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天使の微笑み、悪魔の所業

高台で二人が楽しそうにピクニックをしている近くで、私はレオナルド様と控えていた。


ちなみに元気な双子は、元気な声を響かせて高台を駆け回っている。

きっと今夜はぐっすり眠れることだろう。


「元気ですね。」

「あはは……ごめんなさい。本当、あの二人のデートの邪魔をして。」

「お二人も楽しそうですし、構いませんよ。ですが、新鮮ですね。」

「え?」

「ユミエルは、大人しい子だったので。」


まぁ、そうでしょうね。

一体どこの貴族に元気に野山を駆け回りドロドロになる御子息がいると言うの。


私達はモブキャラだし辺境地の貧乏貴族だから、ほとんど平民みたいなもんだし野生児だから除外。


「元気がありすぎて困るんですけどね。」

「良いことだと思いますよ。」


身体が弱くて寝込んでいる子ではないのだからと微笑まれる。

それは確かにそうなんだが。


何事にも限度と言うものがあるわけで。


「お姉様、見てみて!ミミズ!!」

「元気なミミズ!!持って帰る!?」

「持って帰る間にミミズ死んじゃうから、土に返してあげなさい。」

「「…………。」」

「コラコラコラ、ポケットにいれない!やめて!今日の服はちょっと良いヤツたんだから!ダメだって!」


ポケットにミミズを突っ込もうとする弟たちから慌ててミミズを取り上げて、遠くへと放り投げる。


前世ではミミズなんて触れもしたかったが、今世では一瞬なら触れるようになりました。

前世より女子力が落ちたようで、泣きたいです。


「お姉様、あっちで遊ぼー!」

「お姉様、あっちで遊ぶ〜!」


双子が私の手を引っ張りながら指差す方向は、王室の影が潜んでいる場所で。


そして、覚えのない気配がする方向。


「んー、ダメよ。あっちはお仕事中の人がいるから。」

「えー?王子様の知り合い?」

「王子様の部下?」

「えぇ、そうよ。いつも殿下やお嬢様に付いてる人。だから、邪魔しちゃダメ。」

「「はぁい。」」


双子はそう返事をすると、ニヤリと笑って走り出す。


もちろん、ダメだと言った方向に。


「ンギャー!!」


そして、叫び声。


「なにっ?」

「何があった!?」

「すみません、殿下、お嬢様。本当ごめんなさい!!イタズラが好きな子で!!すぐ回収してきます!!」

「襲撃ではないのか?」

「違います。我が家の双子が襲撃した側です!本当ごめんなさい!!」


ひたすら謝罪し、木々の中に入ると双子の首根っこを掴む。


「いい加減にしなさい!!お仕事の邪魔しちゃダメって言ったでしょ!!」

「「だって役立たずだったから。」」


双子の足元には見たことのない人が倒れていて。


「役立たずなんて言わない。皆それぞれ戦闘スタイルが違うんだから、無闇矢鱈に戦闘範囲内に入らないって教えたでしょ。影の人が遠距離得意な人だったらどうするの。」

「でもこの悪い人も遠距離得意な人だった。」

「吹き矢持ってるから遠距離得意な人だった。」

「貴方たちが怪我をしたらどうするの!怪しい人がいたら逃げなさいって訓練したでしょ!」

「「不意をついて逃げる練習の復習しただけだもん。」」


不満そうな表情で見上げてくる二人を放してため息を一つ。

倒れている男は泡を吹いて気を失ってる。

幸い脈はあるから生きている。


「たく……、何をしたの。」

「後ろからワッて言った。」

「そしたらくわえてた吹き矢吸い込んで倒れた。」

「…………もう危ないことしないで。お願いだから。」


二人と視線を合わせてしっかりとお願いする。

そうすれば、小さな謝罪の言葉とともに頷くから頭を撫でる。


立ち上がり、周辺を見回せばところどころに隠れてる騎士が目について。


「じゃあ、この人運ばなきゃいけないから誰か呼んで来てくれる…………って、何してるの?」

「「ミミズ仕込んでる。」」

「…………そう。」


ズボンの中とか服と中とかにミミズを仕込まれている暗殺者から視線をそらす。


私は何も見てない。

パンツずり下げられてるとことか見てない。


「ユリア嬢!大丈夫です……か……………………。」

「あ、レオナルド様!どうしてココに?」

「なかなか戻って来られないので、何かあったのではと殿下たちが心配しておられて……。」

「あー、ごめんなさい。私達は大丈夫です。」

「後ろのその人は?」

「殿下たちを狙ってた悪い人です。申し訳ないのですが、彼を運んでいただけますか?自分で仕込んだ麻痺毒か何かで気を失ってるようなので、話を聞けるかどうかはわかりませんが。」

「…………わかりました、運びましょう。二人共、服を整えてあげるなんて優しいですね。」

「証拠隠滅。」

「基本中の基本。」


双子が誇らしげに言うと私の傍に来る。


「ミミズ落とさないでね。」

「木の枝も落とさないでね。」

「……………わかりました。」


レオナルド様の表情がかなり悲壮だ。

ごめんなさい。

攻略キャラにそんな顔をさせてしまって。


「ユリア嬢は先に戻っていてください。」

「わかりました。行くよ、リオネル、アイン。」

「「はい、お姉様!」」


私を挟むようにさて手を繋ぐと元気よく歩き出す。

一通りイタズラをして落ち着いたらしい。


ありがとう、暗殺者さん。

貴方の尊い犠牲は忘れません。


「ユリア!」

「ユリア嬢!」

「お嬢様、殿下。ご心配おかけしました。」

「大丈夫なの!?怪我は!?」

「私たちは大丈夫です。今、レオナルド様と騎士の方々が対応してくれてます。」

「もう大丈夫なの?」

「えぇ。あと二人ほど隠れてるようですが、今襲って来る気はないようです。」

「捉えられるか?」

「できますよ。レオナルド様が居ないので、殿下にはお嬢様と二人を護っていただくことになるのですが。」

「それくらい問題ない。」

「わかりました。アイン、さっきあの人のポケットから盗んだもの貸して。」

「あーあ、やっぱりバレてる。」

「お姉様バレてた。」


渋々と渡してくれた小さく削られた石のナイフを手渡してくれるから、ソレを手のひらで数回弄び木の上の気配に向かって飛ばす。


「ぐぁっ!?」


石だから、それなりの殺傷力はある。


バキバキと音を立てて落ちてくるのを騎士たちが捕まえに行く。


そしてその音を(おとり)にして近づいてくる人影。


「「お嬢様、殿下しゃがんで!!」」

「「!?」」


二人の頭上を通過した刃。


「いつの間に……!!マリア、君はココに……っ。」

「「お姉様の邪魔しないで!!」」


足を踏み、手首を叩いて奪った剣で暗殺者の腕を斬りつけると地面に縫い付ける。

苦しそうな断末魔と鮮血が地面を濡らす。


「はいはい、失礼。覆面取るよ。」


覆われた顔を見るけど当然ながら全然見覚えがない。


「この人……。」

「知ってる人ですか?」

「えぇ、王都の貴族よ。」

「お貴族様でしたか。…………え、どうしよう。結構グッサリやっちゃったんですけど。」

「命を狙って来たんだ、問題ない。確か、タールグナー伯爵の遠縁だったな、貴殿は。」


ほほう……?

こんなところでマーシャル・タールグナーの手がかりが転がってるとは。

でも、こんな間抜けな暗殺者差し向けてくるところを見たら捨て駒だ。

使い捨てのコマを操ってる人間はおそらく…………。


「クロード様、戻った方が良さそうですね。」

「あぁ、そうだな。すまない、マリア。ゆっくりできるかと思ったんだが……。」

「構いませんわ。クロード様とこうして過ごせただけでも充分幸せですから。」

「マリア…………。」


自分たちの世界に旅立った二人を横目に男を見下ろす。

一向に口を開かない男の傍にそのまましゃがむ。


この人、まさか……!!


「!!!?」


ガッと頬をつかめば、双子が二人がかりで口を開いてくれる。


舌が、抜かれてる。


「「姉様…………。」」

「…………えぇ、そうね。」

「帝国の人よりひどい。」

「帝国の人よりこわい。」


手を放し、持っていた水で二人の手を洗って自分の手も洗う。

ハンカチを渡せばいそいそと二人共手を拭うから。


「二人共、今日あったことお父様に知らせられる?」

「できるよ、そういう約束だから。」

「お姉様が情報流さないってお父様心配してたから。」

「…………はぁ。ソレわかっててお父様は二人をココに送ったのね?」

「王族の護衛を任されてる騎士がいっぱい居るから大丈夫って。」

「お姉様が殺る前に騎士たちが殺るって。」

「でも、騎士全然役に立たなかったね。」

「影も全然役に立たなかったね。」

「あのねー、そういうことは………。」

「「お姉様、いつでも帰っておいでってお父様からの伝言。」」

「!」

「お姉様の約束はお嬢様の護衛。」

「ソレ以外は契約範囲外。」


あぁ、本当に。


二人の頭をポンポンと撫でる。


「お父様にありがとうって伝えておいて。」

「帰らないの?」

「一緒帰らない?」

「えぇ、帰らないわ。私はやることがあるから。」

「「…………。」」

「今度の休みには領地に帰るから、ね?それで許して。」

「「約束。」」

「うん、約束。」


落ち込む二人と小指を絡めて約束する。


勝手に約束しちゃったけど、帰れるかなぁ私。

次の休みって本編開始前だから、色々と大変そうなんだけどなぁ。


「では、戻ろうか。マリア、足元気をつけて。」

「はい。」


仲良く歩き出す二人のすぐ後ろを、双子と手を繋ぎながら進む。


「お洋服ドロドロ。」

「お洋服ボロボロ。」

「ふふ、楽しかった?二人共。」

「楽しかった!ミミズいっぱいつめこんだし!」

「景色もキレイだったし!」


楽しそうに報告してくれる二人の話に耳を傾ける。


マーシャル・タールグナー。

この乙女ゲームの中で先生ポジションにいる攻略対象。

ヒロインが現れるまで目立った対応はしてこないかと思っていたけど、あんな見せしめみたいなことするなんて。


「あーあ、頭の良いヤツは考えてることがわからん。」

「「アルベルトに聞く?」」

「もう少し自分で考えてからにするわ。ありがと、二人共。」


本編開始前でもうすでに面倒くさいから、さっさとヒロイン出て来て欲しい。

自分がヒロインになって物語進めてる時は楽勝だったのになぁ。

暗殺者とかあっても犯人探しそっちのけでイチャイチャラブラブしてるだけで良かったし。

ヒロイン補正である程度解決してたし。


はぁ、王都に帰ったらソフィア誘ってスイーツとやけ食いでもすっか。

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

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