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風神の舞台裏  作者: 餅望重太
マズロー1/5
10/10

昇格試験

 


 バンバンバン、、、、、!!


 空砲が鳴り響く。


 此処は首都ゲングリア。ゲングリア中央競技場。



「今ここに昇格試験開催を宣言する」


 そう宣言するは現七将天王第2席 オレオール・ブロンデー。



 わああああ!!!


 老若男女の観客が歓喜している。


 競技場の中には総勢二千を超えるミミック保持者達。


 ギルドに所属している者、騎士団の一員が主だが一般人も参加可能なのがこの昇格試験。


「いよいよだな」


 ヴィア、ルイ、エイブリーも勿論、競技場の中にて、オレオールの開会宣言を聞いていた。


「なんだか緊張してきた」


「私も」


「何言ってんだよ。楽しみでしょうがないぜ。騎士団の奴らともやれるんだしな」


 ヴィアは血を滾らせている。



「おうおう。相変わらずヴィアは威勢がいいな」


「デュール、、、」


 そこにはギルドにいる時と一味違う男の姿。とても殺気立っている様子だ。


「今年は絶対に譲れないんだ。いつもは味方でも本気で倒させてもらうぜ」


「デュール。ああ。わかってるよ。それでもオレは負けない」


 わずかに微笑むデュール。



「おいおい。どの口が言ってるの?」


 デュールの肩に手を乗せる男。馴れ馴れしく言葉を続ける。


「お前は弟より弱いんだ。大人しくしとけ」


 話しかけてきたのは、ライアー・エスティグマ。


「げっ」


 思わずヴィアとルイは視線を合わす。


「ライヤー、、って確か、、、。最初にデュールと喧嘩してた人だよね」


 エイブリーは二人との初対面の記憶を呼び起こす。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「おいおい。デュール。お前にこの美人さんとは釣りあわねぇぞ」

「ふんっ。お前もだよ。クソゴリラ」

「なんだと。このクソ達磨」

「あぁ?」


 ライアーとデュールは、取っ組み合いの喧嘩を始める。



「あのー。ヴィア。止めなくていいの?」

「いいんだよ。あの2人、出会ったらいつも喧嘩するから」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「確かにこの二人は合わなそうだわ」


 この時のエイブリーの予想は紛れもなく的中している。



「おい。手を離せ、、、」


「なんで?」



 二人の間に沈黙が流れる。デュールは更に殺気立っている。





「ヴィア兄。この状況まずいよね」


「ああ。とってもまずい」


 ヴィアが喧嘩が始まる前に二人を止めようとしたその時、後ろから聞こえるからかいの言葉。



「ずいぶんと全員思い上がっているな。俺たちがギルドの雑魚どもに負けることなんてあるのかなあ」


「なんだと?」


 後ろを振り返るとそこには騎士団員が3人。ヴィア達を嘲笑している。


「落ちこぼれどもにしてはやるらしいけど、東の暴君さん。精々、俺たちを楽しませてよ」


「・・・・このやろ、、、」


 血の気の多いヴィア、ライヤーは如何にも騎士団員めがけて殴りかかろうとしている。それをルイ、デュールが制止する。


「お前達は、、、誰だっけ?見たことはあるような」


 ボソッと呟くエイブリー。

 その言葉に気づいた騎士団員の一人は驚嘆している。


「お前は、エイブリーか?俺たちの名前すら覚えていないのか」


「・・・・だって興味ないもん」


 あまりの即答による苛立ちからか顔が引き攣っている騎士団員。


「ははっ。いいさ。お前がどのような媚を売っていたか知らないが、ちょうどお前をぶち飛ばしたかったんだよ」


「あっそう。頑張って」


「この、、、、」


 騎士団員は苛立ちが隠せていない。


「少し手加減してやろうと思ってたんだがな!!俄然やる気が出てきたわ」


 思わず声を荒げる騎士団員。



「五月蝿いぞ。お前達」


 一斉に脳内に響く声。


 その声の主は壇上にいるオレオール。


「オ、オレオール様!!」


「情けないの、、、。口だけのやつはワシは一番嫌いなんだが、、、、」


「も、申し訳ありません!!!」


 オレオールの一言により騎士団員の3人は黙り込む。




「それでは、最後に前回最優秀プレイヤーより、最優秀旗返還」


 気づけば、開会式も最後の項目となっている。


「それでは前年度の最優秀プレイヤーに登場していただきましょう!!」


(誰だろう?)


 エイブリーは騎士団の誰かだろうと予想しており、知っている顔かもしれないとぼんやりと壇上を眺めていた。


「通称東の暴君ギルド「大海の慈悲」より、ハーパー・エルドラード!!!」



 わーーーーー!!!




 一際歓声が強くなる。


「騎士団以外での最優秀賞は実に20年ぶりの快挙となった前回。強さとは裏腹にその控えめな性格が女性を魅了しているようです!」


 解説がハーパーの快挙を興奮気味に語る。


「くそ!ハーパーに先を越されちまったからな。それにしてもなんであいつはあんなにモテているんだ?!」


 ハーパーに向けられる黄色い歓声に背を向けるヴィア。



「・・・・・」


 それを更に悔しげにみる男が一人。



「なあ。悔しいな。お兄ちゃんよ」


 それを分かっているかのように弄るライヤー。


「・・・当たり前だろ」



 そう言うと冷静を保とうとするもどこか鼻息荒く歩き出すデュール。


 その姿は己への無力感、怒りを物語っている。


「どうだ?弟に先を越されちまったお兄ちゃんの気持ちは?教えてくれよ!」


 ライヤーは遠慮のかけらも無く言葉を続ける。


「おい、ライヤー!やめろよ」


 振り帰ることなく歩き続けるデュール。


「ちっ。面白くねえ」


 ライヤーはデュールと正反対方向へと歩き始める。




「ハーパーさん。今年の注目選手はズバリ誰でしょうか?」


「え。そんなの一人しかいないですよ。僕の兄。デュールです」


「そ、そうですか。・・・貴方の兄は貴方より階級は低いですが、そこはどう思いますか?」


「あ、、、、」


 その質問を聞いた途端、ハーパーはインタビュアーのマイクを取り上げる。


「それはつまり、兄が僕より弱いことをどう思うかと聞きたいのですか?もし、そうだとしたら、貴方達の考えは間違っている。僕の兄は誰よりも強い。当たり前に僕よりもね。反論したらもう容赦しませんよ?」


「し、失礼しました!!申し訳ありません!!!」


 必死に謝るインタビュアー。淀めく会場。


 珍しく威圧をするハーパーに会場中が驚きを隠せないでいる。ましてや、インタビュアーに対してブーイングが出る事態に。


 ハーパーはブーイングしている観客に睨みんで更に威圧する。


「ごめんなさい。熱くなっちゃった」


 そうインタビュアーに謝罪し、恥ずかしそうに壇上から去るハーパー。


「全く、、、。すごい人気だな、ハーパーは」


 観客までも味方につけているだなんてなんという男だ。


「すごいね。そりゃ、デュール兄も焦るわけだよ」


 ヴィア、ルイはハーパーの人気に嫉妬している。



「そうか。エルドラードってことは、デュールとハーパーは兄弟なのね」


 エイブリーはその事実を知り、デュールの今の感情を察する。


「そうなんだ。そして、今の出来事を見てもらってわかるだろうが、ハーパーは兄のデュールが大好きなんだ。すごく」


 ルイは物凄い勢いで頷いている。


「ハーパー兄は、すごいよ。本当にデュール兄が大好き。なんでもデュール兄と一緒じゃないと嫌らしいんだ」



「だからこそ、、、か。デュールは複雑な心境だろうな」


「ええ。そうね」






「それではこれにて開会式終了です。早速ですが只今より昇格試験を開始します」



 デュールの心情を察するヴィア一行だが、そのアナウンスにより、己自身の心配へと注意が転換する。




「さあ、早速予選スタート、、、と言いたいところですが、まず初めに実況の私と本日の解説者をご紹介いたしましょう!!!」


「今回も実況を務めさせていただきます。ゲングリア騎士団第3隊副隊長ブラック・ストロイヤーです!!」



「ストロイヤー様!!」


 歓声が響きわたる。



「げっ。ストロイアーさん、、、、。さすが器用貧乏。なんだが楽しそうね、、、」


 こっそりと呟くエイブリー。


 当然それに気づくことなくノリノリで進行を続けるストロイアー。


「さあ!そして今日の実況者をお伝えしよう。今回は本当にビッグなお方だ!な、なんと、ゲングリア騎士団軍隊長アティラン・ヴィクトリア様だーー!!!」


「うおおおおお!!!」


「うええええ!!」


 会場は歓声・驚嘆の嵐だ。中には感涙しているものもちらほら。先ほどのハーパーやストロイアーとは比較にならないほどの歓声が響く。



「うわー。すごい歓声だ!!流石はゲングリアの聖女とも言われるお方。ここに来ているみんなはラッキーだぜ。なんでかって?そうさ、ヴィクトリア様がこの会場に来られるのはなんと!初めてなんだ!!!」



「うおーーー!ヴィクトリア様!!!」


 鳴り止まない歓声。


 競技場内にいるこれから戦うもの達もその姿を見れることに胸を躍らせている。


「・・・ヴィクトリア軍隊長か。美人だし、それに強い、、、それでもいつか必ず超える」


「ヴィクトリアさん。珍しい、、でもラッキーかも。私の成長を見てもらえるチャンスだ」


 誰もがその人を一目見ようと見上げる中、違う思いでその女性を眺める者もいる。



「よせ。ストロイアー。早く始めるんだ」


「いいじゃないですか。折角ヴィクトリア様がきてくださったんだ。此処にいる全ての人が貴方に夢中ですよ。少しくらい余韻に浸っても」


「どうかな、、あいつらを見てみな」


「え、どれどれ。あっ!」


 ヴィクトリアが指差すのは羨望の眼差しではない、ライバル視しているもの達からの視線。


「あいつは!!エイブリーじゃないか!参加しているだなんて、、」


「ああ。それにヴィアもいるね。今回は楽しくなりそうだ。早く始めようじゃないか」


「そうですね。そうしましょう。今回は特に顔馴染みが多いみたいだ」


 これから起こる光景ににやけを抑えきれないストロイアー、そしてヴィクトリア。



「それでは、予選を始めて行きましょう!!」


 実況のストロイアーが高らかに合図を送る。


「まずは!!!入場手続きににて配られたカードを見てください。太陽に掲げるとA、B、C、Dいずれかの英数字が刻まれます」



 参加者は紙を空へと掲げる。



「俺はDか」


「僕はA」


「私はB」


「なんだ。バラバラか。なら、戦うのは本戦でだな」


「だね」


 ヴィアは予選Dブロック。エイブリーはBブロック。ルイはAブロックだ。


「よしよし。このガキが最初の相手か。カモだな」


 ウザ絡みしてきた騎士団三人組が再び話しかけてきた。


「なんだ。まだいたの」


「お前達は全員Aブロックか。ルイやったな」


 ヴィア達はもうどの騎士団に興味はなく話を流している。


「それはこっちも同じだ。じゃあ、瞬殺されないように頑張ってくれよ」


 そう言うと颯爽と騎士団員の3人は去っていく。


「騎士団はギルドを嫌っているの?」


「全員じゃないけどな。ほとんどあんな感じだよ」


「そうだね。エイブリー姉も、今にわかるよ」


「へえ」




 絶妙なタイミングで間を開けるストロイアーの好実況は続く。


「これよりA、B、C、D4つのブロックに分かれ予選を行います。それぞれ好成績を残した5名が予選通過。即ち予選にて2000人が20人に絞られます!!」


「さあ、参加者はブロックの英数字が入っている旗へと向かってください。Aブロックから予選を開始します。開始は30分後!!では解散!!」




 バンバンバン!!!


 空砲が打ち上がる。




「うおおおおーーー!!!」


 中にいる出場者達の気合の怒号が全体に響き渡る。



「まずは。ルイ。頑張れよ」


「もちろん予選通過してくるよ!!行ってくるね!」


 ルイはやや張り詰めている様子で予選会場へと向かう。







「・・・・・・・Cか」



 一人で佇みながら紙を確認するデュール。


「ふーーーー」


 大きく息を吐き、気持ちを整える。


 その様子を観客席から見つめる弟ハーパー。


(兄ちゃん。頑張って!!!強い兄ちゃんなら大丈夫!!!)


 ハーパーは兄の強さを疑うことなく予選の突破を確信していた。




「ハーパーさん!サインして下さい!!!」


「え?あ、はい」


 デュール、ハーパーは二人とも大柄だが、デュールと比べハーパーはスリム体型である。二人とも綺麗な顔をしており、強さもあるとなればモテるのも当たり前だろう。


 気がつけばハーパーの周りには数十人の列ができている。



「全く、、、、。相変わらずモテモテね」



「ソフィアさん!いらしてたんですか!・・・・・助けて下さい」



「嫌よ。たまには一人でなんとかしなさい」


「そんな、、。兄さん。早く勝って帰ってきてくれ!!」



(全く、、、。デュールがいないと何にもできないんだから。これで同じ「ハイイーター」なんだから。調子が狂うわ)


「さあさあ。ギルドの皆を応援するわよー」


 ソフィアも一段と目を凝らして会場を見渡す。





 ガチャン!!


 激しく物を壊しながら進んでいる男。


「んだよ。Bブロックって。まだ待たないといけないのかよ。早くこのイライラを発散させてくれ」


 そこに通る参加者と思われる者たち。


「おい。去年の最優秀プレイヤーの兄がこの大会参加しているらしいぜ!」


「ほんとかよ。その兄さん。つまりノーマルイーターかミドルイーターってことか?それに対して弟はハイイーターか。可哀想だな」


「だよな。弟より弱い兄ってどうなんだろうな」


 見知らぬ兄弟の兄を嘲笑し、進む男達。



「おい!ちょっと待てよ!面白そうな話だな?俺も混ぜてくれよ」



「え?良いけど。ってお前は!」



 ボゴ!!!


 デュールを嘲笑う騎士団を一蹴したのは、ライヤー・エスティグマだ。


「余所者がアイツを侮辱するな」



「何事だー!!」


 爆音を聞きつけた警備隊が駆けつけてくる。



「お前がやったのか?」


「知らんな。俺は今通りすがっただけ、、、。壁にでもぶつかっただけじゃないか?」


「本当か?それにしてはこの殴られた跡はなんだ!?」


「そ、それは、、、」


 言葉に詰まるライヤー。





「しっしっし。彼は本当のことを言ってる。俺が見ていた」


「そ、そうか。わかった。ならいい。問題行動を起こしたら失格だからな?覚えておけよ!」


 警備隊は気を失っている騎士団を抱え、去っていく。


「しっしっし。君は嘘が下手なようだね」


「ふんっ。別に良いだろ。ただムカついただけだ」


 ライヤーは颯爽とその場を後にする。


「しっしっし。さすがライヤー・エスティグマ。実力は本物だ」


 後ろから現れた謎の男。


 気味悪く微笑むのは西の都市オキシピタルに位置するギルド「天空の風月(スカイセッティング)」の一人。

 レクザス・マーティン。



「去年は、まんまと君たちにやられちまったからね。今年は俺たちが頂くぜ」


 黒髪の長い前髪に隠れた目は鋭い眼光をしていることが伝わる。全身黒い服を身にまとい、邪悪なオーラを放っている。


「おいおい。あの紋章は、、、」


「ああ、天空の風月だ。構うな。行くぞ」



 東の都市フロンプの有名ギルドが「大海の慈悲」ならば西の都市オキシピタルで対をなすのは間違いなく「天空の風月」だろう。



「レクザス。此処にいたんか」


「迷子になってたんだよ。イブリー」


 同じく「天空の風月」の一人。イブリー・マックス。


「全く。すごいオーラのやつとすれ違ったぞ。何もしていないだろうな」


「もちろん。ただ、同じブロックだったから挨拶をと思ってね」


「なんや。そういうことか。俺はAブロックだからもう行くぞ」


「俺はBブロックだから、もう少し休憩していくよ」


「そうか、、、なら皆バラバラだな。精々頑張ろうぜ」


 イブリーはAブロックの会場へと歩みを進める。


「そうか。他の奴らも別のブロックか。これは楽しくなりそうだ。しっしっし」



 再び気味悪く笑うレクザス。



 30分後、、、



「さあさあ。それでは始めましょうか!Aブロックスタート!!!」


 ストロイアーの合図により、会戦の笛がなる。


 Aブロックの戦いが此処に始まった。


いよいよ階級試験スタート!!!


最初にAブロック。どんどんバトル場面書いていきます!!


新キャラもどんどん書いていきます!!

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