もう一つのスチルイベント
スチルイベント。
それは、乙女ゲームでは欠かせないイベント。
「今年の狩猟大会は大規模なものになるそうですよ。」
「ラチェット兄上が卒業するからか?」
「それも理由の一つですが、殿下がいらっしゃるからです。」
レオナルド様と殿下が立ち話をしている内容は、全キャラのスチルイベントに関わってくるビックイベント。
どのキャラもこのイベントでは絶対に一枚スチルが獲得できる。
もちろん、自分の選択肢次第でどのキャラのスチルを出せるかは変わってくるが。
「ユリアは、誰に何を贈るの?」
「?」
「狩猟大会よ。」
「狩猟大会は何かを贈るしきたりがあるのですか?」
「贈るしきたりというか、ジンクスね。」
「ジンクス。」
ほほう、恋愛ゲームっぽいワードだ。
「無事に帰ってくるようにって願いを込めてプレゼントをするのが流行ってるの。」
「マリア様は、殿下にお渡しになるのですか?」
「……………………。」
「なるほど、そうですか。参考までに、何を贈るのか聞いても?」
そう聞けば、顔をプイッとそらされて。
「…………秘密よ。」
「残念。」
でも、そうか。
そんなジンクスがあるのか。
まぁ、渡す相手も居ないんだけどね。
ヒロイン、そんなもの渡してたかなぁ。
…………あ、渡してないから狩猟大会中のイベント発生とスチルか!
あぁ、なるほど、納得!
ジンクス通りにプレゼントして無事に帰ってきちゃうとイベントスチル無くなるもんね!
「…………く。」
「く?」
「腐るものではないわ。」
顔をそらして居るのに、耳は真っ赤で。
その事実にニヤニヤとしつつ、お礼をいう。
「あ、貴方は誰にあげるのよ。」
「あげませんよ、誰にも。」
「そうなの?」
「はい。」
「レオナルド様にも?」
「あげませんよ。」
むしろなんでレオナルド様?
そんな疑問が顔に出ていたのか、お嬢様が楽しそうに笑う。
「クロード様にもあげないの?私、貴方に関しては心が広くってよ?」
「ふふふ、ありがとうございます。でも、渡しません。気乗りしないので。」
「え?ふ、ふふふ。」
お嬢様が楽しげに笑う。
笑い方まで上品で素敵なのよねぇ。
「私、そんなユリアが好きよ。」
う……っ。
さすがメインキャラ、満面の笑みの破壊力半端ない。
「ありがとうございます。私もマリア様好きですよ。でも、殿下が嫉妬するといけないので、私達だけの秘密です。」
「嫉妬って……。そんなわけないで、しょ?」
「あらら。」
殿下がお嬢様の腰をさらう。
目をパチパチと瞬くお嬢様とこちらを軽く睨みつけてくる殿下。
「ユリア嬢、マリアを借りていく。」
「はい、どうぞ。」
「え?クロード様?」
状況がさっぱり掴めていないお嬢様、殿下とともに強制退場。
「お二人が仲良くて嬉しいです。」
「ユリア嬢にまで嫉妬するのはどうかと思いますが。」
「ふふ、良いじゃないですか。そこから発展して監禁とかし始めたら怒らないとダメでしょうけど。」
むしろそのくらいのレベルで愛してくれてたら、ヒロインも付け入る隙がないから安心なんだけどね。
フラグバッキバキに折らなくても折れてるから。
「レオナルド様は追いかけなくて良いのですか?」
「ついてくるなと言われました。」
「まぁ。」
二人が消えて行った庭園の向こう側を見る。
きっと今頃イチャイチャしてるだろう。
「頑張れ、お嬢様。」
骨は拾ってあげます。
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