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辺境伯令嬢として

狩猟大会というイベントが近いからか、剣術大会の時よりも生徒たちが浮足立ってるように思う。

それもこれも、お嬢様の言ってたジンクスのせいだろう。


「狩猟大会は誰でも参加できるそうですよ。ユリア様は参加しないのですか?」

「ソフィアさん、私は参加しませんよ。」

「え、そうなんですか?てっきり参加されるのかと……。」

「どうして?」


ソフィアが残念そうにするから、首を傾げる。


「ユリア様が参加するなら、私も便乗しようかなって……。捉えた獲物は、狩猟した人が好きにして良いってルールがあるみたいだったので。」

「…………なんですって?」


狩猟した人が好きにして良い?

ソレはつまり、自分でどうにでも処理できるってこと!?


ソレって最高じゃない!!


「ソレ、本当!?」

「え、えぇ。本当よ。さっき、ルールの開示してたから。」

「どこ。」

「エントランスの掲示板。」

「ちょっと行ってくるわ。」

「私も行きますっ。」


殿下とお嬢様が一緒にお茶してるし、今日は珍しくシノア様もいらっしゃるから心配はいらないだろう。

戦力になるかはともかく盾にはなるだろうしね。


ソフィアと二人、エントランスへと向かい人垣をかき分けて掲示板の前を陣取る。


「えっと……?」


狩猟大会の日付とルールが細かく記載されている。


一つ、狩猟したものは狩猟者が好きにして良い

一つ、狩猟した数で勝敗が決まる

一つ、一番多く狩猟した者には称号が授与される

一つ、狩猟数に上限はない


他にも何項目か書かれているけれど、私にとって重要なのはたった二つ。


「狩猟数の上限がない上に狩猟者の好きにして良い…………ふふふ。なんて素敵な響き。」

「悪い顔をしてますよ……。」

「え、だって好きなだけ殺って良いんでしょ?」


好きなだけ狩って、狩って、狩って、お持ち帰りして良いってことでしょ?

腐らない程度に処理をして領地に持って帰る必要があるわね。


「領地から動ける男手を数名派遣してもらいましょう。保存状態万全で領地に届けないと狩猟しても意味ないものね。邸にある荷馬車の大きさ測らないと。あぁ、耐久制度も確認しなきゃダメね。」

「あの、ユリア様……。」

「あぁ、換金できる場所も確認しておかないと。」


あぁ、やることが盛り沢山だわ……!

狩猟大会まではお嬢様の傍に居るつもりだったけど、時間を作ってもらう必要があるわね。


帰ったらお嬢様に相談しましょう、うん。


「ユリア様。」

「なぁに、ソフィア。」

「参加するんですね?」

「そうね。こんな好条件なんだもの。出るわ。参加資格に制限はないみたいだし。」


無料(ただ)で食料が手に入るのに、参加しないなんてありえない。


我が領地はいつだって貧困(ピンチ)なのよ。


いつだって窮地(ピンチ)好機(チャンス)というけれど、貧困(ピンチ)裕福(チャンス)にはならないんだから。


「どんな獲物が居るのかしら?」

「そういうのは記載されてませんね……。」

「大物が居てくれれば良いんだけど……。」

「何の話をしているの?」

「あ、マリア様。」


人垣が自然と割れる。

さすが、殿下と婚約者。

モーセになれるわ。


「急に居なくなるから何事かと思えば……、狩猟大会の張り紙ね?」

「はい。どんな獲物……、げふん。標的(ターゲット)が居るか知ってますか?」

「ラチェット様は大物のシカを捕まえておりましたね。」

「あぁ、そうだな。ラチェット兄上は……シカと……クマだったか。」

「シカとクマか…………。」

「他にはウサギや鳥などの小動物も居たハズだ。」


ちゃんと処理すれば皮まで利用できる素晴らしい生物ではないですか。

毛皮のまま売るには安くて意味をなさないけど、加工して売れば値段は跳ね上がる。

なんなら自分たちで使っても良い。


「出るつもりか?」

「出たいですね、ぜひとも。」

「ユリア嬢は出れるかどうか……。」

「え。」

「コースター卿が参加した時に生態系の乱れが心配されて、辺境伯家からの参加は断るとか……。」

「え。」

「まぁ、十年以上前の話だ。心配いらないだろう。参加資格に制限はないようだからな。」

「ユリアも出るなら、私頑張って応援するわね。」

「ありがとうございます、マリア様。マリア様に捧げる獲物はありませんが、声援には応えてみせます!」

「いっそのこと清々しいわね、本当……。」


マリア様が嘆息するけど、ソレもまた色っぽい。

この人、本当に悪役令嬢じゃなきゃ普通に良い人なんだよなぁ。


「狩猟する時の服装って自前ですか?」

「そうだ。狩猟に使うものも自分で用意する人がほとんどだ。その方が、使い慣れているからね。」

「へぇ、結構自由なんですね。」


それだけ自由なら、学園のコネを使って仕掛けてくる人もいそうだな。


「ソフィアさん、今日の放課後買い物に付き合っていただけますか?」

「はい、もちろんです!」

「マリア様は予定どうですか?」


そう尋ねれば、私の意図を汲み取ったらしいお嬢様が頬に手を当てて。


「ごめんなさい。せっかくのお誘いだけど、私は公務が入ってるの。二人で楽しんでいらして。」

「そうですか…。残念ですが、仕方がありませんね。殿下に譲ります。」

「ハハハッ、ありがとう。」


ごめんなさい。ありがとうございます、お嬢様。

その分下準備はしっかりとするので、許してくださいね。

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

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