。
「ソフィア!!危ない!!」
「ソフィア姉。来てくれたんだ、、」
ソフィアはヴィアの顔を鷲掴みにし地面へと叩きつける。
「はぁぁぁ!!!!!!!」
ソフィアはヴィアを地面に尋常じゃないほどの威力で叩きつけた。
ヴィアの膨張した肉体は人間の姿に戻り、倒れている。
「な!何が起きたの!!!!?!」
エイブリーは釘付けになってしまっていた。
「これは能力に飲み込まれた末路の一瞬。理性は能力へと奪われ、気が済むまで何もかもを蹂躙する怪物となる」
ゆっくりと腰を上げヴィアの顔から手を離し、エイブリーを向くソフィア。
「さ!一件落着!ギルドに戻りましょうか!」
エイブリーへと向ける飽和な笑顔。しかし、その柔らかな額には先程の衝撃による返り血を浴びている。
(怖い!!ソフィアはやっぱり怒らせたら絶対に怖い!!!)
ミミックに飲み込まれる断片映像。エイブリーは、ミミックの先にある恐怖の姿を知った。
そして、その怪物でさえも悠々と捻り潰すソフィアを絶対に怒らせまいと心に誓ったのだった。
「ルイ!目は覚めた!?」
「うん!ありがとう。ソフィア姉!それにエイブリー姉!」
「うん!」
ルイの眩しい笑顔がエイブリーに刺さる。
「さ!帰りましょ!ルイはヴィアを持って」
「待って!!ソフィア姉。まだ依頼の仕事が残ってて、、、」
「あっ!!」
すっかり忘れていたエイブリーだったが、午後の部のスタートをヴィアの代役として参加。緊張からかぎこちない動きを見せるも無事に依頼初仕事も終了した。
「はぁーー。緊張した!」
「エイブリー姉。足が震えてたよ!」
「これは緊張じゃ無いもん!戦いの痛みよ!!」
「へぇーーー」
「信じてないな!この!グリグリ攻撃!」
「痛い!痛いよ!エイブリー姉!」
「ふふふっ。元気なこと。ヴィアは大丈夫かしら。少し力を入れすぎちゃったかな」
馬車に乗りギルドへと戻る4人。ルイ、エイブリーは元気に帰宅の路を満喫していた。しかし、ヴィアはソフィアの膝で横になっており、凸凹道の衝撃でさえも目を覚さないのであった。
「まぁ、ヴィアだし。何とかなるでしょ!」
こうしてサポモアでの依頼。そして突如現れた生理的欲求の塊達との戦いは幕を閉じた。
200pvありがとうございます!!!!!
もっと面白くユーモアな作品を作れるよう頑張ります!!